防衛の聖剣と追跡の妖刀
楽しんでいただけたら嬉しいです。
「おとなしくしていてもらおうか」
聖剣エクスカリバーを侵入者に向ける。
侵入者はエクラとの距離を空け、ゆっくりと移動する。
「動くなと言っている」
しかし
「!待て!」
エクラは距離を詰め、突きを繰り出した。
間一髪、侵入者は自分から侵入した窓から脱出。
夜の街へと消えていった。
「ポリデウス様!」
「お兄様!」
アリシアとヘレネが物陰から姿を見せた。
この部屋で待機して様子をみていたのだ。
「お怪我は」
「大丈夫ですわ。それよりもいいのですか!?逃げられてしまいました。せっかくの手がかりが」
アリシアは悔しそうに呻く。
自分達を狙う者を知る手がかりが掴める絶好のチャンスと思ったからだった。
「大丈夫ですよ。シーランド嬢」
エクラはそんな彼女に優しく声をかけた。
「大丈夫ってどうして言えるのですか」
「それは、詳しくは申せません。すいません。ですが、手は打ってあるとだけ言っておきましょう。大丈夫です。明日にもなれば、結果をあなたに届けることができるでしょう」
わけがわからないという顔をするアリシアからヘレネへと顔を向けた。
ヘレネは、自分の意図に気づいたのか、複雑な表情をしている。
私はそんな妹に苦笑した。
夜の労働は大変でしょうが、お願いしますよ。義兄上。
夜の港町。とある建物の屋根の上。
黒い忍び装束を着たコクトがいた。
「へっくしょい!!」
冷えるな意外と
「お。来たか」
商会の宿で何かあったらしい。
大方、侵入して防がれたんだろう。
コクトは宿の窓から出る影を見落とさなかった。
「さて。夜の残業を始めますか」
コクトは屋根を蹴り、影を追いかけた。
「よっ」
屋根という屋根をウサギの如く跳んでいるコクト。
神滅一双流移動術 白兎
エクラも多様する神威を使わずとも常人を越えた移動速度と跳躍する技術。
その様は大地を跳ぶように移動するウサギ。
「は、よっと」
目の前にいる侵入者に気づかれないように追いかける。
(神威を使った高速移動 神歩 を使っているな。あいつか)
思い出すのは船で戦ったあの男。
(あれだけの技量。まず間違いない)
コクトは確信した。
追跡は終了することになる。
侵入者が目的地に着いたためだ。
そこは暗いためどんな建物なのか判別はできないがコクトにはその建物が何なのか知っていた。
その建物は昼間にトマズを追跡して辿り着くことになったロックレス商会の傘下の店だった。
侵入者は建物のベランダに着地すると素早く部屋に入ってしまった。
コクトは気づかれないようにベランダの手すりに着地する。
そして聴覚を強化して耳を済ませる。
「どうだった」
「失敗してしまいました」
「なんだとぉ!?」
「学院の生徒は一筋縄ではいかないようだ」
「悠長なことを言っている場合か!!どうするんだ!!このままだと計画が・・」
「落ち着いてもらおう。それに、手がないわけじゃない」
「どういうことだ」
「既に打ってあるという意味だ」
男の言葉に相手は勝ち誇ったかのように笑う。
「こりゃ。ちょっと不味いかも」
話しを聞いていたコクトは悪い予感を感じた。
それから彼らは話すことはなかった。
コクトは気づかれないように地面へと下り立ち、夜の街へと消えていった。
「そうですか。侵入者は、」
「ああ」
コクトは宿へ戻ると待っていたエクラに報告する。
エクラはコクトの話しに耳を傾け、思案する。
「じゃあ。今回の黒幕は」
「ロックレス商会だ」
ロックレス商会の傘下の店を根城にし、最近の海賊被害が頻発する中での商会の羽振りの良さ。
結びつければ見えてくる事実だ。
「実行犯は奴らだろう。だが、ロックレス商会がどうして今になって動いたか・・だ」
「手引きした者がいると」
「後ろ楯がな」
部屋に沈黙が続く。
「まあ。目的が不明な以上これ以上の話し合いは無理だろう」
「そうですね」
「まあ。近い内にあっち側がアクションを起こす。その時がロックレス商会の目的が垣間見える時だ」
二人の話はここで終わった。
コクトが自分の部屋に戻った後。エクラはコクトの言葉を思い出していた。
近い内にあっち側がアクションを起こす。その時がロックレス商会の目的が垣間見える時だ。
「目的・・・か」
エクラは義兄上の言葉がとても重くのし掛かった気がした。
コクトの言った言葉は次の日に現実となった。
食堂で朝食を食べていたコクト達の前でトマズが劇の様な感じで報告したのだ。
「この度、シーランド商会の傘下の店は、我々、ロックレス商会の傘下に入ることが決定されました」




