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いつか見た夢

ザアァーーー。

パシャパシャパシャ。


失敗した。

今更のようにそう思いながら、家への道を急ぐ。

そうこうしている間にも、雨の勢いはどんどん増して来ている。

全身もぐっしょりと濡れて、そろそろ下着もやばい頃だ。


「……あ!」


道の先。

ほとんど何もないこの場所にある、ただ一つの屋根のある場所がようやく見えた。

なんとかその屋根のある場所、バスの待合所に駆け込む。


「随分と濡れちゃったな……。風邪引かないといいけど……ん?」


待合所にはベンチがある。

走って息も切れて来たので、座って少し休もうと目を向けると、そこにはすでに先客がいた。

ーーー白。

いや、銀だろうか。

小さく丸まったそれは、微かに震えていた。


(へー、綺麗な色。しかも珍しいな。)


刺激しないように気をつけながら離れて座って、上着を脱いで絞る。

ハンガーなんてあるわけもないが、広げておけば少しはマシになるだろう。

幸い今は暖かい時期。

少しぐらい薄着でも問題なさそうだ。

ーーーと。


「?」

「…………。」


振り向くと、さっきまで寝ていたようにも見えた白い『それ』が起き上がっている。

しかも、なぜかこちらを見ていて。

警戒するような、不思議なものを見るような。

ともかく、じっくりと見られ続けると居心地が悪い。


「あー、えーっと。おじゃまします。」


って通じるのか、と自分で突っ込みながらも、軽く頭を下げる。

それをジッと見続けて。

白い『それ』は、プイと顔をよそへ向けた。


「ははっ……。」


その時の顔が笑ったように見えた、なんて。

僕も随分と安易だ。

ともかく、同じ屋根を使うことを許されたらしく、それ以降目を向けられることもなかった。


それからしばらくして。

雨は上がり、僕は無事に家に帰り着いた。

白い『それ』とも、もう会うことはなかった。

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