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【完結】悪役は二度目も悪名を轟かせろ!  作者: 大恵
第9章

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効果覿面、効果無敵


「古来種対策の魔法をいくつか用意してあったのに、ヨーヨーのせいで出番がなくなったなぁ~。あーあ」

「はぁ……。ボクも新魔法を実験してみたかったのに。がっかりですよ、ヨーファイネさん」

「ザルガラさま~、踊ってていい?」


 ヨーヨーが美女合体ゴーレムを乗っ取ったというなら、手加減が必要となる。

 残念だが、全力など論外だ。

 オレとアザナは残念だ、と胞体陣のいくつかを消して、いつくかを書き換える。

 ああ、タルピー。オマエは許可なく、いつも踊ってるだろ。今もずっと踊ってるし。


『お、お二人とも、古来種様を、射的の的か何かと思ってませんか? 【ともあれ、ザルガラ様とアザナくんは支配されるべきである】』


 ヨーヨーがドン引きしながら、不意に魔法を撃ってきた。


「なにさらっと、精神支配魔法を放ってきてるんだよっ!」


『やだ、この二人。古来種様の作った胞体陣と直結させた魔法を、羽虫を払うがの如くペチって……』


「ボクと先輩を狙ってる分、出力も精度も低いですよ、ヨーファイネさん」


 ヨーヨーから放たれた魔法は、古来種の仕掛けた遺伝する人類支配の魔法や、魔力プールを介さない即興性の強い物であった。

 イアソンコピーが放てば、もしくはヨーファイネが狙いを絞れば結果は違ったかもしれないが、とりあえず脅威ではない。

 通常の防御胞体陣で弾くことができた。


「ぐははー、なんぞ余興か?」

「コンテスト参加者の寸劇か!」

「今年の祭りは気合い入ってるなぁ」

「新領主の趣味か」


 オレたちと美女合体ゴーレムのじゃれ合い……いや戦いを、酒の入った街の者たちは余興と思ったらしい。

 警備が逃げるように促したが、ただの席移動と思い込み、酒やつまみを集めて観戦に入っている。

 これ、どこからどこまでも、オレの趣味じゃないぞ。


 そんな中、フモセがその手に小さなケースを持って、楽屋裏から駆けてやってきた。

 そして和やかな雰囲気に、驚いている様子だ。


「え? これ、どうしたんですか、アザナ様?」


 悪いな、もう半分解決した雰囲気で。


「フモセ! とりあえず魔具を!」


 アザナはまだ気を抜いていないのか、フモセに持ってこさせた魔具を寄越すようにと指示をした。


「は、はい! アザナ様! 新しい魔具ですよ!」

 

 ケースからメガネを取り出し――。

 

 え? メガネ? 

 え? 投げるの、フモセ?


 え? 跳んで顔面で直キャッチ装着するの、アザナ?


 メガネそのものが珍しいし、魔具となるとさらに珍しい。

 いったい、どんな魔具なのか?

 アザナの持っているもの、もしくは作ったものならば、相当な力を秘めた魔具だろう。

 ――なんか問題もあるかもしれないが。


「可愛さ100倍! だと思いませんか、先輩!」

 空中でメガネとドッキングするアザナに、一瞬、ドキッングしてしまう変貌ぶり。

 私服と相まって、未知のアザナがそこにいた。

 

「ああ、まあ……まあ、うん。まあまあだな」

 言葉を濁しているうちに、まあまあなまあまあ褒めてるようなまあまあという、なあなあな意見を絞り出す。


「はっきり言ってください!」

 ぷんすか、と言いながらアザナがメガネを強調して進撃してくる!

 オ、オレだけを殺す魔具かよ!


「と、とにかく可愛さが100倍とか魔具なんていらねぇんだよ」

 アザナの頭を掴み、柔らかい髪質に驚きながら進撃を止めてソッポを向かせる。


「なに言ってるんですか。ARメガネです」

「えーあーるメガネ?」


「裸の人物が、服を着ているようになる見える魔具です。これで裸の美女合体ゴーレムを見ても、服を着ているように見えるんです。もう不気味なアレをみなくてすみます」


「ああ、オマエは苦手だもんな、アレ」

 

 アザナは造詣が人間一歩手前の美女ゴーレムを、不気味だと言っていた。合体して妙な動きこそしてないが、それでも趣味の悪い芸術作品だ。


「……先輩は女の人の裸が見られて、嬉しいんですよね?」

 メガネの向こうで、アザナの眼がオレを侮蔑するような色を浮かべる……。


「はぁ? ……ハアァッ? 別にゴーレムの裸とか興味ねぇし! いつも姫様のとか見てるし! ……あ、痛っ!」

 アザナから衝撃を伴うローキックが飛んできた。普通なら足が吹っ飛ぶアレである。


 蹴りを最後に進撃をやめたアザナが、不機嫌そうにイシャンの方を向いた。

 

「ふんっ! これでイシャン先輩が、不意に視界内に入って来ても平気ですよ!」


「なんと! 今までにないくらい、こちらを見てくれているというのに、アザナくんの視界では私は服を着ているというのか! ああ、なんと恥ずかしいっ!」


 視線を受けて、恥ずかしいとか言いながら嬉しそうなイシャン。


「無駄ですよ! どんなポーズを取ろうと、今のイシャン先輩は鎧の騎士にしか見えません!」


 メガネシャキーンシャキーンとかいいながら、イシャンへ熱視線を向けるアザナ。 


「うわぁ、なんだこれ」


挿絵(By みてみん)


 アザナがイシャンを注視しているのは気に入らない。それはともかく、傍目には全裸の男に興味津々としか思えない光景だ。


『ザルガラ様。一旦、休憩いれます?』


「そういう気遣い、いらねぇから」


 騒動を横からかっさらったヨーヨーが放置されて、なんだか気をつかってきた。


『いえ、それがこちらも都合が……。古来種から術式いくつかパクったんですけど、ちょっと複雑なんで整理する時間ください』


「オマエが休憩したいんかよ」


 相手がコピー情報体であっても、古来種は古来種。その御業はヨーヨーにとって、荷が勝ち過ぎているようだ。

 

『あ……ヤバ』

 胞体をあれこれ弄っていたヨーヨーが、なにか怖いことをいう。

 なにを弄った?

 美女合体ゴーレムの巨体がよろめき、直後、纏う雰囲気が不穏になる。


『……やってくれたな、支配される側の分際で』

 声色が変わった。

 これは……イアソンコピーか?


「的が帰ってきましたね」

「おいおい、一応中にヨーヨーがいるんだから手加減しろよ」


 アザナが再び胞体に魔力を注ぎ込む。それがかなりの量だった。


 イアソンコピーが自分を取り戻した瞬間、オレたちに向けて敵意ある魔法を放ってきた。

 魔力弾とは違う、魔法の振動波だ。

 まるでこちらの胞体を解体するかのような衝撃波である。


 歪む胞体陣。

 魔力弾が相手を気絶させ、無力化させる魔法だが、この魔法は武装解除させる魔法だ。


 オレとアザナは歪む前に、衝撃を逃がすため胞体を4次元的に変形させてエネルギーを逃がす。

 だが、後ろにいたイシャンは、もろに衝撃波を受けて、防御胞体陣を破壊された。


「す、すまないな! ザルガラ君! アザナ君! 防御も丸裸にされたならば、古来種様につくほかない! 偉大な時代を再びみようではないか!」


 イシャンの眼の色が、文字通り赤く変わる。

 衝撃波を受け流した防御胞体陣の痕跡を見るに、支配と思想の流し込みの魔法が組み込まれていたようだ。頭の中へ直接、イアソンコピーの思想を叩きこまれたわけである。


「あのコピー! 全裸を味方につけやがった!」


「全裸を味方につけてなにをするつもりなんでしょうか?」


 オレとアザナの反応と、イシャンの裏切りを見て、観客たちがざわめく。


「全裸を味方に?」

「全裸が好きなのか、古来種様は?」

「そういえばあのゴーレムも全部全裸だし」

「やはり我々も、全裸で出迎えるべきなのだろうか?」

「古来種様の前では全裸で」

「全裸で歓迎!」


 観客たちが悪ノリしている。頼むから服を脱がなよぉ~。


「もう、それならそうといってくれればいいのにぃ」


 警備兵の再配置を終え、戻って来たドーケイ代官が、恥ずかしいけど仕方ないわねぇという態度で、肩から服を脱ごうとしている。


「つけてよかった、ARメガネ」


「おい、オマエの付き人にもかけてあげろよ」


 確かに先見の明というか、この場ではオレも欲しい魔具だ。

 どんなもんですか、ふんすっ、と胸を張るアザナだが、その後ろで真っ赤になって手の隙間から見ているフモセがいるぞ。そっちが最優先じゃないんですかねぇ?


『待て待て、お前ら待て、そうじゃないから! ええい、脱ぐな!』


「そうはいうがな、この状況つくったのはオマエだぞ」

「古来種ってみんな、こういうのが好きなんですねぇ……。やだなぁ」


 慌てて否定する古来種イアソンコピーだったが、フォローするつもりはない。

 アザナもオレの意図に乗り、メガネ越しに軽蔑する眼をイアソンコピーへと向ける。

 オマエの評価は変態に固定させてもらうぞ、イアソンコピー。


『ええい! もうよい! 才能ある肉体。それがこの中にある。とわかった今! 寄せ集めなければ。役に立たない。そんなゴーレムなどいらん!』

 服を脱いでいく男たちに囲まれ、イアソンコピーがついにしびれを切らした。

 でも支配魔法のせいで、そうなってるんだぞ。解除しろよ。


「先輩! このままじゃ、ヨーファイネさんが……」


「え? べっつにいいんじゃね?」


 顔を掻きながらヨーヨーを見捨てる。


「……まあ、そうかもしれませんが」


 消極的に見捨てるアザナ。

 

「そ、そういうわけには。あれでもカタラン伯のご息女ですし」


 指の隙間からいろいろ見ているフモセが、常識的な意見をしてくる。あれでもって言葉はあんまり常識的ではないが、ヨーヨーが非常識だから仕方ない。


「いいんじゃね? ヨーヨーもこれでハレて、古来種の支配から解放される」


 古来種に乗っ取られた者を、無理矢理解放すると、以降は古来種支配の影響が弱くなる。アリアンマリがそうであったように、だ。

 アリアンマリはアザナ側の人間だし、オレ側の人材も欲しいところだ。


 ティエがこういう時、支配の影響を受けて役に立たないしな。…………あんまりヨーヨーは欲しくないが、しかたない。


『この娘の身体! 貰ったぞっ!』


 組み合わさった美女ゴーレムたちが解きほぐされ、中から見慣れたヨーヨーが這い出してきた。

 

『って、なんでコイツも。脱いでおる!』


 出てきたヨーヨー=イアソンコピーは、光り輝いてこそいるが全裸だった。

 脱いだことで、魔力が上がったからこそ、一時的にゴーレム操縦を奪えたのだ。内部で起こっていたことを理解せず、ヨーヨーの身体をうばったのか、コイツは。


「とりあえず【極彩色の織姫】」

 とりあえずヨーヨーに服を着せる。


「そんな、とりあえずビールみたいな」


「みんな、とりあえず全裸すぎんだよ」

 軽い気持ちで服を脱ぎ過ぎだ、まったくこの国の奴ら。


『効かんっ!』

 せっかく、服を着せようと思ったのに、ヨーヨー=イアソンコピーは魔法を弾いた。

 つまりまだ全裸だ。

 その光景を見て、アザナが訝しがる。


「ええ……せっかく服を着れるのに。もしかしてこの古来種……」

「ああ、イアソンコピーも実は裸族か」

 

「やはり古来種様はわかっておられる!」

 イシャンも絶賛全裸のイアソンコピーは困惑した。


『そ、そうではない! 魔法に。何かを仕込んで。いただろう! だから拒絶したのだ!』


「いや、別に」

 弁明するがオレはとぼけた。

 実際は、魔法が防御陣を抜けやすくするため、裏口のような仕掛けをしていたが、知らない振りをした。


 観客たちも、やはりそうかと納得していた。


『ええい! 煩わしい! 【貴様に覿面、我は無敵】』

 ヨーヨー=イアソンコピーを中心にし、巨大な胞体陣が広がっていく。濃厚な魔力に満たされたその120胞体は、精密な魔法陣がびっしりを刻まれている。

 一目見て、強力な魔法とわかる。誰でもわかる。


 世界の色が裏返った。

 次の瞬間、オレとアザナは何もない世界に浮いていた。

 ティエとフモセがいない。いや、観客たちも警備もドーケイもいない。


『ここは我らの支配。それから抜け出したものを。懲らしめる空間だ』


「ここは?」

 アザナであっても、一瞬どこであるかわからない。

 オレも自分の立ち位置を見失った。見失った瞬間、場所が変わったように感じたくらいだ。


「たぶん、限定的だが4次元空間だな。【ゲート】を潜った時の感覚が続いている」

 右手の『懐かしい』感覚が戻っている。

 つまりここは高次元空間ということか。


「余裕はここまでらしいぞ、アザナ」

 右手が開いたり閉じたりして見せると、アザナも察したのか顔を引き締める。

 こくりと肯くその反応は、何か勘違いしているような様子もない。


「アイツにとって都合のいい世界。地の利を得るため、力技で引き込むだけでも強敵だ」


誰もいらないぼかし無しは、Twitterの方で

https://twitter.com/taikeisys


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― 新着の感想 ―
[一言] 自分に都合の良い世界を作る、強力なんですが勝ってるところを見た覚えがないんですよねw さらに、相手がザルガラとアザナですから。 どんな面白酷い目に合うか、楽しみですw
[一言] 才能ある肉体、才能…… ああ変態の才能か。変態は強いもんな それよりアザナの服に付いてるのってレゴブロック…?
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