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絶対無敵の盾  作者: ムク文鳥
魔獣決戦編
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王都へ


「いやぁ、全員がお揃いの素材で装備で作ると、チームとしての纏まり感が段違いッスな!」

 コルトは『真っ直ぐコガネ』の面々を順に見回すと、うんうんと機嫌良さそうに頷いた。

 先日倒した飛竜の素材を使って、『真っ直ぐコガネ』は全員が統一した防具を新調することにした。

 倒した飛竜が大物だったこともあり、全員の防具を作っても素材は余りが出るほどで、その余った素材も高値で売れ、チームの財布を司るポルテもにこにこしている。

 チームの先頭に立つヴェルファイアとオーリスは防御力重視の重厚な鎧を。

 機動力を活かす戦い方をするソリオとコルトは防御力と機動性のバランスの取れた鎧を。

 後衛であるポルテとスペーシアは、身体の要所を守るだけの簡素な鎧を、それぞれ新調したのである。

 鉄などよりも余程強靭な飛竜素材の防具は、これまでの防具よりも格段に性能がいい。

 これで『真っ直ぐコガネ』の実力は、少なくとも防御力に関しては数段上がったとみていいだろう。

 武器の方も飛竜の素材で補強を施し、防具ほどではないが強化されている。

 「予算の許す中で最良の防具を」「武器よりも防具に金を使え」という言葉は、冒険者の間ではよく聞く言葉である。

 命さえあれば、金を貯めていい武器を手に入れることができる。だが、その命を落としてしまえば、どれだけ金があっても意味がない。

 そのため、まずは自身の安全から。それが冒険者たちの一つの鉄則なのである。

「しかし、おまえらが僅か一年でここまで成長するとはな……正直、俺も驚いたぜ」

 深い青緑色の防具で統一された『真っ直ぐコガネ』の姿を見て、「幸運のそよ風亭」の主人である妖鬼族(ゴブリン)のジュークは、感嘆の眼差しで彼らを見つめた。




「さて、と。おまえらを指名して、幾つか依頼が来ているぞ」

 一通り『真っ直ぐコガネ』の新装備を眺めたジュークは、続いて仕事の話に入った。

 最近ではすっかり名前も売れ、名指しで依頼が入ってくるようになったソリオたち。

 巨大な飛空船である『栄光なる(グローリー)我が息子(ソリオ)号』を駆ってあちこちを文字通り飛び回る『真直コガネ』は、このコーラルの町だけではなくマラカイト王国中にその名前が知れ渡り始めている。

 また、スペーシアと出会った縁で知り合いとなった隣国パイライト帝国の皇帝からも、直々に仕事の依頼が来るほどだ。

 とは言え、パイライトのグランディス皇帝からの依頼は、冒険者への依頼というよりは単に『栄光なる我が息子号』に皇帝自身が乗りたいだけのようでもある。

 さすがに皇帝直々の依頼とあって報酬も破格なので、ソリオたちは──というよりはポルテの意向で──皇帝からの依頼は極力受けるようにしていた。

「それで、どんな仕事があるんだ?」

 ソリオがジュークに尋ねると、彼は店のカウンターの上に数枚の書類を並べた。

「これを見りゃ分かると思うが、依頼の殆どが荷運びの依頼だな」

 ジュークの言葉に従ってソリオたちが書類に目を通せば、確かにその殆どが大きな商会からの荷物運搬の仕事だった。

 だがよくよく依頼書を見れば、とある貴族が『栄光なる我が息子号』を使って空で夜会を開きたい、という突飛なものまであったが。

「おまえらの飛空船を使えば、大量の荷物を早くて安全に運べるってのはすっかり有名だからな。どうしたってこの手の依頼が増えるさ」

 大店の商店が荷物を運送する場合、普通ならば馬車を何台も連ね、たくさんの護衛を雇い、何日もかけて運ばなければならない。それには当然ながら膨大なコストがかかる。

 そのような大量の荷物の運搬が必須である大店の商店にとって、この空輸便がどれだけありがたいか考えるまでもないだろう。

 『栄光なる我が息子号』を使えば輸送日数の短縮に各種コスト削減など、商店から見ればいいことばかりなのだ。

「だがよ、さすがに全部は受けられないぜ? 日数的な期限がカブっちまっているからな」

「そうね。『栄光なる我が息子号』は一隻しかないものね」

 ヴェルファイアとポルテが、意見を交換しながら書類を見比べる。

 運ぶ荷物の中には日時に制限があるものもあり、それが重複しているものがちらちらと見かけられる。

「荷物の量と運ぶ距離などから、受けるものと受けられないものを判断するべきでしょうな」

 オーリスの言葉に頷いたソリオたちは、どの依頼を受けてどの依頼を断るのかをあれこれと相談し始めた。




 全ての依頼書に目を通した後、ソリオはその中から一枚を選び出した。

「いろいろと検討した結果、これが一番割がいいよね」

 ソリオが抜き出した依頼書。そこには一旦マラカイト王国の王都まで赴き、そこで荷を積み込んだ後に今度は国の最南端に位置するアレクサンドの街まで荷物を運ぶ、という仕事の内容が記されていた。

 提示されている報酬額は、他の荷運びのものより高い。おそらく一旦王都まで行かなければならない分だけ、金額が上乗せされているのだろう。

 とは言え、『栄光なる我が息子号』を使えばどれほどの回り道でもない。それらを含めて検討した結果、ソリオたちはこの仕事を受けることにした。

「んと……依頼主はランチェスター商会の主人、トーラス・ランチェスター氏……ッスか? ランチェスター商会と言えば、この国でもかなり大きな商店ッスよね?」

「うん、コルトの言うとおりだよ。それからアレクサンドの街と言えば、街の郊外にクリソコラ時代の遺跡があるとかで、冒険者が多く集まる街ってことで有名らしいね」

 ソリオは記憶の海の中から、アレクサンドの街に関する情報をサルベージする。

 これらの情報は、故郷であるヘマタイト村の老人たちから聞いたものだ。

「そもそもランチェスター商会と言えば、冒険者相手に武具や各種の道具を売る商売で大きくなった商会のはず。アレクサンドの街にも、ランチェスター商会の支店があるのでしょうな。私がしばらく活動していたパイライト帝国にも、その支店があったぐらいですから」

「その遺跡の噂ならば、私も聖域の長をしていた時に聞き及んだことがありますわ。街の地下に何十階層にも広がる巨大な遺跡で、いまだに最深部に到達した者は誰もいないとか」

「ほう、おもしろそうだな。そのアレクサンドって街へ行くのなら、ついでにその遺跡に挑戦してみるか?」

 スペーシアの言葉に、ヴェルファイアが関心を示す。

 遺跡があれば、そこに潜ってみたくなるのは冒険者の習性のようなものだ。

 仮に財宝が手に入らなくても、だた遺跡に挑戦するというだけで冒険者たちのこころはわくわくと沸き立つ。

「うん、そうだね。俺たちも確実に強くなっていると思うし、少し腕試しをしてもいいかも。向こうに行ったら、遺跡の情報を改めて集めてから、もう一度じっくりと検討しよう」

 どうやらソリオも乗り気のようで、どこかうきうきとした顔で仲間たちを見回した。

「まあ、今のおまえらなら大丈夫だと思うが、無理だけはするなよ? 生きてさえいれば、何度だってやり直せるんだからな。それは迷宮挑戦も同じだぜ?」

 ジュークの忠告に素直に頷いたソリオたちは、仕事の依頼を受けるべく、コーラルの町にあるランチェスター商会の支店へと向かうために「幸運のそよ風亭」を後にした。




 かりかりかり。

 かりかりかり。


 ソレは相変わらず周囲に満ちている闇を齧る。

 闇を齧り飽きるということ自体に飽きたソレは、ただひたすらに闇を齧り続ける。

 いや、今のソレには闇を齧ることしかできない。

 強大で強靭な力を有するはずの身体はぴくりとも動かない。

 一息で海を干上がらせ、触れるだけで山を崩したその力は見る影もない。

 今のソレには、何とか動く顎で、周囲に満ちる闇を齧ることしかできない。

 口を動かせば、口の周囲にある闇が減る。

 もう一度動かせば、またもや少しだけ闇が減る。

 それを何回も、何十回も、何百回も、何千回も、何万回も、何十万回も、延々と繰り返してきた。

 そして。

 そして遂に、ぱりんという小さな音と共に闇が割れ、ほんの僅かだが光が差し込んだ。

 針で刺したほどの大きさの穴から差し込む光を浴びて、ソレは狂喜した。

 光が差し込む穴を更に大きくするため、ソレはただ只管に闇を齧る。


 かりかりかりぱりん。

 かりかりかりぱりん。

 かりかりかりぱりん。

 かりかりかりぱりん。

 かりかりかりぱりん。


 齧る度に響く、闇の割れる音。

 音が響く度に広がる、光の差し込む穴。

 光が強くなる度にソレの狂喜も激しくなり、周囲の闇をどんどんと齧り取っていく。

 やがて、ソレの周囲を満たしていた闇は、ほんの僅かになっていた。




 ランチェスター商会のコーラル支店で依頼内容を確認した『真っ直ぐコガネ』は、支店長より紹介状を預かって『栄光なる我が息子号』を駆り、マラカイト王国の王都であり国名と同じ名前を持つマラカイトの街へと向かった。

 ソリオたちも、『栄光なる我が息子号』を手に入れてからはマラカイトの街は何度か来たことがある。

 街の郊外の上空に『栄光なる我が息子号』を停泊させたソリオたちは、紋章術で地上に降り、そのままマラカイトの街に入る。

 王都の中は大きく貴族街と庶民街に区切られており、その庶民街に存在する商業区画にランチェスター商会の本店はある。

 そして今、ソリオたちはそのランチェスター商会の本店の前で、その店舗の大きさに驚きの表情を浮かべていた。

 この商業区画に存在する、他の店舗より一際巨大な店構えは圧倒的な迫力さえ伴っている。

「……ここがランチェスター商会の本店か……」

「……予想していたよりも、ずっとでっけえ建物ッスなぁ……」

 その店の中には、冒険者らしき者たちがひっきりなしに出入りし、店の中では使用人たちが忙しそうに動き回っている。

 店の中には様々な武具がきちんと整理されて並べられており、冒険者たちは思い思いの武器や防具を品定めしている。

 と、犬鬼族(コボルト)の使用人の一人が店の外でじっと店内を眺めているソリオたちに気づくと、気さくに話しかけてきた。

「いらっしゃいませ。ランチェスター商会本店へようこそ。本日はどのようなご用向きでしょうか?」

 ソリオたちが纏っている揃いの飛竜素材の武具を見て、彼らが単なる駆け出しではないと悟った使用人は、丁寧にソリオたちへと接してきた。

 実力のある冒険者が出入りすることこそ、この店の最大の看板なのだ。それを店主より常に言われている使用人は、対応を間違えることはない。

「俺たちは『真っ直ぐコガネ』という冒険者チームで、コーラルの町の支店からの依頼でこの本店に来たんだけど……」

「ま、『真っ直ぐコガネ』……っ!?」

 使用人は目を見開いて驚く。どうやら、『真っ直ぐコガネ』の知名度はここでもそれなりに広まっているらしい。

「た、直ちに主人にお取り次ぎ致します! で、ですがその前に、コーラルの支店より紹介状のようなものはお預かりになられておりませんでしょうか?」

「ああ、それなら預かっているよ。これだろ?」

 ソリオはコーラル支店の店長より預かってきた案内状を店員に渡す。

「は、確かに。では、しばらくお待ちください」

 そう言い置いて、使用人はばたばたと店内へと駆け込んで行った。

 使用人に言われた通り、その場で待つことにした『真っ直ぐコガネ』。そんな彼らに、店内にいた冒険者たちの興味津々の視線が集まる。

 そんな視線に晒されることしばし。

 すぐに戻ってきた使用人に案内され、ソリオたちは店舗の奥へと通されたのだった。





 『無敵の盾』更新。


 少し間が空いてしまいましたが、何とか更新できました。


 それから、前回のラストを少しだけ変更。

 以前の引きだと、ちょっと今回と上手く繋がらないような気がしたので。

 本当に些細な変更なので、気にしなくとも今後のストーリーには全く影響ありません(笑)。



 では、これからもよろしくお願いします。


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