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【完結】悪役は二度目も悪名を轟かせろ!  作者: 大恵
第9章

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最初の犠牲者


「来たか、ジュン・ドーケイ代官さんよ」


 オレはマナーハウスの執務室で椅子に座り、偉そうにテーブルの上で手を組み顎を載せて、ジュン・ドーケイを出迎えた。

 オレの右には中央から派遣されている官吏が立ち、護衛としてイシャンも控えている。左にはイマリひょんとティエ、そしてアザナがいる。


 アザナは部外者なんだが……、まあしょうがない。役目がある。

 正面のテーブルの上でタルピーも踊っているが、賑やかしだ。


「え、ええっと、なにかありましたかしらぁ?」


 少しは状況を察しているのか、それとも本当にわからないのか。

 こういった表情や態度から相手の考えを見抜く才能は、残念ながらオレにはない。


「今日は急いで帰らないといけないんで、手短に済ませたいんだ」


 孤児院でのパーティの予定がある。間に合えばいいってものじゃない。少しでも早く帰って準備を手伝いたいな。


「なんのことかしらぁ」

「暴走ゴーレム、一体盗んだろ」


 とぼけるドーケイを睨み、さらりと言い切る。疑問形ではない。

 確定だから、盗んだだろ? などと尋ねてはいない。これはただの確認だ。

 まあ一体足りないおかげで、イアソンコピーの顕現は半端になり、弱体化していたのも事実だ。

 しかしそれは結果論である。


 さらに言えば、一体足りなくなったおかげで、ヨーヨーが巻き込まれたことになった。

 これも結果論だけどな。


「それはあのリマクーインって子じゃないのかしらぁ?」


 腕を組み合わせ頬杖し、目を逸らすドーケイ。とぼけている。まだ余裕があるな。


「ああ、暴走ゴーレムの合体暴走のあと、いなくなったアイツな。確かに怪しい」


 少しドーケイの言い分を取り入れてみる。すると、パッとドーケイの表情が明るくなった。

 共和国から逃げてきたというリマクーインだが、古来種ジョンソン&イアソンコピーが現れた騒動の時、どこかへと去って行ってしまった。

 見張らせていたイマリひょんが、報告に走ったためこれは仕方ない。

 あまりの不真面目さから間諜という感じはしない。が、アイツがここを選ばなかったのは確かだ。

 ちょっと残念である。


「そうでしょ? でも困ったわねぇ。アタシが助けた子がそんなことをしちゃあ、立つ瀬が」


「だが、オマエが犯人だ」


 リマクーインを雇った責任はあるようなことを言うドーケイ代官に対し、緩く軽く怠く指差し断言する。


「調べはついているし、隠し場所も発見してる。こっちには調査向きの上位種様がいてね」


「それは。私です」


 イマリひょんが、オレの前に出てアピールをする。邪魔だ。


「実働した使用人も確保。ゴーレムの隠し場所も確認済み。言い訳はまだ聞いていないのでどうぞ」

「ちょ、ちょっと待って、違うのよ」

「違くねぇよ」


 上位種の権威は偉大だ。イマリひょんに権力が皆無でも、古来種の権威は解放されていない人々には絶大だ。

 目見えて、ドーケイが動揺し始める。

 

「し、しかたなかったのよ」


 領主であるオレと、官吏と、上位種の無言の圧力に耐えられず、ドーケイが自白を始める。

 大男が泣き崩れ、めそめそと女っぽく泣き出す。


「ディータ殿下のお話を聞いて……ゴーレム体に入れると聞いたら……。アタシみたいのなら、あこがれるじゃないっ! だれでもそうよ!」


「オマエだけだよ」

 言い訳染みた自白に、オレは冷たく答えた。


「どういうことだい?」


 自白を聞いたイシャンが、護衛という立場を忘れ沈黙を破った。

 オレはだいたい察していた。

 ドーケイは女装して、男だか女だかわからない状態だった。

 ディータが高次元化して、ゴーレム体に宿れた聴いて、自分もそうなれるのではと考えたのだろう。

 つまり女性体のゴーレムに入れるのではないか?

 そういった発想が浮かんだに違いない。

 オレたちを出迎えたとき、ディータ姫がいらっしゃらなくて残念とか言ったとき、ちょっと引っかかるものがあった。


 下手に暴走ゴーレムが高次元化した存在を内包できると、ドワーフの調査から知ってしまい、いてもたってもいられなくなったのだろう。

 ちょっとでもゴーレムや高次元体に詳しければ、簡単ではないとわかるのだが、ドーケイくらいの魔法の知識では考えが至らなかったのだろう。


「なるほど、そういうことか。さすがザルガラくんだ」


 イシャンにそのことを説明したら、オレを褒めて笑って見せた。


「ん? そのさすがってやっぱり変態の心理がわかるオレがすごいって意味?」


「む? そのとおりだが? 変態探偵の異名は伊達ではないと」


「その異名だとオレが変態の探偵と思えるからやめてくんない?」


 ――なにか悪かったか?

 そんな顔見せるイシャン。本気で感心しているが、オレとしては不本意だ。


「まあまあ、いいじゃないですか」


 アザナが頼んでいた役目に乗り出す。 

 なだめ役は無責任な部外者に任せた。

 無責任さを問われる立場となるが、がんばれアザナ。

 ――だけど、間が悪いぞ!


「ちょっと待て。今の会話のタイミングだと、オレが変態の探偵ってことでも、まあいいじゃないですかってなる……」


「赦してあげましょうよ。古来種の残した言葉でも、こういう言葉があるじゃないですか」


「台本通り続けんのかよ! アドリブ弱ぇな!」

 

 段取りどおり、アザナが古来種の言葉を借り、赦すきっかけを用意してくれる。

 無責任なやつにまで責任を分散させるオレって悪いな――?。

 どうした?

 アザナが口を開けたまま、天井を見上げてフリーズしている。


「…………あのー、すみません、ちょっと思い出せなかったんで別の名言で『罪を憎んで人を憎まず』でいいですか?」


「大激怒すんぞ」


 いまごろ気が付いたが、アザナって本当は頭緩いんじゃないか?

 これにて一件落着しない流れ。


   *   *   *


「ほう、それほどの落ち度があったというのに代官を赦し、そして我々には許すように口添えしたのか?」


 王城の執務室で報告を聞いた中央官ルジャンドルは、老体を椅子へ深く預け安堵するように言った。


 報告をしたのは、実際に領地を訪れた下級官吏ではない。

 彼の報告書を取りまとめ、直接上司である高級官吏が報告に上がっている。


「王国は慢性的な人手不足。ドーケイのような人物でも、挽回の機会を与えて使う、か。彼としては領地の問題は気にしていないといいたいのだろうが……」

「よろしいのですか?」


 高級官吏の青年が、確認のため尋ねる。


「サード卿はすでに身内・・だからな」


 ザルガラは中央官ルジャンドルの心労を気にかけていたが、当の本人は今回の騒動を気にしている様子はなかった。

 ルジャンドルは問題のある領地を与えたことに責任など感じていない。


 むしろ最初から計画して、問題のあるサード領を与えたのだ。


 もっとも、その問題とはドーケイという少々変わり種代官と、褐炭鉱山という扱い難さである。暴走ゴーレムやドーケイの横領などは想定していなかった。


「よほど事件に巻き込まれやすいのか。……まあ、大きな話にならずよかった。これで彼が子供染みた正義感など出さずに、我々と歩調を合わせようとすることがわかった。良いことだ」


 ルジャンドルは古来種ジョンソン&イアソンが暴走ゴーレムに宿った話を、真に受けていない。これはザルガラが特に深く考えず顔に似合わず、正直にイアソンコピーと報告したからである。

 コピーならば古来種ではない、という考えが王国にはあった。これが共和国であれば、また反応も違ったであろうが、ルジャンドルは王国の慣習にどっぷりと浸かっている。


 ルジャンドルの満足気な声を聞き、高級官吏もそうですか、と引き下がった。


 ザルガラは勘違いしていた。

 つい先日まで、ルジャンドルが胃を痛めていたのは、彼が旧帝国以来、領地を持ち続ける諸侯の子であったからだ。

 臣下の子息といえど、王家も行政も気をつかう必要がある。 


 しかし、王家から領地を与えられた臣なれば、話は少し変わる。

 それも私兵を持てる諸侯と違い、王家と行政の認可のもと、与えるも取り上げるも簡単な、中央で完全に監視できる紐付きであるサード卿である。


 内部に問題があれば、お互い様ですから様子を伺い、表立って失敗を追及などしない。

 そういった風潮が王国内にはあった。


 気を使ったザルガラは、一種の正解を出してはいたが、ルジャンドル側の背景は大きく想定から外れていた。


 だがルジャンドルも、ザルガラの真意を見誤っていた。


「ふふふ。多少の清濁は飲み込むか。子供のころからこれでは、将来が怖いな」


 もちろんザルガラが、そういう方向の大器なわけがない。


   *   *   *


「これで返り咲きー!」


 5次元胞体の刻まれた目が、暗闇の中で輝く。

 場所はアポロニアギャスケット共和国の国境が近い、とある枯れた遺跡の中でリマクーインが鼻歌交じりに岩を除けていた。


「この胞体と古来種様が宿られた際に使用したプロトコルがあれば、わたしを追い出した……えっとステなんとかなんていう、ゴーレムの造詣が上手なだけのアイツと成り替わることができますねー」


 古来種降臨時に仮初の身体となるゴーレムを、リマクーインは開発できないでいた。

 そんな時、ブラエが見つけてきた人物が、リマクーイン以上の結果を出し続けていた。


 ブラエは競わせるつもりであったが、開発費を食うだけで結果のおぼつかないリマクーインを、だんだんと疎むようになってきた。

 もちろん、これらはリマクーインの主観でしかないのだが――。


「あとはここに埋めたわたしの最高傑作で、実証実験をして報告書をまとめれば、ブラエさまもきっとまたわたしを認めてくれますねー」


 鼻の上の汗をぬぐいながら、逃げる際に遺跡に埋めた自作のゴーレムを掘り起こす。

  

 サード領も悪い場所ではなかったが、予算も研究の自由度も、ブラエの元とはくらべものにならない。

 そして研究重視のリマクーインにとって、共和国が肌にあっていた。


「そろそろあるはずなんだけど…………あった!」


 岩に見えるよう偽装したゴーレムの腕が鈍く光る。

 リマクーインは早く最高傑作を改造し、さらなる高みに持ち上げるため、掘り起こそうとし――。


 突如、大岩を払い除けて伸びるゴーレムの手に、リマクーインの首が掴まれた!


「な……なんで動いて……」


「リ、りぃぃいいいまぁああああぅくーーーーいぃぃぃいいいぃぃぃいいいん!」


 ゴーレムから発せられた音声が轟き、リマクーイン以外に誰もいない枯れた遺跡を震わせる。

 腹の奥まで響き、心を震わせるその音声……いや、人間の叫びにリマクーインは笑った。


「この声……ああ、あんたね! あはっ! なーんだ! わたし成功してたんじゃない! やっぱりわたしは天才――」


 肉の内側で硬いモノが折れる音が響き、リマクーインの首がぐるりと廻ってから天井を仰いだ。

もしかしたら連載4年目にしてやっとR15タグ回収?


今回はなかなか書けず苦しみました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] リマクーインって死んだんですか? 古来種の精神が代入されてたはずだけどもう出番は無いのだろうか
[一言] アザナは奔放すぎるので、事前説明の通りに進めるのが難しいのでしょうか?
[一言] ドーケイは普通にどっかのスパイとか思ってたけど、そういえば出てくるキャラほとんど変態でしたね 少し考えれば分かることだったのに……! おお、R15タグ回収おめでとうございます ところでR1…
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