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【連載版】脇役令嬢日記~私のことよりメインストーリーを進めてください!~  作者: コーヒー牛乳


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2


 たしかに、私たちの順番になって舞台に出た時に気づいたら殿下の手には、あの金のリボンが巻かれていたのだ。


 なぜアルフレッド殿下が金のリボンを!? と、問い詰めている暇はない。

 演奏が終わり、やりきった……! と顔を上げると、なぜかうっとりと妖しい顔で笑んだ殿下が視線を合わせたまま金色のリボンに口づけを落としたのだ。


 ひぃっっ!! と、舞台上で叫ばなかった私を誰か褒めて欲しい。

 そんなに金リボンが欲しかったのか。と、舞台袖に帰ってから私のリボンも渡そうとしたら、付けておかなきゃダメでしょう! と、ぷんぷんしていた。


 あれのことか。


 あれを、キンヴァリー様は見ていたのか。


「アルフレッド殿下は今までお茶会にもあまり積極的ではなく、学園で初めてお姿をお見かけしましたが、素敵ですものね。あのような素敵な殿方に思わせぶりなことをされては、たまりません」


 オリビア様はおっとりと頬に手を当て、キンヴァリー様の心の声を代弁した。

 まさにその通り! と、キンヴァリー様の扇が踊る。


「ええ。そうなのです。なぜ、あのように愛おしそうに口づけなどされたのか、わたくしそればかり考えてしまって……」


 彼女の視線がちらりと私の方に流される。

 おや……? この視線の意味は。


 社交経験の低い私でもわかる。わかるぞ!

 『それってキンヴァリー様のことを見初めたのですよ!』待ちではなかろうか。

 自分から言わずに、そう? あなたがそう言うなら、そうなのかもしれないわね~。というアレではなかろうか。


 だがしかし、私は知っている。

 アルフレッド殿下が金リボンをキンヴァリー様から取り上げたのは、私とマデリン様に仲間はずれにされると思ったからである。さみしがり屋なのだ。


 そして、金リボンに口づけしたのは、勝利宣言だ。

 あの顔は『ナタリアがくれなくても、もう持ってるもんね~』だ。子どもである。

 

 内情を知っているからこそ、キンヴァリー様に無責任な『あなたのこと好きなんじゃない?☆』なんて言えないのだけれど、こういう時はどうしたらいいの?


 固まっていると、この女子特有の処世術に長けているオリビア様が引き受けた。


「殿下の意図はわかりませんけれど、まあ、第二王子は観賞用ですからね」

「……そうね。先は望めないもの。深入りは厳禁ね」


 はぁ~~~、と。ため息が二人の口から落ちる。

 はて。観賞用。


「そうでした、ナタリア様は隣国でお過ごしでしたね。アルフレッド殿下は第二王子なのですが、少し環境が複雑で……。どの貴族家と繋がっても争いの元となられますので、恐らくご結婚はされないので“鑑賞用”と」


 意味を理解していなさそうだと察したオリビア様が、またそれとなく説明をはさんでくれる。オリビア様、デキる。


「わたくしの家は侯爵家でしょう? 王太子は決まっていないとはいえ、現王妃陛下の御子の第一王子のエドワード殿下にほぼ決定している今、アルフレッド殿下と縁づいてしまえば反意ありとみられるかもしれません」

「ですので、アルフレッド殿下は学園内での秘密の恋人……として、人気なのですよ」


 そ、そうだったのか。

 友人がいなさすぎて知らなかった。


 主役級の顔立ちに、王子という身分、しかも性格もまあ可愛いところもある。それなのに私と影でコソコソ遊んでいて大丈夫なのかと心配もしたが、そうだったのか。


 やたらベタベタ話しかけてくるのは、やっと見つけた同士として喜んでいたのだろうか。寂しかったろうな。今まで警戒ばかりして少し冷たくしすぎたかもしれない、と申し訳なさが湧いてくる。


 動揺を隠すように、カップに口をつけた。

 

「──あら。あれって……」


 イチゴをつつき、物憂げなため息を出していたキンヴァリー様が指し示す視線の先にいたのは、外套をかぶるエドワード殿下と、あの桃色の髪の女子生徒だった。


 もしかしたらマデリン様も!? と、視力はぐいんと急上昇するが、見当たらない。きゅーん。視力が戻った音である。


 彼等の周囲には、よく見たら側近候補の令息たちもいる。

 二人きりではないことに、なぜか少し安心してしまう。


「あの桃色の髪の女性は、学園で見かけたことがありますね」

「あぁ、あの制服で音楽会に出られた方ではなくて?」


 マデリン様が渡した貸衣装のチケットを破いた彼女は、制服で音楽会に挑んだ。ドレスばかりの中に一人だけ制服で立つ彼女は、確かに目立っていた。


「彼女と、かの方は……なぜこんなところに」


 二人はきっと同じことを想像して、口にせず押し黙った。

 それはそうだ。デートなのかしら? なんて余計なことは言えまい。



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