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歩く賢者の石  作者: 望月二十日
三章
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第39話:新しい住民

「ぐわーー、リアカーが壊れるー」


 悪路と俺の走る速度にリアカーが耐えられず跳ねまくる。このままでは壊れてしまう。速すぎるんだ。


 こうやって見ると、トカゲ用に買った荷車はショック吸収がそれなりに効いていた。

 あれでもガタガタすると思ったが、やはりそういう工夫はしてあるらしい。

 帰ったら確認して、こっちにも採用しよう。


 多分、筒と棒のジョイント部分に、クッションをインしているのだろう。

 パッと思いつく方法だとそんな所だ。


 そういえば、現代の車とかってどうやってるんだろう。

 かなり高度な事をやってそうだけどさっぱり想像もつかない。夢の中で確認しておけばよかった。





 ――俺は村を離れ、下流に位置する隣町へ来た。

 大体、下流町までの距離は50km位だろうか。

 隣町の癖に遠すぎでしょ、50kmってどのくらいよ? 新宿から湘南の海位までか? 遠すぎ。


 ……とか言いつつも40分程で着いてしまった。時速70kmは出てたのか?

 まあ、チーターが時速100kmオーバーでランするんだから、魔法使ってたらこのくらい普通でしょ。普通。リアカーも壊れずに済んだし。


 何はともあれ、隣町に到着した。


 まずはそうだな。

 とりあえず、町を全体的に見て回って、うち村で作った売れそうな物を売って、その後、買い物をしよう。勧誘はそれからかな。


 塩と布や服を大量に買い込む。あと食料も。

 石や金属の物は俺が大体作れるのでなんとかなる。木製の物もまあ、高度な作りじゃなければDIYできる。


 勧誘は、ストリートチルドレンを食料で釣ればいいだろ。

 多分win-winだと思うんだけど、町から見てストリートチルドレンって必要な存在なのだろうか。

 普通に連れて帰ってもいいのだろうか? 実際のところ。

 まあいいか。



 では勧誘。



「お嬢ちゃん、親は? お腹空いてない? こっちに食べ物あるよ、ついておいで……」


「……いく」


 優しい言葉で誘うと、簡単についてきた。



「あし、いたいよ……」


「どうしたの? へいき? ちょっと人気のない所に行こうか? おじさんが良いことしてあげよう」


「……いく」


 優しい言葉で誘うと、簡単についてきた。

 入れ食いだ。




 やはりこの町も結構な貧困児童がいるらしく、すぐに集まった。ジジイの言っていたとおりだ。どこにでも居る。

 結果――14人と予定よりも多くなってしまったけど、これでも何人かは警戒されて釣れなかった。

 14人か……、リアカー大丈夫かな。

 まあ、大丈夫だろ。詰めれば。子供だし。荷物もあるけど。


 で、帰る前に食事を済ます。

 なぜなら飢えさせたままだと、荷物を漁られるから。食料も積んでるし。


 芋! 肉! そして少々の果物。

 とにかく腹を満たしつつ、ほのかな甘味。

 これで欠食児童どもは陥落ってわけ。

 

「じゃあ今から俺の村に行く事になるけど、全員本当にいいんだな? 仕事はいっぱいしてもらうけど、腹いっぱいも約束しよう。ではしゅっぱーつ」


 ――そして帰り道。

 やっぱりガタガタするので、子供たちは辛そうだ。

 逃げ出そうとするやつもいた。荷物を漁ろうとするやつもいた。

 けど我慢させた。

 この辺はちょっと強引にやらないと無理っぽい。しょうがない。魔法で黙らすか。


 そんなこんなで帰路は行きよりも時間がかかったが、別にそれほどかからなかった。

 休憩を入れつつ2時間ってところだ。つまり――



「ただいまー」


 まさかの日帰り。

 休憩を挟んで帰ってきました、我が村。

 早朝に出かけて、日が沈む前に帰宅。


「ご主人もう帰ってきた」


「えっ、トーヤ? 何か忘れでもしたの?」


「いや、普通に帰ってきた。用事も終わった」


「トーヤ様……いえ何も悪くないのですが。ですが……なんというか」


 みんなの呆れ顔も最もだ。俺だって同じ気持ちだよ。

 あれだけ準備してその日に帰ってくるとか。なんかすごいやりきれないわ。

 なんで5日も掛かると予定してたんだろ……。







「気を取り直して、まずは自己紹介をしようか。ここにいる女性たちはこれからお世話になる人たちだから、失礼のないように」


 そしていずれはこの3人を守る人材になって欲しい。そのための投資はする。いくらでもする。


「まずはノイエ、エルフだ。敬意をはらうように」


「よろしくね」


「次にアンコ、犬だ。尊敬するように」


「おー」


「そしてリリセラ、……あー、えーっと、うん」


「何か言ってくださいよぉ」


 種族で紹介するのは失敗だったね。

 なんも思いつかなかったよ。


「では、気を取り直して――」


「何回気を取り直すのよ」


 それは言わないで。

 ちょっと段取りミスっただけだから。


「俺の事は村長と呼べ。では以上。よしっ、アンコ、あとは任せた。俺は別にやることがある」


「おー! ……なにすんの?」


「畑の案内と、牧場の案内だ。任せたぞ」


「あい!」


 元気のいい返事だ。よし解散!


「おーし、みんなアンコについて来い」



 話を理解していないのか、ぼーっとしている子供などが居たが、なんとかアンコに付き添わせることに成功した。

 ぞろぞろと引き連れて歩く姿は、幼稚園の引率の先生のようだ。


「ねぇねぇ」


「お?」


 おっと、もう話しかけられてる。流石アンコだ。その調子で子供たちを手懐けてくれ。

 やはりこういう事はアンコに任せるのがいいな。

 邪気が無いから、警戒心を薄れさせる。


 これなら案内が終わった頃には大分打ち解けてるだろう。


「あの男の人、なんかおかしい」


 おい、聞こえてんぞ。


「ご主人? ご主人が変なのは、ご主人だからしょうがない」


 おい! 聞こえてんぞ!

 あんまり不安にさせるなよ。



「ノイエもアンコの手伝いをしてくれるか? 色々食べさせたから大丈夫だとは思うけど、畑とか荒らしちゃうかもだし」


 飢えが続くと、食べられるときに食べちゃおうって考えが身についてるかもしれない。


 それに、ノイエにも早く慣れてもらった方がいいだろう。 

 逆にノイエの方が慣れるべきなのかもしれないが。


「そうね、あなたが何をするのか気になるけどそれは後で聞くわ。案内って、普段してる作業の内容を説明すればいいのね?」


「正解、よろしく頼んだ」


 ノイエに任せておけば安心だ。

 今度こそ作業に取り掛かる。



「それでワタクシは何をすればよろしいのですか?」


「あ、居たんだ」


「居ますよ! ひどいです!」


「うそうそ」


 プリプリ怒るリリセラ。

 やっぱリリセラはいじってこそ輝く存在だな。じゃなくて。


 頭を出来るだけ柔らかく撫でる。


 ついリリセラを子供扱いする癖が抜けないな。別に抜けなくてもいいか。

 やっぱり10歳差の意識が強いんだろう。


「もう……。それでワタクシはどのようにすればよろしいのですか?」


 もちろんやってもらうことは決まってますよ。

 いじりはしても、蔑ろになんてしませんよ。


「布をたくさん買ってきたから、服として使える大きさに切っておいて欲しい」


 布一枚でも紐を使えば服になる。今着てるボロボロの服よりはよっぽどいい。

 どいつもこいつもボロボロな服だし、しかもサイズが大人用っぽいから多分盗んだやつ。

 そういうのって良くないじゃん。



 リリセラにも役割を渡して今度こそ、自分の作業に取り掛かる。


「家を用意してなかったのだ」


 あんなに準備して行ったのに、子供達が住む家を用意してなかったことを思い出した。

 というのは嘘で、人数が分からなかったので、後回しにしていたのだ。

 

 んで、用意するわけだけど。

 やっぱアパートや長屋みたいに、個人に部屋を用意するよりも、でかい部屋を用意して共同生活させるべきかな。どうだろ。


 あの子達の自我が成長するまではそうするか。

 寄り添って生活する方が当面は安心できるだろうし、仲間意識も芽生える。

 じゃあそういう方向で。


 ということで。


 共同トイレと、男女別の部屋をひとつずつだけの簡単な家屋をさっと作ることにした。

 食事は俺らと一緒だからキッチン等は要らない。


 家屋には寝る場所として、藁っぽいのを積んで、上にシーツ替わりの布を載せて完成だ。

 やわらかすぎる寝床は慣れてないと、身体を痛くするっていうしな。

 この辺もおいおい決めていこおう。



 家屋が完成したあとは、風呂の用意。もちろん男女別。

 子供であろうとリリセラ達の肌をオスに見せる気などサラサラないわボケ。調子のんな。


 なら俺が男の子を入れて、アンコあたりが女の子達を入れればいい。

 とは言え、俺と一緒の風呂は楽しいぞ。空だって飛べるし。


 そして、ここで使うのが洗剤。

 石鹸の作り方自体はわかったのだが、苛性ソーダとかいう化学薬品を用意するのが無理すぎた。

 よって俺が開発した洗剤を使う。

 

 旅の最中、いろいろ試してこれができたけど、割と良い出来だと思う。

 泡立ちを優先したからか、洗濯物の汚れとか、水洗いとは段違いで落ちるし。

 これを使って子供らをキレイにしてやるぜ。

 だってばっちいんだもん。


 ウチの村では清潔にね。そういう所から始めよう。

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