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フラグが立ったような……

「……以上が、昨夜に起きた全てです」


 鎧蜘蛛の討伐任務において起きた全てを報告し終えた隊長は、奇跡の様な一幕を思い出す。


 鎧蜘蛛、乙一種に分類される危険な妖魔だ。

 纏う甲殻は鉄よりも固く、その巨大さに反して蜘蛛の様な敏捷さを持つ。

 放たれる蜘蛛糸は頑丈で、炎で焼く以外にまともな対処法はなく、牙や爪に付着している毒素は即効性のある致死毒、と危険な要素は大量にある。


 しかも、今回、相手にした鎧蜘蛛は口からも糸を吐き出した。

 今までに対峙した鎧蜘蛛にはなかった行動であり、より危険度の高い亜種であると見られる。


 本来であれば、何人も犠牲者が出た筈だ。

 実際、自分を含めて二人は重傷を負い、四人は糸に絡め取られて行動不能に陥っていた。


 向こうが止めを刺さずに逃走に移ったから良かったものの、そうでなければこの六名は死んでいた筈である。

 だが、蓋を開けてみれば、誰一人として死者はおらず、後遺症が残る様な重症者もいない。


 その理由は、今、自分の傍らに置かれた籠の中にいる、子猫だ。


 重症だった隊員の一人を容易く癒し、糸に囚われていた四人を火傷を一切負わせずに解放し、更には致命傷を負っていた自分を容易く救ってみせた。

 それで力尽きたらしく、以降、これまでずっと眠り続けている。


 最初は、何らかの妖魔の一種かと思われた。

 気絶している内に討滅してしまうべきだという意見も出た。


 しかし、よく調べてみれば、妖魔の類ではなく、何処かの術者と繋がる使い魔だと判明した。


 だが、分かったのはそれだけだ。

 何処の流派の物なのか、いやもっと大雑把に東洋系か西洋系なのか、そういった物すら判明しなかった。


 こちらを救う行動をしてきたのだから、おそらく敵ではない、とは思われる。

 しかし、確実にそうだとは言えない。


 故に、こうして殺しはしないが要監視という事で、小さくとも頑丈な妖魔用の檻に入れている。


(……命の恩人なのだ。出来れば敵でなければ良いのだが)


 そうと望むが、それは子猫が目覚めてみないと分からない。


「うむ。分かった。

 討伐を為し得なかった事は残念だが、よくぞ無事に戻ってきた」

「はっ。有難きお言葉」

「して、少し話は変わるが、おぬしは気付いたか?」


 草薙当主の言葉に、彼は僅かに眉を上げる。

 心当たりは、ない事もない。


「あの、爆発的な霊力の高まりの事でしょうか?」

「うむ。それじゃ。どう思う?」

「妖魔であれば、間違いなく甲種級でしょう。

 術者ならば、神代級の怪物です」

「で、あるか。まぁ、その通りじゃな」


 少し間を置いて、


「……少し、出来過ぎているとは思わぬか?」

「何が、でしょうか?」

「その猫との関係じゃ」


 当主は言う。


「致命傷を負っていたおぬしの治療、今の霊術では一ヶ月以上もかかる。

 その上、いつ命を落としてもおかしくない程の綱渡りの治療となろう。

 それを容易く癒す術者。

 そして、それが起きた付近で、常軌を逸した霊力が観測される。

 偶然であろうか?」

「同一存在であると?」

「なに、単なる老人の妄想じゃ。

 しかし、ないと否定は出来なかろう?」

「確かに、その通りです」

「まっ、調査部隊に詳しく調べさせておる。結果待ちじゃの」

「はっ」


 少しばかり逡巡して、彼は訊ねる。


「正体が判明すれば、如何なさるおつもりですか?」

「向こう次第であろう。

 敵対するようであれば、こちらも相応に相手をする。

 しかし……」


 面白がるように、老人は続ける。


「出来れば、味方に引き入れたい所じゃな。

 何なら、孫を嫁がせても良いくらいじゃ」

「……彼女はまだ四歳ですよ」

「ハッハッハッ、まぁ冗談じゃ。

 それくらいには、譲歩しても良いというだけの事じゃ。

 気にするでない」



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