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揺れだけを残して。  作者: sigure


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見られる音

視線が一瞬だけ、動いた。


音を辿っているはずなのに、どこか遠くの景色を見ているようだった。


指は止まらない。

でも、意思があるのかは分からない。


ただの繰り返し。

同じ形にならない。


呼吸が揺れる

私もその音に引っ張られる。


指が止まった瞬間、静寂が私を襲った。


音は途切れていない。

いないはずなのに、確かに間が生まれた。


初めて、存在を確かめられた気がした。


視線があったわけじゃない。

でも、確かに見ていた。

 

音が空気を揺らす。


それを自分が揺らしたのか分からないまま、動けない。


音の波のなかで、視線が波紋を立てる。


何かを探す。


指は止まらない。

だが、わずかに形を変える。


いつもと同じ音。

でも、何か違う。


何かが私を掻き立てる。


呼吸がほんの少しだけ揺れる。


その揺れが、私だった。


音が、途切れた。


ほんの一瞬。

その一瞬で、世界に色がつく。


視線が、こちらに向いた。


初めて、存在を見てもらえた。


前と変わらない音なのに、音だけではない。


そこに人がいる。

命がある。


それを認識した瞬間、呼吸が、時間が止まりかけた。

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