表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役は二度目も悪名を轟かせろ!  作者: 大恵
第4章 エルフとドワーフ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/373

優先すべきこと

すみません、遅くなりました。

「く……。ターラインでもいれば楽なんだが」

 口の中で今は友人ではない友人の名を小さく呟き、下町の家の壁に張り付く。

 そうしてオレは青い月明かりを避けつつ、極めて慎重に……道を進む。


「くっそ……。意外とうろうろしてるヤツラがいるな」

 下町の住人など、とっとと寝てしまうと思っていたが……意外にも外出してるヤツや起きているヤツが多い。

 たぶん古来種の魔力プールが稼働し始めて、光源の魔法ランプに直接魔力が供給されるようになり、使われなくなった余剰魔力石が出回るようになったからだな。

 魔力石を使った安価なランプを使っているんだろう。

 早く寝ろよオマエら……。と、愚痴って見たところで、人は明るいとなかなか寝ないもんだ。

 お陰でオレみたいな素人じゃ、隠密行動がやりにくい。


 投影する魔法陣は、夜においては非常に目立つ。

 それそのものが光るからだ。

 足音を消すため、足周辺に沈黙の魔法をかけてある。しかし隠密行動において、それだけでは不十分だ。

 認識阻害の魔法を併用しているが、完全とは言い難いため、物音を立てて注目されればバレる可能性があった。


 ターラインならば、こちらからの音を全て消し、こちらに入ってくる音だけを選別する魔法が使える。

 いくらこのオレであろうとも、音を自在に制御するのは難しい。魔法の才能ではなく、音階や音律、共鳴など、音その物への知識と才能が足りないからだ。

 ただし人の作った新式魔法陣を真似る限りでは、音への才能云々は必要ない。

 あくまで独式として自分流に改良したり、ターラインの独式をマネする場合に才能が足りないという事だ。


『なんでこんなに慎重にいくの?』

 普通の目では見えないことを良い事に、平然とオレについて歩くタルピーが訊ねてきた。


『……悪いことしてるという自覚が、他人から隠れるという選択を促す』

『なるほど。姫さま、ザルガラさまのことよくわかってるー』

『……それほどでも』

 うるせーな、女性陣。

 会話を聞かれないからと、気楽にしゃべりやがって。

 こっちは会話に参加できないので、いろいろストレスが貯まる、――ん?


 裏路地を進むオレの前に、ボソっと何かが落ちてきた。

 小さな人形。

 ちょっとボロい手作り人形だ。

 普通に落ちていたら気にも止めないが、オレの目の前に「今」ってのは気になる。

 ふと上を見たが、落とし主らしき者はいない。窓もない。

 どこから落ちてきたんだ?


 オレは人形を拾い上げて調べる。特になにも仕掛けは無い。特徴といえば、目に使われているボタンが、欠けた貝ボタンというくらいだろう。


『それ、屋根の上を走って、跳び越えていった人が落としていったよ』

 タルピーはおしゃべりしながらも、周囲の警戒をしていてくれたようだ。

 そういうところはしっかりしてる。できれば、屋根の上を走るというあからさまに怪しいヤツに、気が付いた時点で報告してほしかったが。

 どこかタルピーはズレているな。


『……あら? その人形』

 ディータ姫が人形を指差した時――。


「火事だぁあーーーっ!!」

 

 火事という声が下町に響き渡った。それに反応したオレは、咄嗟に腰のカバンへ人形を投げ入れ、思わず通りに顔を出してしまった。

 認識阻害の魔法の効果があるのか、オレを気にする人たちはいない。

 ガンガンとバケツを叩く男が道を駆け巡り、寝ていた者も閉ざしていた戸を開け放ち、下町の住人があちこちから飛び出してくる。


「火事だって?」

「どこだ?」

「葡萄孤児院の方だ! えらい燃えてるぞ!」


 各々がバケツや桶を手に、孤児院へと向かっていく。

 下町の住人達も他人事ではない。延焼すれば下町が炎に包ま……れないな。

 区画区画の要所要所に、延焼防止などの魔法陣が埋設されている。

 遺跡の区画分け時代の名残りで、破壊的な炎や魔法が隣りの区画に及ばないように魔法の仕掛けが施されているからだ。

 しかし、出火元の近所は灰になってしまう。

 下町総出で、消化活動に当たらなくてはならない。


 慌てて消化活動に走る住人を見送っていると――


『ザルガラさま……。いくらなんでもやりすぎだよ……』

「オマエはオレをどういう悪者だと思ってるんだよ」

 疑いと軽蔑の目を向けてくるタルピー。


「火事っていうなら、オマエの方が怪しいぞ」

『ひどい! ザルガラさまはどういう目でアタイを見てるの!』

「オマエが先だ、先」

 などと、タルピーとじゃれ合っていたら――。

 

『……ふざけてないで、いきましょう』

 ディータが少し怖い声で主張してきた。

 ここぞというときに、挟み込まれる力のある言葉だった。


「お、おう」

 ディータの重圧を受けて、オレは考えなく孤児院へと走った。

 途中で忍び込むつもりだった事を思い出したが、今更立ち止まっては怪しまれる。

 消火活動に向かう人波に乗って、孤児院へとたどり着いた。


「もっと水もってこい!」

「水道なんてちんたらしてるもん使うな! 井戸の蓋開けろ! 飲み水じゃねーんだ! 井戸を使えっ!」


 小さな孤児院が、大きな炎に巻かれていた。

 さながら骸骨に赤い蛇が絡みついて、あばれているかのよう惨状だった。

 住人による必死の消火活動も、火のいきおいに押されている。


「こりゃ……油かなにか撒かれたな。普通の燃え方じゃない」

 魔法が使われた痕跡はない。そのわりに炎の勢いが激しい。所々、不自然に炎が噴出してるところを見ると、油を容器に入れて配置したな。


 少々のぼやならともかく、消火の魔法など知らないので、オレも対処にあぐねた。


「空気を遮断すれば、一時炎が弱まるだろうから、その間に中へ入ってゴーレムの部品を……」

 これ、火事場泥棒だな。

 犯罪度が意図せず上がっていく。 

 などと考えつつ魔胞体陣の準備をしていたら、横からタルピーがオレを引き留めてきた。


ねつっ! 熱が残って外の冷たい空気がヒューって来てに、キューッ、バーン! って爆発する! 待ってて、アタイが延焼止めるから!』

 流石、炎の精霊。火について詳しい。頼もしい。

 説明がなんか怪しいが。

 オレはすぐに魔胞体陣を停止させ、タルピーに後は任せた。

 タルピーが消化する人たちを飛び越えて行く。

 孤児院の火勢は止まらないが、周囲に広がる熱が収まって来た。どうやら、タルピーが熱を吸い取っているようだ。

 輻射熱が収まったせいで、素人消火活動も捗り始める。

 

『……中に人がいるかもしれません。慎重に対処してください』

「お、おう」

 ディータ姫の声が真剣だった。いつもの抜けた声と違って、オレに強いプレッシャーを与えてくる。

 これが古来種から王族に与えられた力か。


 オレはディータの意志を汲み取り、エルフのアマセイを探した。

 孤児たちが集まっている場所はすぐに見つかった。


「おい! オマエらの保護者はどこにいる?」

 泣き疲れているのか、火事の衝撃なのか、やけに大人しい子供たちだった。

 子供たちは震えながらオレを見上げる。


「あ、あんたは……」

「そうだ。この間あったな。アマセイはどこにいる?」

「そ、それなら……あっち」

 子供たちが指差す方向に、下町の女性たちが集まっていた。

 その中心で、力なく横たわるアマセイがいた。

 なんだ? 煙でも吸ったか?

 そう思って近づくと、その判断は間違いだと気が付いた。


 アマセイは肩から胸にかけて、酷い裂傷があった。

 下町の女たちは、アマセイの服を脱がせて必死に包帯を巻いていた。


 これは明らかな剣による傷だ。

 火事でできる傷じゃない。


 とりあえ出血を止める新式魔法を使い、アマセイに事情を訊く。


「おい、なんでこんな怪我をしてんだ、アンタ?」

「ま、まだ中に……子供が2人……」

 オレの質問に答えないアマセイ。

 クルクルと新式の治療用立方体陣が回る下で、アマセイは苦しそうに子供の心配をしていた。

 火を見て動揺している姿ではない。身体は震えておらず、身を堅くしている。

 これはもっと別種の「脅威」に晒されたからに違いない。


「おい、質問に答えろ。どういうことだ?」

『……ザル様』

 気になるんだが、それを聞くよりやる事があるだろうと、ディータがオレの背を突く。


「あいあい、わかったよ。人命優先ね」

「お願い、します」

 オレはディータに返事したのだが、アマセイは自分に言ったと勘違いしたようだ。

 まああながち間違いじゃないわけだが。


 消火活動をする下町住人を押し退けつつ、オレ自身を守る魔胞体陣を作る。

 熱を遮断する魔胞体陣に包まれ、孤児院の玄関前に立った。


「どけどけっ! オレが通るぞっ! 【手前勝手な覇王の担路】」

 古式の魔法が発動すると、業炎がオレの進む道から退いた。ついでに足元のガレキまで、綺麗に端へと避ける。

 おおーっとギャラリーが湧くが無視。

 この魔法は炎そのものが消えないので、オレが通り抜けると道は塞がれてしまう。悪路などを「進むため」という、完全にオレ個人通行専用の魔法だ。

 炎のトンネルを潜り、一階の探索を始めた。

 火勢は強いが、まだ空気は残っている。空気の流れがいいのか、使われた可燃物の燃焼が空気をあまり必要としない性質なのか、大量の空気を含んだ可燃物なのか。

 まあ今はその辺の考察はいいか。 


「一度来た事あったから、だいたい間取りがわかって良かったぜ」

 迷う事はないだろうが、効率が違う。

 一階のあちこちを覗いていると、ディータがオレの肩を叩いた。


『あっちの部屋。だれかいるみたい』

 物質的な影響を受けないディータは、炎や騒音に惑わされない。冷静に人の気配を探ってくれた。

 ディータの差したドアは、僅かに開いた状態だった。……にも関わらず、なかなか開かない。

 熱せられ石が膨張して割れ、梁が押されたのだろう。

 

「『感情的な来訪者アングリードアノッカー!』」

 無理矢理ドアを叩き開ける魔法を使い、半開きのドアをこじ開く。焼けたドアはその身を壊しながら開いてくれた。

 

「ここは倉庫か?」

 食料品や生活用品が収まった倉庫だった。入り口付近の荷物が燃えていたが、奥はまだ延焼してないようだった。

 そこに箱を抱えた黒髪と赤髪の少年が2人いた。


「お、大丈夫か?」

 声をかけると、少年は煤で汚れた顔をパッと上げた。

 重そうな箱を抱えて立ち上がり、オレへと駆け寄ってくる。


「あっ! あんたは、助けに!? ごほっ! ごほっ……。これを持つのて、手伝ってく――」

「だっ、しゃらーっ!」

 前蹴り一発。

 オレは問答無用で、黒毛の少年が持つ箱を炎に向かって蹴り飛ばした。

 勢いよく箱は吹き飛んで、近くの炎に包まれた。


「ああっ!」

「なにすんだよ! アザナの兄ちゃんのゴーレムを!」

 ――え?

 アレ、そうだったの?

 少年に責められ、確認するためオレは首を業火へと向けた。

 箱から飛び出したゴーレムの部品らしき柔らか素材が、轟轟とした炎に巻かれて溶けだしていた。


「……う、うるせぇっ! 自分の身を心配しろ、マヌケが!」

 オレは構わず赤毛の少年が持つ、もう一つの箱を蹴り飛ばした。

 目標をたがわず、箱は業火の中へと飛んで行った。

 燃えていく箱を見て、少年たちの顔が怒りに燃える。


「なにしてんだよ、お前っ!!」

 黒毛の少年が叫ぶ。


「オマエらを助けてんだよ!!」

 自棄でオレが叫ぶ。


 2人の少年はオレの声に慄いたのか、びくりとした後になぜか神妙になった。

 促すと素直にオレの魔胞体陣の中に入ってくれた。これで孤児院が崩れても生き残れる。


 素直についてくる2人の手を引き、炎が退く廊下進んで外へと安全に脱出した。


「やったーっ! やってくれだぞー!」

「貴族様が子供を助けてくれた!」


 下町の住人たちが、オレを称えてくれる中、2人の少年たちはアマセイの方へと駆けて行ってしまった。

 礼も無しかよ、アイツらは。あとでゲンコツ食らわせてやる。 


「いやー、さすが貴族様の魔法は違うね」

「子供と侮っちゃいけませんね! さすが貴族様」

「……って、うっせーな! オマエらは消火しろよ!」

 鬱陶しい住人たちを振り払って――ん?

 なんでオレが貴族って分かってるんだ?

 オレの今の格好は、侵入用に黒一色の動きやすい格好なんだが?

 アマセイか孤児辺りが説明したのか……。マズかったなぁ、口止めしておけばよかった。


 ところで消火の手を休めて、オレに群がる住人たちだが、なんでそんな余裕があるんだ?

 良く見ると下町周辺の街士(街付きの魔法使い)たちが集まり、消火活動が始まっていた。

 なるほど、これで余裕があったのか。

 まあまあ魔法使いでありながら便利屋扱いの街士だが、アイツらはなんだかんだでこういう街でのトラブル解決が得意だ。

 後は彼らに任せた方がいいだろう。いくらオレが魔法に長けていても、火事への対策は知らないからな。


 いろいろ予定は狂ったが、これはこれでいい。

 部品が燃えた事で、アザナとのゴーレム勝負で優位に立てたのは確かだ。

 技術奪取は完全に失敗だが――。


 それより気になるのは、アマセイの刀傷だ。

 アマセイが倒れていた場所にいくと、彼女の治療をしている鎧の魔法使いと巡回兵がいた。

 あの斜めった巡回兵に見覚えがある。


「よっ。お仕事ごくろーさん」

 オレは巡回兵十人隊長スロウプに、手を上げて声をかけた。


「はい、ポリヘドラ様。またお会いしましたね」

 敬礼を返してくるスロウプ。

 まさかコイツが火を放ったわけではないだろうが、こんなに早く来るなんて怪しいな。


「なんで、こんなところにいるんだ? こんな深夜まで巡回兵隊長さんが見回りか? やたら仕事熱心だな、スロウプさんよ」

「怪しまれているようですが、彼は違いますよ」

 アマセイを治療していた魔法使いが立ち上がって言った。

 王都騎士団大隊長フランシス・ラ・カヴァリエール男爵だった。


「フランシス様。周囲に怪しい者はおりません」

「発火物など、不審物も確認されません」

 暗がり、路地、人山から3人の獣人――狼人が現れて、フランシスに報告する。

 

「そうか。わかった」

 フランシスはそう言って、アマセイの治療に戻った。アマセイはかなり回復している。

 オレの出血魔法を利用して、そのまま治療魔法に書き換えたようだ。

 

 オレはフランシスを観察する。

 鎧は自前のようだし、騎士でもない狼人を連れてるのを見るに……私用か?

 なんでこんなところに?

 ある意味、一番怪しい。

 ――あ、客観的にはオレも怪しいが。


 治療が進み、アマセイも気力が戻ったのだろう。フランシスに縋り付き訴える。


「フ、フランシスさん。フミーは? フミーはいますか?」

「栗毛の小さい女の子か? いや、いないようだが」

 フランシスは孤児の集まる集団を見遣って、そうアマセイに告げた。


「おいおいおい。この段階で、1人足りないだと?」

 オレは呆れて夜空を仰いだ。

 もしかして子供の数を数え間違えたのか、このアマセイ?


『……なんでアタイを見るの?』

 ――いや、別に。

 たまたま頭上にオマエが浮いてただけ。


「いえ、孤児院にはいません。たぶん、フミーは……攫われました」

 なぜ、それを先に言わない!

 と、思ったが、それを先に言ってもどうにもならない。

 追う先も知らんし、目の前の火事と残された子が先決だ。ある意味正しい判断と言える。


「どういうことか、説明願えますか? アマセイさん」

 傷を癒しながらキザなフランシスは、アマセイの手を取って優しく訊ねる。


「寝静まった子供たちを見回っていたら、窓から侵入する姿があって……」

 息も絶え絶え答えるアマセイ。

 まとめてみると、火事の前……子供が寝た頃に侵入者があり、それに気が付いたアマセイが斬られた。

 そして寝ていたフミーを捕まえ、火を放って逃げたということらしい。


 スロウプが侵入者の特徴を尋ねるが、顔はマスクで見えず、背の低い男だったとしかわからないようだ。


 事情を聞いていた狼人たちが、腕を拱き唸った。


「火事で住居の物とか、個人の持ち物が燃えてなければ、女の子の追跡できるんスけどねぇ」

「俺たちの鼻なら、王都の外まででも追跡できますよ」

「せめてハンカチ1つでもあれば……」

 狼人たちがそんなことを呟く。


『……ザル様。さっきの人形?』

 ん?

 これがどうしたって?

 ディータがオレの肩を突いて言うので、カバンから人形を取り出してみた。

 途端、アマセイが飛びついてきた。


「こ、これはフミーの人形です!」

「ここに来る途中、上から落ちてきて拾ったんだが……攫われた子の物か?」

「はい! いつも持ってました!」

 アマセイの返答を聞いて、狼人たちが集まって来た。


「よし、それならいけるぞ!」

「これがあれば追えますよ!」

「フランシス様、俺たちに任せてください!」

 狼人の3人が、オレの持つ小さな人形に群がって匂いを嗅ぎ始める。

 なんかすごい光景だな。

 この光景はともかく、流石は古来種の作った追跡者チェイサーとオレは感心した。

 狼人は忠誠心が高いこともあり、古来種のお気に入りの獣人だった。護衛や狩りに、さらに失せ物探しなどで、つねに近くに置いていたと聞く。

 コイツらに任せておけば、フミーという孤児の追跡は心配ないだろう。

 やがて匂いを憶えた狼人たちが、器用に屋根の上に駆け上がってフミーの追跡を始めた。


「アマセイさん! ザルガラ君! あとは任せたまえ!」

 フランシスはそう言い残し、屋根の上を駆ける狼人たちを追って行く。

 アマセイの傷も回復したようだし、子供たちも目立った傷はない。

 街士たちの消火も上手くいっている。なかなか優秀なヤツラのようだ。

 仕事の無くなったタルピーも戻ってきてるし……うーん、もうここにオレがいても仕方ないな。

 

「さーて、オレは帰るかぁ」

 結局、アザナのゴーレム部品は逃してしまった。一個くらい拝借しておけばよかったな。

 まったく何しに来たんだろうな、オレ。

 ふう、眠ぃぜ。帰って寝よ。


「お待ちください!」

 あくびしながら帰ろうとするオレを、スロウプが呼び止めた。


「なんだ、感謝状はいらねーぞ」

「いえ、事情聴取したいのです。まあここに何故いたかは伺いませんが……。救助とはいえ、火事に関係したとなると、このまま帰っていただくというわけには参りませんので」

「う、そ? 別に犯人と疑われてるわけじゃないよね?」

「他の事件だったらともかく、火事となるとたとえ貴族様であろうと……しかも、誘拐まであったとなるとなおさら」

 スロウプはもうしわけありませんね、と斜めった敬礼をして言った。 


「……え? マジで?」

 明日、運動大会なんだけど、オレ……。



ザルガラが如何に魔法の天才であろうと、なんでも天才ではないという話でした。

得意なことは多いですが、専門家には敵わないということです。


時々でてくる街士は、ちょっとした治療や魔法による作業の補助、魔法の相談受付などなど、街に役立つことをする魔法使いです。

くいっぱぐれはないのですが、魔法使いとしては器用貧乏です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ