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港町での出来事

楽しんでいただけたら嬉しいです。

港町に到着したコクト達はアリシアの商会が用意しておいてくれた宿に泊まることになった。

そして現在、コクト達は先の戦闘による疲労と休養を兼ねて責任者であるレティスからの提案によって港町での自由時間を与えられた。そして参加した生徒達は港町の中を自由に行動している。


屋台広場。

この港町の名所として有名な広場で、所せましと商品を並べて人達が客を引き寄せようと声をあげている。

そんな店の一つで。

「アリシア。これなんかどう?」

ヘレネは手に持ったネックレスを彼女に見せた。

渦巻の形をした貝が紐で通されたシンプルなデザインのネックレスだった。

「そうですわね。流行としては今後を期待するとして・・・・」

商人の目となり分析を始める。


「もう!そんな目で視ないでよ!」

「は!ごめんなさい。どうも商品を見てしまうと・・」

我に返ったアリシアは己の行動を恥じた。

そして店頭販売をしている親父に謝罪した。


「いいってことよ。シーランド商会の娘さんに分析されるなんてこっちとしては願ってもないことだったよ」

快く答えた。

シーランド商会は店を経営、開く者達などでは知らぬ者はいないと言われるほどの知名度がある。

その者に評価され、分析されることは悪く言われても貴重な情報と教訓になるのだ。


「じゃあ。おじさん。これください!」

ヘレネは唐突にアリシアに見せていたネックレスを購入しようとする。

「おい。いいのかい。お嬢さん」

さっきの手前であるためなのか店の男は問い掛ける。


「いいの!私が買うって決めたのだから」

ヘレネはそう言ってネックレスを購入した。

そして、店から離れた後、

「はい」

ヘレネはさっき買ったネックレスをアリシアに渡した。


「ヘレネ。どういうことですの」

「欲しがっていたからよ」

恥ずかしそうに頬を染めてそっぽを向く。


「ですが、これは」

「ああ!もう!いいのよ!私があげるって言うんだから受け取りなさいよ!」

ヘレネの勢いに根負けしたアリシア。

「わ、わかりましたわ。ありがたくいただきますわ」

ネックレスを受け取り、首に掛ける。

ネックレスと彼女の髪の色がよく似合っていた。


「似合ってるわよ。アリシア」

「ありがとう。ヘレネ。あなたにしては上出来なサプライズでしたわ」

「どういう意味よ!」

さっきまでの雰囲気はどこへやら。エクラは二人の様子に苦笑する。


こっちは問題ないですよ。ですが、油断はできません。こちらを伺う気配を微かではありますが感知しています。

そっちもしっかりやってくださいよ。義兄上。


「はいよ。おまちどぉ!」

コクトの前には一匹の焼き魚が。

「きた。きた。いただきます」

齧り付き、味を堪能する。

しかし、視線は別の方へ向いていた。

視線の先には周囲を伺う素振りを気づかれないようにしているトマズがいた。

コクトがトマズに気づいたのは偶然と言ってもよかった。


それは、まだコクト達が商会の宿の一室で今日の予定を話し合っていた時だった。

「じゃあ。今日の予定は全員解ったかしら。非常招集以外では皆今日は自由にしていていいわ」

その言葉に歓声が起こる。

それだけに皆が精神的に疲れていたのかが解る。


「コクト。お前はどうする?」

「悪い。ちょっと調子悪くてな」

「なんだ。船の食事にあたったか」

「そんなとこ。楽しんできてくれ」

友人に対する罪悪感があるが仕方ない。

今後を左右するかもしれない事柄だからだ。


「エクラ。お前は言われた通りに彼女達のところにつけ」

「わかりました。義兄上もお願いしますよ」

「わかっているって」

「義兄上は変なところで抜けている時がありますから」

「ひどいなあ」


そしてコクトは屋台をうろちょろしていた。

そこもかしこに美味しそうな匂いが刺激する。

「くそぉ。エクラの奴~」

手にはほんの一握りの賃金しかない。

これはエクラがコクトが食べ物に目が入って疎かにしないための処置であった。

「ま。ここで一品でも食えるくらいはあるからいいか」

そう思い屋台を探す。

「うん?」

コクトはあるものを見つけた。

あれは、トマズ・ロックレス。

そこには他の人が気づかないくらいの地味な服装をするトマズがいた。


トマズだと気づく人はいないがコクトは神威の感知で彼だと解った。

そして現在に至る。

トマズは店の椅子に座り、何も注文せずに誰かを待っているようだった。

そしてフードで顔を覆った一人が向かい合う形で座った。


そして二人は立ち上がり、店を出て行った。

コクトは気づかれないように尾行する。

尾行に関してコクトは自信があった。


尾行していくと二人は小さな建物へと入っていった。

「この建物」

その建物にコクトは見知っていた。

それはロックレス商会の傘下の店であった。

「さてと。どうするか」

そして裏側に移動。

そして建物の壁を蹴っていき、屋根に到達した。

そこで下から話し声を聞く。

下を見るとベランダがあった。

音をたてずに着地する。神威をほんの少し強め聴覚を強化する。


「おい。どういうことだ」

トマズの声。その声には怒りが籠っていた。

「思っていたよりも、子供達の実力があったな」

知らない声だ。

「それで、いつになったら手に入るんだ」

「もうすぐ手に入る」

何を手に入れるんだ。

「しかし。本当なんだろうな」

「何がだ。事がうまくいけば、俺達は、」

「ああ。事が済めばな。誰だ!!」

男は叫び、窓を開け、ベランダに出る。

「どうした」

「今。誰かいたような。気のせいか」

男はベランダから部屋に戻る。


「ふぅー。危ない。危ない」

コクトは冷や汗をかいた。

現在コクトはベランダの裏側にへばりつくようにいた。

再び、コクトは耳を傾ける。


「それで、実行は」

「今夜だ」


コクトの耳に入ったのはその二つのセリフだった。


深夜。

アリシアの部屋。

その部屋の窓がゆっくりと音を立てずに開けられる。

部屋に入る風がカーテンをなびかせる。

部屋に入る黒い影。

そして、ゆっくりと部屋のタンス、机を開けたりして、探す。


「探しても、見つからないぞ」

「!」

人影は振り返る。

そこにいたのは

「さあ。おとなしくしてもらおうか」


聖剣を抜剣したエクラが立っていた。




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