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創星暦八五〇年 六月三〇日 水曜日

 アンネと名付けた番号札の仕事も板についてきた。メイド長にかなり言い含めていたのもあるし、なによりディムの存在が大きいだろう。ほぼ同い年のはずなのに、まるで兄妹のようである。

 見ていて微笑ましいが、私が近づくとアンネが隠れてしまうのはショックだ。治療のために服……とも言えないずだ袋をはぎ取ったのは事実だが、それ以上のやましいことなんてしていないのに。

 ……されたことがあった?

 同時進行で、屋敷にいる番号札に少しずつ名前を与え、使用人専用の大部屋に移している。周りには実験と称しているが、外に気付かれるのも時間の問題だ。

 私もすっかり大胆になってしまった。


(一枚だけページが破られている)


(中略)


創星暦八五〇年 九月七日 光曜日

 驚いた。番号札を全員使用人として雇用したら、屋敷の作業効率がぐんと上がった。

 心なしか、屋敷全体の雰囲気が明るい。こんなに楽しい声が飛び交っている日を私は経験したことがない。

 ディムは最近、剣の稽古の傍らで私の政策にいろいろと口出ししてくる。しかもそれが的確だったりするから舌を巻く。たしかまだ九歳だったはず。

 なんで領内総生産の数式の誤りを一発で見抜けるんだ? それを直した上でさらに生産効率を上げる方法を提案してこないでくれ。私の立場がなくなる。


(中略)


創星暦八五〇年 九月二三日 風曜日

 表立ってディムを紹介できないのが辛い。

 彼はとても優秀だ。他の元番号札も、その働きぶりは目を見張る。むしろ普通に雇った人たちよりも仕事ができる。

 なぜ国は彼らを迫害するのか。闇の精霊の加護を受けて生まれただけだ。それだけで自由を奪われるなんてあんまりだ。

 だが、辺境の一領主にできることなんてたかが知れている。王家とのパイプなんてないし、他の貴族や領主を懐柔できるほどの力もない。

 嗚呼、恨めしい。


(中略)


創星暦八五一年 三月一四日 水曜日

 王家に感付かれた。

 国の精鋭がこちらへ向かっている。

 見聞を広めるために、王都の親類へディムの保証人を依頼した手紙を検閲された。

 私自身に反逆の意思はない。

 いや、番号札に教育の機会を与えただけで、立派な反逆罪だ。

 そういう国なのに、忘れていた。

 幸か不幸か、市長に経緯を説明すると、そちら経由で王都の古い友人に伝手があるとのことだった。自分の身も危ぶまれるのに、危険を冒してでも手を差し伸べてくれた彼には頭が上がらない。

 ディムはすでに出発しているが、早便を出せばまだ間に合う。どうか戻らず、王都で五年間、様々なことを見てきてもらいたい。

 上級学園は無理だったが、普通学園でも得られるものがあるはずだ。


 最後に。

 こんなことになってしまって申し訳ない。

 必ず約束を果たしてくれると信じている。

 私以上の幸せを掴んでくれ。

 愛している。


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