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オリバーと風の精霊  作者: 問真
第二章 青いタイル
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背負えぬ重荷3

馬車が、着いた。


『姫様‼』


一番に入ってきたのは、ティモシー・カールトン大尉…よくくる見守り爺であった。

オリヴィエを姫様と呼び、シッキムを奥さまと呼ぶのは、もはや無意識だった。


その後ろから、若い異国人の男が入ってきた。


『船長。オモタセー。』


『ああ、よく来てくれた。

大尉、今来て下さったところで、大変申し訳ないが、こちらのドクターをご自宅まで送っていただきたい。

この夜中に、無理をいって来ていただいたんだ。』


『おお‼

あなたはサウスルス村のお医者様ですな!

姫様のために駆けつけてくださりありがとうございました。』


爺はすぐに立ち上がると、医者をエスコートした。

そして、イルガント王室の紋章がバッチリ入った、走るスイートルームと呼ばれる黒塗りの馬車に案内した。


一方。


『エディン、シッキム。

こちらは私の船で船医をしていたリディアードだ。』


放心してオリヴィエの回りにしゃがみこむ二人に、ミネは声をかけた。

返事は期待していない。


『リディ。

こちらはオリヴィエ。

夕食時に、嘔吐・痙攣して椅子から落ちて頭を打った。

高熱で意識もない。

吐瀉物を詰まらせて一度呼吸が止まったが、

指でかき出したら呼吸は再開した。

ぜーぜーと変な音がしてたけどな。

食物アレルギーと魔力麻疹という見立てだ。

そこの薬を一包飲ませた。…わかるか?』


『ダイジョーブ。シャベルの下手。キクの上手。』


リディアードはにっかりと笑った。


『ソコノナイテルフタリ、ジャマ』


『ああ、どかそう。』


ミネは片手でシッキム、片手でエディンを掴むとどかした。


リディアードはオリヴィエに手をかざすと

呪文を唱えた。

頭の先から、足の先まで、赤い光の線がゆっくりと移動していく。


『ン。』


リディアードは頷いた。


『ミタテ、オナジ…。タダ、イイコトトワルイコトヒトツズツキガツイタ。…セツメイ、ムツカシイ。ジルガンサ語デモ?』


ミネは唸った。


『それは、回復の役に立つ情報か?』


『イイエ。カワラナイ。』


『なら、今はいい。他に漏らすな。』


『メイレイ?』


『お願いだ。私もリディの命が惜しいからな。』


『……………ワカッタ。』


リディアードはブルッと震えた。

リディアードはミネが片手で海賊船のマストをそっと握るように砕いたのを間近で見たことがあった。


『エディン。シッキムを寝かしてきてくれ。

エディンも仮眠をとれ。四時間後に交代だ。』


ミネはエディンの肩を叩いた。


『あ。』


エディンは涙に濡れた瞳でミネを見上げた。


『オリヴィエ、大丈夫だよな?』


ミネは大きく頷いた。


『大丈夫だ。きちんと看病したいだろう?

シッキム寝かして、エディンも寝てこい。

交代は四時間後だ。』


『分かった。』


エディンは頷くとシッキムを担いでいった。


『…船長、今度ノクルーハタイヘンネ。』


リディアードの言葉にミネはふっと笑った。


『全くだなあ…』


























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