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七話「裏ボス」

裏ボスを求めて三千里。

そんな言葉が四人の脳裏に虚しくよぎる。

当初、簡単だと思われていた裏ボスへの道のり。


裏ボスを見つけるという事は裏ルートを制覇することと同義であり、四人は今まさにそれを求めてわざわざ鬱蒼とした道を選んで歩いているというのに、先程から一向に現れない終点地。


進むルートの途中でちょくちょく四人が楽しく戦えるような強さの敵が出てくればここまでうんざりとした空気が流れることもなかっただろう。

残念な事に彼らが探索するルートは何故か、四人からすると通り過ぎざまに倒せるようなレベルの雑魚しか現れないという現状。


アルクは一度ループの回廊に当たったと気づいた瞬間半分キレながら力づくでループを木っ端微塵にした。

他の面々はその崩壊シーンに心なしか満足そうだった。


ルークは顔に出さないまでも苛々は募っていたようで、現れたゴブリン一帯をチャクラムをブン投げて瞬殺していた。

他の面々はその戦いとも呼べない殺戮シーンに心がすっきりとした。


ミロはだるいだるいと呟くライズにあたりつつ、何時より数倍迫力の増した凄みのある笑みを浮かべながら罠をわざわざ発動させては壊す事を繰り返していた。

他の面々はわざわざ発動されることで襲い来る事故をわざと破壊して進んだ。


ライズはだるいだるいと呟いてはミロにあたられながらも現れる敵をわざわざゆっくり嬲り殺してはストレスを発散していた。

他の面々は相手が魔物でなければ拷問と呼んでもおかしくない状態に仕方のない奴だとただ呆れていた。


勿論止める者など何処にもいない。

基本ストッパー役であるアルクは既に進んで破壊活動をし、サクに至ってはここにはいない。

迷宮特有の破壊修復という機能も追いつかない始末である。

彼らの歩いた後に残るは更地のみ。


そんな無双状態でフィーバーする彼らの視線の先に突如現れた重厚な両開きの扉。

影も形もなかった場所から現れたそれに軽く驚いたような雰囲気が流れるが、数秒後には安堵と疲労の混じったため息が彼らの口から漏らされた。


「あ゛ー…あれだろ、ゴール」


「いきなり出てくるとか何なんだよウッゼ」


「やっっっとゴールかいな…」


「…早く、帰りたい…」


彼らの中に馬鹿正直に扉を開くという思考を持つものなどいない。

結果、アルクとライズの手によって真っ二つにされた扉の向こうには彼らが探し続けていたモノが部屋の中心に陣取っていた。

強大な気配を惜しげもなく放つグリフォン。

その背後には、恐らく入口へと転送されるのであろう魔法陣が薄ぼんやりと青白く光っている。

普通ならば滅多にお目にかかることのない生き物に全員の目が静かに闘志を宿らせる。


「うし、早い者勝ちな」


「ちょっ、抜け駆け禁止やろ!!待てコラ!」


「いやいやー、ここは俺に任せてアンタらは見てなって」


「俺が、やる…」


かなりの強者の部類に入るAランクパーティが幾つも手を組み、少なくない怪我人を出しながらもやっとのことで倒せるというグリフォンを前にするにしては余りにも緊張感のない会話。

それでも虎視眈々と油断なくグルフォンを窺い、全員が自然と別々の方向から部屋を静かに回り込む。

と、そこまではパーティらしく協力しているように見えたが。


低く警戒するように呻るグリフォンに、各々好き勝手に飛びかかり始めた辺り、彼らの自由奔放さがどれ程のものなのか窺える。

しかしここで互いに衝突したり、邪魔になるような戦い方をしていないのは全員我が強いもののそれが上手く噛み合っているという何よりの証拠なのだろう。


「グリフォンに乗ってみたい」


「ん、分かる…」


「止めろ」


「止めぇ」




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