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決心


「ディーブ殿下? こんなところで何をしているのです」

 一人、庭で月を見上げていたディーブはトーマンの声にバツが悪そうに振り向いた。

「今日はすばらしい夜になっていると思いましたが?」

「ああ・・・まあ・・・」

 ディーブは取り繕うように肩にかけていた上着に腕を通した。

「気に入りませんでしたか?」

「いや・・・」

 ディーブは苦笑した。

「反対だ」

「ではまたどうして? 愛した娘を抱くことができないなどというほど純情ではありますまい?」

「ハハハ! 本当にお前は直球でものを言う」

 ディーブは困り果てて歩き出した。

「今からでも遅くはありませんぞ、証拠を残さねば」

「また過激なことを」

「飛んでいきますぞ」

 ディーブは足を止めてトーマンを見返した。

「今を逃せばきっと後悔する時が来ます」

「・・・そうかもしれない」

「ならどうして? あの娘はきっかけさえあれば手の中から飛んで行ってしまいます。それだけの意志とガッツがあるのですから」

「なんだ、お前もそう思うか」

 ディーブは嬉しそうに笑った。

「彼女のように魅力的な女性は初めてだ・・・」

「悠長な! 私は殿下のためを思って…」

「お前も惚れたのか? 珍しいじゃないか、こんなことをけしかけてくるなんて」

「・・・そうですね、私ならこんなところにはいないでしょう」

 二人は顔を見合わせ笑いあった。

「…トーマン、私は見てみたい」

 ディーブは大木にもたれ、遠くを見つめた。

「彼女の勇気を」

「・・・」

「彼女はチュチタ国で生きてきたとは思えないほどひたむきに、純粋に、まっすぐに未来を夢見ている。・・・力になりたいんだ」

「国から出すつもりですか?」

「もちろん」

 トーマンは呆れたように笑った。

「どうやって? 女を国から出すことは重罪です。・・・まさか入国管理事務所を爆発させるとか?」

 ディーブも破顔した。

「トーマン、なせそんな過激なことばかり想像するんだ」

「想像力は人間力です」

「座右の銘だな。・・・まあ、私にいい考えがあるんだ。遠くから見ていてくれ」

「遠くからですか」

 残念そうなトーマンの表情が、再びディーブの笑いを誘った。

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