背負えぬ重荷4
このこさえ、いなかったらねぇ。
いつも良くしてくれる、様々な人の口から、
その言葉がでる瞬間を、いつもオルハンは痛いと感じていた。
ものごころついた時には知っていた。
自分が歓迎されない存在であるということを。
あのこひとりだったらねぇ。
その言葉を聞くたびに、焼けるような痛さを感じた。
白い髪と金の瞳、それだけが同じ時に生まれた兄弟との違いだった。
あんな子が生まれるから、苦労なさって、お気の毒に。
そんな言葉さえもきいたけとがあった。
だけど、それは、本当だった。
目の前で、溶けるように焼けて消えていく父親が
毎日毎日、夢に出てきた。
ごめんなさい。
オルハンは毎日謝ったけど
ごめんなさい。
時は戻らないし
ごめんなさい。
誰も許してくれない。
ごめんなさい。
生まれてきて、ごめんなさい。
あなたたちを、不幸にして、ごめんなさい。
ぼくがいなければ
最初からいなければ、よかったのに。
謝っても泣いても、目は覚めなかった。
☆
『ミネ!いろいろとありがとうございました‼』
四時間後に交代に現れたのは、すっかり正気に戻ったシッキムだった。
『オリヴィエは…』
シッキムはオリヴィエの額の熱冷ましタオルをどけて熱を計る。
『特に変化はないな。
熱も下がらない。
湯冷ましは時おり飲ませているがな…。
ただな…たまに寝言を言うんだ。
…ごめんなさいって言うんだ。
たぶんなんだけど
生まれてきてごめんなさいって言うんだよ。』
『あぁ…』
シッキムはうつむいた。
それは、毎日、眠りにつくとオリバーが泣き叫ぶ言葉だった。
『激しい戦闘の後にな、…人を殺してしまった後にな、眠れなくなる兵士がいるんだが…
下手をすると自殺したりするんだよ。
…だから、心配だ。』
ミネはそういうと、リディアードを手招きした。
そして、シッキムに目配せをして唇に指を当てる。
シッキムは頷くと、ごく狭い範囲で、空間を閉じた。
〔先程の報告をしてくれ。〕
ミネが口にしたのはジルガンサ語だった。
〔初めまして。風の司のシッキムさま。
私はリディアード、ミネルバ船長の船医です。〕
〔初めまして。〕
〔オリヴィエさんの命を救っているのはあなたです。まずは、それをお伝えしたかった。〕
〔いや…でも治癒魔法が効かなかった。〕
〔ああ、それは残念な方の報告です。
オリヴィエさんの潜在的な魔力の容量が大きすぎるのです。
だから、生命力をかさましするタイプの治癒魔法はほとんど効きません。〕
〔俺だって、少ない方じゃないと思う〕
〔そうです。
シッキム様ので効かないのです。
つまり、オリヴィエさんの場合は治癒魔法は、いっさいあてにできないと思ってください。〕
シッキムは唸った。
〔ただし、いま、オリヴィエさんをいかしているのは、シッキムさまの加護の力です。
魔力麻疹は、私の国では魔法使い殺しと呼ばれています。
魔力の強い子供ほどたすからないから。
でも、オリヴィエさんには人間の魔力以外の強い力がある。
風の精霊のシッキムさまの加護が、いかしているんです。〕
シッキムは、オリヴィエをみた。
〔…よく分かった。ありがとう、リディアードさん。そして、ありがとう、ミネルバ姫。〕
ミネは頷いた。
シッキムはそこで、空間を開いた。
次の瞬間に、足音がして、ドアが開いた。
『治った?』
エディンは、やっぱりまだ泣きそうだった。
『まだだ。』
ミネはそう答えるとグッと延びをした。
『交代の時間だ。私は寝るぞ。
あとは、頼んだぞ!エディン』
『うん。あ、ねぇミネ!』
『なんだ?』
『ありがとう。ミネが居てくれて、本当に助かった。』
『どういたしまして。役に立てたなら良かったよ。エディンも良いドクターを見つけてきてくれた。ありがとう。』
『うん。』
ミネはそういうと、自室に引き上げた。




