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21/59

21・それぞれの時間

翌朝。

夜の宴の余韻がまだ残る中、庭に立った瞬は腕を組み、目の前の耕された土をじっと見つめていた。

《黒焔・クワ》で整えたばかりの畑は、まだ何も植わっていない、ただの黒い大地。

けれど瞬の瞳は期待で輝いていた。


「……よし。今日から俺の畑が始まるんだ」

腰のポーチから取り出したのは、加工前の《ニコチ草》の種。

「ここから、俺のタバコライフを作るんだな」

独り言をつぶやきながら、丁寧に種を蒔いていく。


土をならし、水を注ぎ、陽の光を浴びせる。

《黒焔・クワ》は不思議な力を持っており、刃先で軽く地面を叩くだけで土の養分が活性化する。

土からはほのかに蒸気のようなものが立ち上がり、瞬は「すげぇ……」と息を呑んだ。


その横で、きいが日向ぼっこしながらあくびをしている。

「にゃぁ……ほんとに農民の鍬神になっちゃったにゃ」

「うるせぇ。俺は俺の道を行くんだ」

と、真剣に返す瞬。


◇


一方そのころ。

優衣は街へと出かけていた。

目指すは家具屋。

「せっかくの新しい家だもん。ベッドとかタンスとか、ちゃんと揃えなきゃね」


冒険者ギルドの受付嬢に紹介してもらった店に足を運ぶと、そこは木の香り漂う大きな家具店だった。

「いらっしゃいませ。……おや? あなた、もしや《黒焔ワイバーン討伐の女傑》?」

「……はぁ!? そんな噂になってるの!?」

慌てて否定しようとするも、店の奥から職人たちが次々と顔を出す。

「本物だ! 本物だ!」

「俺の椅子を使ってくれ!」

「いや、うちのベッドだ!」


押し寄せる職人の熱気に気圧されながらも、優衣は結局、テーブルや椅子、ベッドなどをまとめて注文することになった。

「……まあ、瞬もきいもきっと喜んでくれるだろうし」

少し恥ずかしそうに笑う優衣だった。


◇


夕方。

畑を仕上げた瞬と、家具の注文を済ませた優衣が庭で合流した。

「おかえり。いい畑ができたぞ」

「そっちも順調そうね。私は家具を頼んできたから、数日で届くって」


きいは尻尾を揺らしながら二人の間に割り込み、

「にゃー、なんだかほんとにここで暮らすって感じになってきたにゃ」


三人はまだ新しい木の香りが残る家を振り返り、ゆっくりと笑い合った。

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