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16-11 血塗られた手

思ったのですが、ライルって誰か覚えていたでしょうか?

新キャラではなく、前にも登場してます。ルーカス編の最後辺りにちょっと出てます。


この時はまだルーカスは革命を起こして居らず、ライルは放浪の旅の途中です。

 

 ライルに車で街まで送って貰った後はライルと別れた。次に会うときは敵になるかもしれないという一抹の不安を抱きながら俺はあの忌々しい施設に戻ってきていた。


 俺の顔を知っている門番は何も言わずに通してくれる。俺が任務失敗して死んだということはここに伝わってないか。駒が一人減っただけという認識で誰が死んだとは気にしないのだろう。


 中では相変わらず子供たちは、しごかれていて必死な声を上げて訓練をしていた。


 そしてその中央で子供達に暴力を振るっていたのはリカディ。その顔を見るとふつふつと怒りが込み上げる。次見るときは殺す、と決めていた。


 広いグラウンドで訪問者は直ぐに見つかるため、向こうもこちらに気付いたようだ。訓練を止めさせ、リカディは近付いてくる。


「あのガキももう1人前か。もう何人も殺した面してやがる。お前らもこうなるんだ」


 卑しい笑みを浮かべて子供達をしごくリカディ。俺はもう我慢ならなかった。


 ナイフを片手にリカディに突っかかる。こちらへ背を向けるリカディには完全な不意討ちーー暗殺者としての(つちか)った技量と強くなった身体能力で前より何倍も早い突きを放つ。


 空気を裂く音が聞こえるぐらい高速の突きはリカディの喉元に吸われるーー


 ーーキィッン。鋭い金属同士が当たる音が聞こえる。それは喉元とナイフの間に新たなナイフが有ったからだ。


 こちらを見ること無く防ぐリカディに恐怖を感じて距離を取る。


「久しぶりに会ったのに大層な挨拶じゃないか。えぇ!?」


 その大声に昔受けた訓練の恐怖が蘇るが、何度も今は違う、と自分に言い聞かせ、再び強くナイフを握ると勇気が湧き出る。


 俺の苦い表情に卑しい表情を浮かべるリカディ。


「確かに速くなったようだが、俺には到底及ばない。何故だか分かるか? それはお前にナイフの使い方を教えたのは俺だからだよ、フハハハハハーー!!」


 って事は俺の考えはリカディにバレバレなのか。そういえば定石の動きはリカディに全て教えて貰ったものだ。ならば定石以外ーーそれは意表をつくものだが長い歴史が作った格闘術は定石が最適だと示していて、オリジナルの動きはことごとくリカディに潰されていた。


 覆らない差にリカディの笑いが止まらない。


「さぁ? どうする? 今ならさっきの事は見逃してやってもいい。また暗殺者としてこき使ってやるがな!!」


 ナイフを舌なめずりしながら俺を見下すリカディに俺は吠える。


「ふざけるなっ!! 貴様はラフィの仇だ!! 俺は貴様を殺すことだけを考えてきた……相打ちになってもお前を殺す!!」


 激情が頭の中を埋め尽くすと何処からかともなく、手に入れた選ばれし者の力の情報が入ってくる。


 ーーああ、そうか。俺にはこの力がある。


 全く教わったことも見たこともない魔法の発動方法が頭の中に浮かび上がる。


「ーー俺はお前より速くなる」


 肉体強化魔法を体に付与して、一歩踏み出す。その速さは自分でも驚くほどで、リカディが遅い!!


 何気なく顔に向けて出したナイフの一振りを困惑した顔でギリギリ受け止めるリカディ。そして空いた胴体に蹴りを入れるとリカディは苦悶の表情でのけぞる。


 圧倒的な差に笑いが止まらない。


「クハハハハハ、リカディ、これをお前は俺達を殴って味わっていたのか。圧倒的な実力差の暴力を!!」


 最高に気分が良い!! 殺したいほど憎く、とても敵わない相手が今はどうか。腹を手で抑え、苦しそうな表情を浮かべてるではないか。笑わずにいられない。


 そして呆然としていた周りの子供達もリカディが不利と分かると沸き上がる。その割れるような歓声の大きさからどれだけ理不尽な事をされていたのか分かる。


 しかしその歓声を聞きつけたのか、傭兵達が集まってくる。


「何事ですか……リカディ様!?」


 リカディの苦虫をかみつぶしたような表情に気付いた傭兵達は対面に立っていた俺へと銃口を向ける。


「殺せぇ!!」


 そのリカディの一言で撃ちはじめる傭兵達。俺は無意識に風の盾を張る。すると面白いぐらいに銃弾が俺の体を逸れていく。


 ーーこれが選ばれし者の力!!


 風の盾を張ったまま敵陣に突っ込む。近くに居た奴に軽くパンチをお見舞いすると10メートルも飛んだ。


 しかしこちらの拳は全く痛くなく、本気も出していない。何て力だ……


 味方があり得ないほど飛ばされたので、傭兵達は動揺して銃声が止んだ。その隙に更に強力な拳や蹴りを叩き込む。


 俺の攻撃が当たった場所によっては骨が折れた音が聞こえた。その未知な感触に俺の気持ちは更に昂ぶっていく。


 そして一息ついた時には俺に銃口を向ける者は誰も居なかった。


 あちらこちらからの呻き声がこの場を支配し、俺の気持ちは晴れていく。これが圧倒的な力ーー力が無ければ主張すら事すら許されない世界なんだ、ここは。


 その時、子供達の悲鳴が聞こえ、振り返るとリカディが子供を人質に取っていた。鋭く光るナイフが子供の喉元を掠めていた。喉元から微かに滴る血に俺の怒りは更に増した。


「リカディィィィ!! それでも大人か!!」


 死ぬほど憎い。リカディへの思いは嫌悪に満ちてるが、それと同時に越えるべき壁だとも思っていた。しかし、リカディは越えるべき壁としては汚すぎた。


「ふんっ、大人はずる賢く生きるのが正解だ。ガキとは違うんだよ」


 卑しい笑みを浮かべて、じりじりと俺と距離を取り始めるリカディ。


 俺はそんな大人にはなりたくない。俺はーーライルのような大人になりたい!!


「俺はーー」


 ラフィの笑顔が頭の中に浮かぶ。

 そしてライルの言葉が反芻されるーー信念を持て。


「ーー誰も虐げられない国を作る!!」


 地面を蹴ると瞬時にリカディの背中に回りこみ、首をナイフで狙うーー


 振り返ったリカディの背中にはナイフが深く刺さっていた。狙いはズレたが驚愕の表情をしながら口から零れ出す血。その姿はラフィと重なり、リカディは敵なのに動揺してしまう。


 震える右手を左手で抑え、突き刺さったナイフを抜き取る。その傷口から鮮血が滝のように噴き出す。


 リカディの力が抜けたようで子供は拘束から逃げ出す。それを横目で見るが追う力は無いようだ。


 そして崩れるように倒れるリカディを俺は見下ろす。


「……無様だな、リカディ」


 哀れだ、という感情しか湧かない。あれほど目の敵にしてたのに今はただの死にかけた男にしか見えない。


 しかし俺を見上げるリカディの瞳には俺への怒りどころか嘲笑っていた。


「……ゴフッ……俺を殺してどうする? ……お前はここの主になりたかったのか?」


 ここの主ーーリカディと同じように子供達を虐げるという考えは全く無かった。むしろ俺はそれが嫌で力を手に入れたのだ。


 リカディの質問に俺は鼻で笑う。


「ふんっ、そんな物に興味はない。俺は子供達を解放する」


 俺の言葉にリカディは嘲笑う。


「……甘いなクソガキ。この世はガキだけで生きていけるほど甘い世界じゃない。だから俺はお前らに生きる術を教えてきた……まさか噛みつかれるとは思わなかったが……」


 コイツは俺らの為にやってきただと言うのか!?


「ふざけるな!! 何人死んだと思ってるんだ!? ラフィだって死ななくてもいいはずなのに!!」


 倒れているリカディの胸倉を掴み、勢いよく引き起こす。眼前にリカディの顔を持ってきて、睨みつける。


 それでも嘲笑うリカディに俺は我慢できなくなって、殴打を始める。みるみる腫れ上がる顔を見ても俺の怒りは収まらなかった。俺はリカディの垂れ下がった腕を掴み、思いっきり力を込める。すると簡単に骨が折れた音が聞こえ、リカディが獣の如く、唸り声を上げる。


 その悲痛な叫びに満足したのか俺の手は止まる。敵とはいえ、俺は何を……


 そんな俺を見て不気味な笑みを浮かべるリカディ。


「ククク、いい顔をしている。お前もっ、強大な力に囚われるのだ!! 人は力を振るいたいという欲望から逃れられん!!」

「違う!! 俺はお前とは違う!!」


 同じになりたくない。コイツとは絶対に同じになりたくない!!


「もうお前は俺と同じだ!! 手は真っ赤に染まり、力を振るう事に快感を覚える!! 何処が違うか!!」


 血を吐きながら俺を嘲笑うリカディに俺は反論出来なかった。そしてリカディは高笑いしながら逝きやがった。



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