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炙り出された胸の痛み

部屋だった場所に、感謝を込めて。

今は、打ちひしがれる暇すらない。


あの後、時間通りに引っ越し屋がきてものの1時間もしないうちに運び出して行った。


ベッドと椅子をかなり強引に外していたから、少し不安だが、まあ、別にいい。段ボールは殆ど余っていた。


追加した分は削除が基本。メタボリックな建築物は交換され、有機的であるから、一層美しい。


やることは清掃である。とはいえ小さい部屋だ。しかも何もない。だから、日暮れまでには終わった。半日で終わり。


綺麗になった部屋の中央で寝そべって、窓越しに空を眺めている。


明日はガス屋に、引き渡し。

本当にあっという間。終わってしまった。


陰惨とした、空気を纏い、夢から目が覚める。

覚めたいと、俺は望まなかった。


端からみれば、俺はそれなりに「成功者」。

あの引っ越し屋は間違っていない。


それなりな大学の法学博士後期課程を単位取得卒業。あとは博士論文だけ。東証1部上場企業とかの正社員。この職種についてから女性の平均年収311万を下回ったことはない。


それなりに頑張ってこの社会を生きてきた。なのに、負けた気がしてならない。こんなに涙が溢れているのに、


笑いが止まらない。


俺は、俺が得たかった答えは、何だったのか?

わからないけど、伽藍堂な部屋の中。何故か、楽しかった。


ふと、言葉が結ばれた。


つまらない。そう、つまらなかった。

何もかも、全部。リアルと仮想も。


鬱屈した気持ちが爆発したんだろう。

ただ、老いていく我が身が最期に叫んだ。


「嫌」だと。


どうにかとか、なんとかなるなど、根拠のないことを信じていないから。


そして根拠なく、無鉄砲に飛び出していく。

アホだな。バカすぎる俺に、俺は笑っていた。


ひとしきり笑って、荷物を持つ。

泣き笑い。腹筋が痛いな、これ。


さて、今日の宿に向かわないと。時間だ。

最後にポストを確認する。


そこには注文していたヴォーカリストの活動休止宣言前年に発売されたインタビュー雑誌が投函されていた。


今更か。タイミングが合わない時は、本当に合わない。

この方のデータは、相性が悪いのかもしれない。


これは手荷物だな。なんでだろう。よくわからないが、今は怖くて読む気にならない。


気力がない時に調べるには、気合いがいると直感が鳴る。危険だ。このデータは嫌な予感しかしない。


今の気分的にはギタリストの方が親しみがまだ持てる。いや、ないな。どちらも好ましく思えない。


母親とみたあのライブ以降、ギタリストについて興味が失せて全く見なくなったが今ならまた違う観点で見れると思う。


結局、常識に縛られて聖地巡礼はしなかったが気にはなる。まあ、いいか。とりあえず手荷物に詰めて、家を出た。


ここは、もう俺の居場所ではなくなってしまったから。

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