薫物
6月25日
変わらず、色のない世界で目が覚めた。6時20分。
毎日同じ時間に目が覚める。身体に染みついた体内時計に従っているが、思考も身体も酷くだるくて、モノクロームな世界。
あの廃墟を歩くより、ずっと人も明かりもあるのに。
薄っぺらいカーテンは太陽光を通過させて、既に部屋は明るい。毎朝、自然に従って生きていけそうだ。
あの朝からずっと、気持ちが凪いでいる。
タスク管理しているから間違いは少ないはずなのに、空っぽな不安に満たされている。
寮には社食がついている。
朝からやっていると聞いていたが、匂いをかいでも食欲どころか、嫌悪感しか湧かない。食べることを拒否している。
仕方なしに寮から近いというコンビニに向かう。
「揚げたて」と書かれた唐揚げを発見。懐かしい。まだ売っていたのか。アメリカンドッグとか、久しぶりに見かけた気がする。いや、視界に入ってなかったのか。
寮に戻る道すがら、学生の頃のように食べるが、しかし、食事をしても砂を噛んでいるという感じしかしない。美味しくはない。ただ、懐かしかった。
ぼんやり食べながら、空を見上げると太陽は「登っている」。雲の階段を少しずつ。空気も暑い。ジメジメしている。
なんとなくそのまま、帰り途中にある駐車場のフェンスに背を預けて佇むと、クルマや人が少しずつ増えていった。マスク越しでもわかる、明るい学生達「顔」や顰めっ面なスーツさん達を見ながらアメリカンドッグを齧っていた。
この街の匂いがする。
草生きる匂いと少し高い湿度、人にクルマ。太陽光がそれを彩る街に来たようだ。
ただ、生きている。それを眺めている。他人事として。
まるでゾンビだな。苦笑は溢れる。
それにしても、なんかあんまり美味しくないな。
こんな味だったかな。むかしはよく食べていた気がするんだけど。
もう思い出せないや。




