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歩く賢者の石  作者: 望月二十日
三章
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第40話:村のこれからとカーネーション

『トカゲで遊ぼうぜ。背中とか乗ってさ』


『いいねー。おれ、それを見守る係な』


『…………』


『…………』


『『いえーーい』』


 子供たちがこの村に来てからどの位だ?

 えーっと、もう2ヶ月くらいか。


 もちろん問題は色々あった。

 盗みはするし。喧嘩はするし。言う事は聞かないし。逃げるし。


 けど、餌付け込みで懐柔していくと少しずつ慣れてきた。

 全部が解決したわけじゃないけど。


 ノイエが畑、アンコが牧場、リリセラが学問を担当しながら、働かせたり教育も始めた。


 リリセラの学問は読み書きと足し算、引き算、掛け算の計算。

 割り算は難しいしハードルも高いので、掛け算まで修了した子の中で、頭のいい子がいたら教えることにしてある。けどまだ足し算の『た』の字も怪しい。


 俺は主に他所の町に村の農作物を買ったり、ついでに売ったり。

 あと、いつか工業都市になった時の為にアイデアを紙に書き出しまくったり、色々。


 俺はわりとノリが軽いので、威厳を保つために建造物を作って見せたり、魔物を狩って見せたりした。

 もちろんみんなの手伝いも、畑から教育まで全部。


 その結果、数人の子供には怖がられるようになってしまったけど……。


 図らずも、リリセラの言う恐怖政治になってしまったという。

 まあそういうこともあるわな。別に気にしてないよ。ホントだよ。

 …………。



「気にしてるんじゃない」


「そりゃ気にするわ」


「ご主人のこと、みんなの前でほめとく?」


「アンコさん駄目です。ワタクシがやります」


「やめろお前ら。絶対だぞ? リリセラは後でお仕置きな」


「ええっ!? なんでワタクシだけ……」


「アンコはお叱りだから」


「ええー」


「うそだよ。流石に未遂ですらないのに怒らんよ」


 夕食も終わって、のんびりとした時間。4人揃って楽しく団欒。


 子供たちは今は放置。

 4人の為に村を作ったんだから揃っての時間がなくなるようなことはしたくない。出来るだけ時間は持ちたい。


 まあ、子供たちが問題を起こしたら出動するんだけどね。


「それにしても最初はみんな暗かったけど、段々と明るくなってきたわね」


「子供ですから。打ち解けたらすぐですよ」


「リリセラって子供と接する機会多かったのか?」


 お姫様だから、そういう事もあるのかな。

 行事とかで。貴族の子供を相手にしたりとか。


「いえ……特には」


 想像で言ったのかよ。ダメじゃねーか。



「続けていいかしら? それでね、子供たちもこの村に慣れてきたじゃない?」


「思ったより早く慣れたな。もっと長い時間掛かると思ってたけど」


 元があれだし。あるいは年単位で掛かる可能性も考えてた。

 けど、元々警戒心の強いのは連れてくる事すらできなかったし。


「次の子たちはどうするの?」


 今の子供たちもこの村に馴染んできたから、新しい人を迎えるか、って話か。

 次の『子』って言ってるから、どういう人材、じゃなくていつにするの? って話かな。


「まあ、当分先かな」


「そうなの? どうしてか聞いていいかしら?」


「人数が増えると俺らの負担になるし、新しい子に構うと今のが嫉妬するし、今のやつらが作業に慣れて、人に教えられるくらいになったら、次を迎えようかなと」


「なるほど、嫉妬って部分は考えてませんでしたね。たしかに。子供ですからね」


 こっそり実を言うと、アンコにも気を使ってる。

 接する機会が少なくならないように。嫉妬しないように。愛情が薄くなったと思われないように。


 まあ3人全員に言える事だが。


「それに、自給率の問題もあるし」


「『じきゅうりつ』ってなに?」


「簡単に言うと、ご飯を作る量が、食べる量より多くなるようにするって事だよ」


「うん?」


「ご飯の量が少ないと、沢山食べたくても食べれないだろ」


「うん。ひもじい」


 ひもじい、ってまた変な言葉知ってるな。

 ノイエやリリセラから覚えるとも思えないし俺からか? どっかで使ったっけ? まあいいか。


「そこで人が増えたら、食べれるご飯がもっと減るだろ? だから、沢山食べれるように多く作らないとって話」


「わかった。ありがとう」


 自給率とはまた違うが、アンコにはこんな感じの例えでいいだろう。


 一応、農作物を芋重視にして、俺が肉の調達をすれば食料はなんとかなるが、それではダメだ。

 だから、新しい人を迎えるのはまだ早い。



「そんちょーー!!」


 はい、事件。


 子供が10人も居れば、それはもう毎日のように問題が発生して、貴重な団欒も長くは続かない。

 誰だよ。子供たちももう村に慣れたとか言ったやつ。問題が発生しまくってんじゃねえか。


「そんちょーー!!」


「呼んでるわよ。私が見てこようか?」


「いや、行くよ。いくいく」


 アンコへの話も終わったし。



 で、何が起こったのかというと。


「…………」


「黙ってちゃわからないだろ。何があったんだ? そいつに何かあったんだろ?」


 明らかに怪我をして呻く、男の子。

 俺を呼んでたもう一人。事情徴収する俺。

 遠巻きにこちらを伺う他の子供たち。


「分からないならわからないでいいから。黙ってるのは、ナシ」


「あの……、トカゲで遊んでたら、トカゲが急に暴れだして……」


 トカゲで遊んでたら、加減を間違えてトカゲが怒ったのか。

 温厚とはいえ、ほぼモンスターのトカゲを怒らせるとか何やってんだか。

 っていうかトカゲで遊ぶなよ。


「あのな、トカゲ『と』遊ぶのはいいけど、トカゲ『で』遊ぶのは可哀そうだろ?」


 こんな意思の疎通も怪しい奴だけど、こいつも俺の家族なんだ。ペットなんだ。

 一緒に遊ぶのはいいけど、トカゲをオモチャにされるのは悲しいぞ。


「…………」


「悪いことしたら、ごめんなさいだろ? ごめんなさいは?」


「ごめんなさい……」


「よろしい、ちゃんと謝れてえらいぞ。次からは気を付けるように。じゃあ解散」


「……ぁぅぅ。ぃたい……」


 この転がってる奴、治してからね。







「ってな感じで、俺、明日からしばらく手伝いに入れなくなるけど、いいかな?」


「? どういうかんじ?」


 子供の問題も片付いて、家に帰って明日からの予定を決める事にした。

 ちょっと最近思う事がある。忙しさのあまり、とある問題が発生している。


「また何か買いに行かれるんですか?」


「いや、なんていうか村を作り始めてから魔力の消費が激しいから、新しい魔法を開発しようかなーって」


「また、すぐそうやってポンポンと魔法を作って……」


 言うほどちょくちょく魔法なんて作ってないと思うけどな。

 アドリブで詠唱(ポエム)してるから、その都度作ってると思われてるのかな?


「新しい魔法ってどういうのですか?」


「魔力消費が激しくて困ってるんだから、当然、魔力が回復する魔法だよ」


 他の魔法すべてが省エネになる方法なんて皆目検討もつかないから、開発するのは魔力が回復する魔法で決まり。


「『エーデルワイス』みたいなやつ?」


「それとはちょっと違うかな」


 壊れた物の回復と、減った物の回復なので、微妙に違うけど、それをアンコに説明するのは難しい。

 俺もうまく言葉にできない。


「待って、おかしいわ。魔力を使って魔法を使うのに、魔力が回復したらおかしいじゃない」


「回復って言葉を使うから変に聞こえるけど、簡単に言うと奪う感じだから」


「略奪ですか?」


「それは人聞きが悪すぎる」


 今回は、冥の魔法で死体から魔力を抜き取るのを使おうと思う。


 まず、冥の魔法で抜き取った魔力は、すぐに空気に溶けてしまう。

 え、知らない? 魔力感度低いんじゃない? とにかくすぐ溶けちゃうの。


 しかし、抜き取った魔力をそのまま自分の体に取り入れる事が出来たらどうだろう。

 自分の魔力に変換出来たらどうだろう。


 そう、自分の魔力として使えるわけ。


 普通の状態だって、大気中から呼吸という手段で魔力を取り込み変換しているので、理論上は可能。

 自ら生成するのと、大気から取り込むの。二つの方法で魔力は出来てる。


 問題は死体が必要なので魔物を殺して回る必要があるのと、取り入れというのをしたことがないので出来るかどうかが分からない事。この2点。





「と、いうわけで、早速やってきました。ダムです」


 次の日。

 俺はダムに居た。一人で。

 独りには慣れている。

 ジジイが居なくなってから、ノイエと出会うまで、ずっと独りだったから。


 それはそれとして。


 なぜダムなのかと言うと、むやみに魔物を殺すよりは魚を殺す方が精神的に楽だから。


 殺した魚は後で食べれるし、子供の分も考えたら結構な量を取っても無駄にはならないし、あと魔力量も少ないから。変換吸収もしやすいはず。


「どう? エコでしょ?」


 言葉を発信しても誰も返信くれないので、早速取り掛かる。


 魔法で魚を釣り上げて、凍らせて、スーっと死んだ所で冥の魔法を使い、魔力を抜き取り、変換し、取り込む。


「魔力を抜き取る所までは楽勝なんだが、取り込みで失敗するな」


 取り込むというか、他人の魔力を自分の魔力に変換するのが難しい。

 魔力を自分に作用させたり、変換自体は普段からしてるし、できないって事はなさそうなんだけど。

 感覚がつかめない。

 取り込んでから変換した方がいいのかも?


 これは、死体の山ができそうだ。




 結論から言うと魔法は完成した。

 その名も吸収の大魔法『カーネーション』。


 名は転生を意味するリインカーネーションをもじって付けた。

 『エーデルワイス』も花の名前だから丁度いいかなって。


 開発に要した期間は5日と、思ったよりも時間が掛かったけど、思ったよりも時間が掛からなかった。

 ノイエがヒールを覚えるのに掛かった時間を考えたら文句は無しだ。


 この魔法も難易度高いから大魔法に分類してもいいだろう。他人に真似できるとも思えないし。



 ちなみにこの数日間、毎日魚が食事に出されてアンコが泣いていた。

この1話は元々、村の名前を考える話でしたが、くそどうでもいい内容だったので村のこれからを考える話に修正しました。


村の名前どうする?

トーヤ村は嫌だ。自分の名前入れるのは嫌だ。

じゃあ、こんなのどう?

いいんじゃない?


みたいな。

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