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決意

加筆しました。楽しんでいただけたら嬉しいです。

エクラは、一人で街の中を疾走していた。その様は、空気を引き裂いて進む弾丸。

神威を使用した身体能力の強化の影響だ。

エクラの表情は穏やかではない。

彼の心には焦りがあった。

妹の安否。その友人の安否も含め、彼の心には怒りがあった。それが彼をより追い込み、焦りを出させていた。


(急がないと二人が・・・!?)


エクラが街の中を疾走する数分前。

「相手の要求はなんでしょうか」

「我々、生徒達の撤退。そして、降伏。さらに、エクラ君の単身で指定の場所に赴いてほしいみたい」

レティスが悔しさを滲ませた口調で呟く。

その中は重たい空気が包む。

「わかりました。行きます」

即答だった。

「ちょっと!?これがどういう意味が解るでしょう。あなたを誘き寄せ、殺すのが目に見えているわ」

レティスはエクラの言葉に驚愕する。

「しかし。それでは、妹達の命が」

「私も手を拱いているわけではないわ」

レティスも考えがあった。

「援軍が来るのを」

「援軍が来るわけありません。今回のことは各国は知りません。密かに行われていたのですから」

そう。まだこの事はこの学園を統括する五大国は知らない。

「じゃあ。どうすれば」

「そのために私が行くのです」

返答を返される前に切り出す。

「何か策はあるの」

「あります」

言い切るエクラ。

「わかったわ。でも、もしあなたの身に何かあればこちらも強硬手段をとるわ」

「わかりました」


そしてエクラは指定された場所へと走っていた。

だが、彼は移動している中で時折周囲を伺っていた。まるで誰かを探しているようだ。


「そろそろ出てきてもいいのではないですか」

立ち止まり、叫んだ。

「いつまで私を見ているつもりですか」


そして音もなくエクラの前にその人は現れた。

「わかっていますよね。私に起きている事に」

相手は頷く。それが、全てを承知しているかのように


「またあなたの力を借りてしまう自分が不甲斐ないです」

そこには悔しがる最強の男の姿があった。学園では見せない彼の顔がそこにはあった。

だが、エクラには目の前の人物には見せることに躊躇いはなかった。

それは目の前の人物は自分の事を家族以上に知っているからだ。こんな一面ですら彼にはよく見せていたからだ。


「お願いします」

頭を下げた。人前では見せることない行動。


その人物に頼む。レティスに言った策、それが、これだった。


彼は知っていた。

その人物のこと。

彼が動けばこの状況が変わる事を。

頭を下げるエクラに

その人物は、薄く笑みを浮かべた。



そして、エクラは現在、ダイル達と初めて対面した廃墟に来ていた。

「よく。お出で下さいました」

ダイルは、エクラを歓迎するように迎えた。

「約束どおり来た。妹達に会わせてもらおう」

「いいでしょう」

ダイルはそう言って指をパチンと鳴らした。


「お兄様!」

「ポリデウス様!」

「ヘレネ!シーランド嬢!」


二人は縄で縛られ、手首には鉄の錠が嵌められていた。

その二人をラックスが連れて来た。


「どうですか」

「確認した」

「おっと。動くなよ。ポリデウス。動くと私の剣がどう動くか分からないぞ」

二人の首筋に刃が当てられる。

「く」

「まずは、腰に差した剣を此方へ投げてもらおう」

言うとおりに剣を腰から外す。

「待ってくれ。私は剣をお前達に渡す。だが、それと引き換えに二人の内、どちらかをこちらに渡してもらおう」

「なんだとぉ!?」

「まあまあ。ダイル様。抑えて。いいでしょう。では、シーランド嬢からにしましょう」

「彼女と、剣をそちらに送るには不公平だ。彼女を我々の間の中心に達したら投げよう」

ダイルはそれを了承した。


ゆっくりと歩き出したアリシア。その顔は、悔しさと苦しみに入り交じっている。

彼女が中心に到達。エクラは剣を二人に投げた。

瞬間。光る三日月状の物がエクラの脇腹を襲った。

「!」

「兄上!?」

廃墟にヘレネの叫びが響き渡る。

「エクラ様!?」

駆け寄るアリシア。

「大丈夫ですか・・シーランド嬢」

「こちらの台詞です!なぜ、動かなかったのですか」

アリシアの言うことも一理あった。

エクラなら神歩を使って一気に彼らの懐に入れただろう。それほどの技量を彼は持っていた。

しかし、背後を見ていなかったアリシアは知らなかった。

背後にいたラックス達がいつでもヘレネを殺せるように身構えていたのを。


「お兄様!?ラックス!あなた何を!?」

「おめでたい女だなお前は。俺の目的はお前らの抹殺だぞ。お前も含まれているんだよ!」

「ラックス!」

「エクラ。よく見ていろ!学園最強とちやほやされているお前では何もできずにそこで見ているだけしかできないということをよ!」

振り下ろされる凶刃がヘレネに迫る。

「やめろぉー!!!」

絶叫が廃墟に響く。

それと同時に廃墟に一つの影が飛び込んだのは同時だった。

影はラックスを突き飛ばした。

「がぁ!?」

飛ばされ、地面を転がっていくラックス。

影はヘレネを庇うようにダイルの前に立つ。


「お前は!?」

ダイルも突然の事態に動揺した。

しかし。本能的なのか彼は後方に跳んで距離をとった。

距離をとったダイルの耳に入ってきたのは

「ラックス。私もお前の考えていることなど、シーランド嬢をこちらに渡してきた時から気づいていた」

淡々と告げるエクラの声だった。

「何!?」

「まあ。お前のような手段を選ばない奴だというのはこれまでの行動を見れば察していたがな」

アリシアを縛る縄、戒める手錠を壊し、切る。


「そして、それが、彼、ということか」

ダイルはヘレネを守るようにいる者を見る。

ヘレネを守るようにいる者の特徴はシンプルだ。

黒いフードとマントを羽織り、口元すら見えないほどフードを深く被っている。

その姿はまさに影。


「そうです。あなた方が切り札を持っていたように私も切り札を持っていたんだ。そして・・」

一拍置く。

「ある人が言っていました。切り札は最後の最後までとっておけ、と」

フードの者がダイル達に投げ渡された剣を拾い、エクラに投げた。


それを掴み、抜剣。

抜かれた刀身が煌めく。


「さあ。こちらの番だ」

エクラ達の反撃がここから始まった。


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