草の味
さぁ、夜が明けて新しい一日の始まりです!
取り敢えず、適当な魔刀を作ってデモンストレーションはしたけども、どの程度の評価に落ち着くかね。
向こうだと、あれくらいなら市販品で、一般人でも買えるレベルなんだけど。
こっちで言えば、拳銃とかその程度。
多少の規制はあるけれど、国によっては普通に合法で山ほど出回ってる感じ。
まぁ、でも、碌に魔法文明の発展してない地球の技術だと、オーパーツどころの騒ぎじゃないかにゃー。
火縄銃よりかは高性能じゃろう、きっと。
ままっ、ここで私一人で悩んでいても確かな答えなんて出ないんだし、それは結果待ちって事で。
一応、断られた時の為に口止め用の術式は用意しておこう、っと。
人の心と記憶を弄る真似は好きじゃないけど、私の安全……はともかくとして、咲輝ちゃんや両親の安全には代えられないし。
ぶっちゃけ、今ん所の連中は割かしどうでもいい他人だしね、私の中では。
で、一つの悩み。
私はいつ返事を聞きに行けば良いのだろうか。
いやさ、組織である以上、構成員との話し合いとかもあるだろうしね?
当主の独裁体制なら別に良いんだろうけども、私には連中の内情なんて分からないし。興味ないし。
まぁ、いっか。今夜で。
連中の事情なんざ知らん。考慮してやらん。
だって、私、ズボラだもの。
後回しにしたら絶対にズルズルいく。
いつまで経っても何かしら理由付けて後回しにし続けるに決まってる。
私はちゃんと自分の事を分かっているのだよ、ふふふ。
さぁ、気を取り直して、新しい一日だ!
魔力炉開発の方が停滞している現状、ポーション開発に情熱を注ぐ以外にやる事がない!
ちくせう!
うーん、と言っても、材料足りてないから、これ以上はこっちもなー。
まぁ、素材の色抜きしてから根性入れたエンチャントをしてやれば、今の素材でも〝ロー〟の文字は取れるんだけど、費用対効果を考えると微妙よね。
私の一日分の魔力、ほぼほぼ全部持ってかれる事になるし。
一日に一個。
しかも、最上級のアルティメット・ポーションとかいう、もはやそれだけの効果が必要なのか? と疑問に思わざるを得ないスーパー魔法薬ですらなく、向こうだと市販されているただのポーションである。
採算、悪過ぎですよ!
ちぃ、仕方なし。
諦めて味の調整でもするか。
えー、まずは適当な魔草を引き千切ります。
自作したすり鉢でごりごりと磨り潰します。
実を言えば、これでもう、一応、ローポーションとして使えます。
まぁ、品質は最低なんだけど。
気休め程度の傷薬としては使えるかな、ってレベルです。
飲み薬としては止めた方が良し。
この状態だと毒素が混じってるし。
死にはしないけど、耐性無い奴だと腹下すくらいの威力はある。
もはや薬ではない。
なので、薬効成分だけ抽出します。
昨夜、鉄塊の不純物を抜きましたね? あれと同様の手順です。
で、更に毒素も分離させます。
こっちはついでです。
庭の隅に置いている壺の中にポイです。
何をしているのかと言うと、毒素を濃縮還元しているのです。
これを延々と繰り返し、色々とアレな加工を施すと、奇跡の毒物、【破滅毒】が出来ます。
一滴で魔王軍幹部くらいは毒殺できます。
魔王にすら効果アリです。
まぁ、流石にバケツ一杯分ぶっかけてやっても死ななかったけども。
大分、弱らせる事は出来ました。
使う機会がない事を祈るけども、いざという時の為には用意しておかないとね、クククッ。(悪い笑み)
ぶっちゃけ、魔草に含まれる毒素だけで作るとなると、何千年かかるんだよ、ってレベルで濃縮を繰り返さないといけなくなるんだけどね。
まぁ、塵も積もれば、って言葉もあるし、出来る事からコツコツとやっていきましょ。
毒物はこれで良し。
蓋をして、万が一にも漏れ出さないように強固な封印を施して、元に戻しておく。
本命の薬効成分に戻りましょう。
分量にして一滴くらいの量です。
これを水道水(色抜き済み)に溶かし込むと、ローポーションとして完成します。
クソ不味いけど。
うん、何でか知らないけど、草の味がするんだよね。
薬効成分だけ抜いたじゃん。
草要素無くしたじゃん。
でも、草の味がすんのよ。
マジ意味分からん。
ちなみに、向こうでも謎現象として認定されてた。
もしも解明出来たら、ミスティリア賞――こっちでいうノーベル賞みたいなもん――薬学部門受賞確実と言われていた。
私も狙ってこっそりと研究していたんだけど、まるで成果は上がらなかった。
ちくせう。
まぁ、それは良い。良いもんね。
私は人間国宝として認定されて酷使されてたんだから!
悔しくなんかないもんね!
ブラック過ぎて涙出そう。
ともあれ、お手軽に完成したローポーション。
ぶっちゃけ、水道水の色抜きの方が面倒でした。
まぁ、最高純度までしてないから、これも手抜きですけども。
このままだとクソ不味いので、味の調整をします。
どうやるのかって? 調味料を加えるんだよ。
塩、砂糖、醤油、酢、味噌、唐辛子、etc.etc.
いやね、ここからはもう魔法じゃどうにもならんのよ。
だって、何で草の味がしてんのか、分かんねぇんだもん。
だから、地道に味を調えるしかない。
向こうでは、スポーツドリンクやソフトドリンク並みに飲み易いローポーションが出回っていた。
だから、不可能ではない事は知っている。
だけど、当然の事だけど、具体的な調合レシピは企業秘密で誰も知らない。
異世界からやってきた勇者権限で、教えろ下さい、と詰め寄った事もあるけど、救世活動には関係なしと判断されて却下された。
どちくせう。
「かーんせー」
さぁさぁ、取り立てて料理の才能のない私の適当感溢れる調合の下に完成した、最新版ローポーションの御味や如何に!?
味覚が死ぬかと思いました。
完成までの道は遠い。




