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20本目・祝賀会

購入を決めた翌日。

瞬・優衣・きいは早速、郊外のボロ家へと向かった。

荒れ果てた庭、穴だらけの屋根、傾いた柱。

「……うーん、やっぱりボロい」

優衣は腰に手を当て、ため息をつく。


だが、瞬の顔は明るい。

「いや、ここからだ! ここを俺たちの拠点にするんだ!」

そう言って《黒焔・クワ》を肩に担ぐ姿に、きいが呆れ顔でつぶやいた。

「すっかり農民の顔になってるにゃ」



修繕を始めようとしたそのとき――

「おーい!」

低い声とともに姿を現したのは、ドワーフ兄弟のガイモンとガイエンだった。

背中には木材や工具をどっさり背負っている。


「聞いたぜ! 鍬神が家を建て直すってな!」

「お前らだけじゃ無理だろ。手伝ってやるよ!」


さらに――

「ほっほ、面白いことをしておるではないか」

ギルドマスター・ハインズが白髪の髭を揺らしながら現れ、

「仕事の合間に来てみました」

受付嬢のエルフ女性も微笑みながら顔を出した。


気づけば、近所の冒険者や街の人々までもが集まっていた。

「鍬神が本気で農家をやるらしいぞ!」

「それは一目見に行かねぇとな!」



そこからは、まるで祭りのような修繕作業が始まった。

ドワーフ兄弟は鍛冶と木工の技術を駆使し、

ハインズは魔法で補強を施す。

受付嬢は器用に布を織り、窓辺に新しいカーテンを飾る。

冒険者たちは屋根を直し、子供たちは草むしりを手伝った。


「おーい、鍬神! そこ持ち上げろ!」

「はいよ!」

瞬が《黒焔・クワ》で地面を耕せば、硬い土が嘘のようにほぐれ、皆の口から歓声があがる。


夕方には、崩れかけていたボロ家は見違えるほど立派に生まれ変わっていた。

庭も整地され、小さな畑の準備まで整っている。



そして夜――

修繕を手伝ってくれた人々を庭に招き、大宴会が始まった。

焚き火を囲み、ドワーフ兄弟が酒樽を持ち込み、冒険者たちが肉を焼き、街の人々がパンや果物を並べる。

ギルドマスターも珍しく上機嫌で杯を掲げ、受付嬢は子供たちと笑い合っている。


「はーっ、幸せそうね」

優衣はステーキにかぶりつきながら、周りを見渡して微笑む。


瞬は焚き火の端でタバコをふかし、にやりと笑った。

「俺はタバコが吸えたら良いのさ……でも、こういうのも悪くないな」


そのとき、膝の上で丸くなっていたきいが顔を上げて言った。

「……なんか最近、ワイバーンとか鍬とか……私の出番が少ない気がするにゃ」


「「あははははっ!」」

優衣と瞬が同時に笑い出し、宴の輪がさらに広がった。


こうして――

《農民の鍬神》の拠点は完成し、街の人々からさらに愛される存在となったのだった。

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