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龍を統べる者  作者: 雪見だいふく
火龍 カルマ
23/23

「これは一筋縄ではいかないな」

「こんなに歓迎されていないものとは……」


キサとハルトが、焚き火の前で小さな声で話していく。


あれから、カルマが山の方へ姿を消したあと、島の民たちがエリシアたちを追い払ったのだ。

辺りはもう夜で、エリシアたちは最初に島に着陸したところで、焚き火を起こし、身体を寄せ合っていた。


「これからどうしようか……」


エリシアが深くフードを被ってポツリと言えば……


「シア様は何も心配しないでください!カルマも同じ龍なのですから、必ずついてきます!」


ハルトが頼もしく断言した。

エリシアがありがとうと言えば、ハルトは顔を真っ赤にして、はい!と返事をした。


「まあ、カルマのことはまた明日考えよう。今は休もう」


キサが優しく言い、エリシアも「うん」と言って、ライたちにもたれながら目を閉じる。






中々寝付けないエリシアは、大胆なことを考え始める。

カルマの様子を見に行こうと…――――

しかし、会うのではなく、こっそりと盗み見るだけだった。


キサたちを置いて、エリシアは足音もたてずに山の中へと駆け抜けていった。

だが、人よりも敏感なキサは、エリシアの行動に気付き後を追うのだった。








昼間に連れられた建物の側に寄ると、所々明かりが着いていた。

カルマの居場所は分からなかったが、最上階が一際明るい。

じっと見ていると…―――――




「何してんだ?こんな夜更けに」


背後から男性の声が響き、エリシアはびくっと身体を震わせて、ばっと後ろを見た。

カルマがラフな格好で、気だるそうに木にもたれて、こちらを見ている。


気配がなかった……


エリシアは全く気づかず、驚きに目を見開いていると、カルマが近づいてくる。


「まさか、お嬢ちゃんの方から来てくれるとはな。どうした?俺が気になるのか?」

「何故私がここに来たことが分かったのですか?」

「おいおい。俺がこの島の結界を張っているんだぜ。誰が何をしているかなんて、すぐに分かる」


そういうことか…―――――


エリシアは無意識に近づいてくるカルマから、距離を置こうとじりじりと後ずさっていたが、不意にトンと背中に木の幹が当たる。

すかさずカルマがエリシアと距離を縮め、片手をエリシアの横に置く。

何だか楽しそうに見えるのは気のせいじゃないかもしれない。


「そんな警戒すんなよ。取って食おうっていうわけじゃない」


と言いながらも、エリシアの被っているフードを取り、顎に人差し指を添えて上向かせられる。

至近距離でじろじろ見られ、エリシアは居たたまれなくなる。


「……」


無言でエリシアの顔を見るカルマは、何を考えているのか分からなかった。

赤い瞳がエリシアの目を覗き込む様に見ると、つい反らしてしまった。


「……離して」


エリシアが小さく言うと、無骨な指がつうっと顎をなぞる。

ビクッと反応してしまい、カルマがにやっと笑った気がした。


「敏感だな」


顎から耳に移り、耳たぶをさすさすと触られる。


「や、やめて…」


エリシアはカルマの胸板を両手で押し返し、抵抗する。

しかし、止めてくれずもう片方の手はエリシアの顔に添えられた。

再び上向かせられ、カルマの燃えるような赤い瞳が迫ってきた時、何か感じたのか動きを止める。




「お嬢さんから離れろ」


カルマの背後にキサが立っており、カルマの背中に刃を立てていた。


「…おいおい。俺は何もしていない。ただ顔を見ていただけだ」

「いいから離すんだ」


キサの剣幕に、カルマがエリシアから離れると、すかさずキサがエリシアを背後に隠す。


「ふ…ナイト気取りか?」

「…黙れ」


カルマがからかうと、キサは冷たく言い放つ。


「ったく…。お嬢ちゃんがここに自ら来たんだ。それを出迎えただけだろ?何をそんなに怒っている?」

「…それだけじゃないだろう」


キサが何を言いたいのか、エリシアには分からなかった。

カルマは意図を理解しているみたいで、にやにや笑っている。


「まだまだ青いな、雷龍。もっと大人になれ。そんなんじゃ支えられないぞ」

「っ……!」


ははは……と高笑いしながら、カルマは家に戻っていった。










残されたキサとエリシアは、静寂な闇に溶け込みその沈黙を破ったのはキサだった。


「……あんまり夜に出歩かないで。お嬢さんは世間知らずなんだから」

「な…!そんなことない!」


エリシアはムッとして、反論する。

キサは冷たい目でエリシアを見下ろし、ふいと視線を反らす。


「ほら。戻るよ」


そっけない態度に、怒っているの?とエリシアが尋ねれば、ああと返事が返ってきた。


「……ごめんなさい」

「もういいよ。気を付けてくれれば」


キサは口ではそう言うが、目はそう言っていなかった。

冷たい視線の中に射抜くように見られ、エリシアは怖くなる。


本気で怒っているのだと分かり、エリシアは半泣きになった。


「ごめんなさい……」


もう一度謝ると、キサが近付いてきてエリシアの目元に触れようとしたが、寸前で止まり代わりに手首を掴まれ歩かされた。


「…もう怒っていない。そんなに怯えないで」







静かに地を踏んで足を進めると、二人の影が闇の中でゆらゆらと揺らめく。

互いに言葉を発しなかったが、繋いだ手からは安心感があった。


大きくて温かい…―――――


さっきまでは怖かったのに、もう安心しているなんて…。

広い背中は何も言わなかったが、エリシアは心地が良いと感じていた。


野営に戻ると、エリシアが眠れなかった事に気づいていたのか、キサが側に近寄ってきた。


「お嬢さんが眠るまでここにいるから」

「…ありがとう」



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