表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/23

第20話

木下藤吉郎秀吉が高幡城へやって来ると、近藤、土方、沖田をはじめ、門人や家臣たちは温かく迎えた。


「今日より木下藤吉郎秀吉殿には、城の内政を任せる」


近藤が正式に告げると、藤吉郎は深く頭を下げた。


「若輩者ではございますが、命を懸けてお仕えいたします」


歓迎の宴もそこそこに、藤吉郎は翌朝から城内を歩き回った。


蔵の中。石田散薬の作業場。城下町。田畑。市場。


一日中歩き回り、農民や商人、職人たちの話に耳を傾ける。


三日後、藤吉郎は近藤・土方・沖田を前に一枚の書付を差し出した。


「問題点が見えてまいりました」


土方が書付を見る。


「もう分かったのか」


藤吉郎は笑った。


「ええ、ここには、人も物も揃っておりますが、少々勿体ない」


近藤が尋ねる。


「勿体ないとは⋯どういうことだ」


藤吉郎は指を折りながら説明する。


「まず、石田散薬。作る者と売る者が別々に動いているため、無駄が多すぎます」


「まずは販売を専門にする者を決め、各地の商人との取引もまとめるべきです」


沖田は感心した。


「確かに、今までは私や土方さんが空いた時間に売っていましたね」


「次に市場です。毎日開く必要はありません」


「決まった日に大市を開けば、人も商人も集まり、さらに賑わいます」


近藤が腕を組む。


「なるほど」


藤吉郎はさらに続ける。


「そして農閑期。石田散薬の製造を本格的な副業にしましょう」


「男衆は薬草を刻み、粉にする。女衆は袋詰め。子どもたちは紙を折る手伝い。仕事を分ければ、もっと多く作れます」


土方は思わず笑った。


「やっぱり連れてきて正解だったな」


藤吉郎は照れくさそうに笑う。


「まだあります。商人は信用が命です。代金は必ず約束どおり払い、偽物を売る者は二度と商売できないようにする」


「そうすれば自然と『高幡城の商品なら安心』という評判になります。」


近藤は大きく頷いた。


「よし。その案、すべて採用する」


こうして藤吉郎の改革が始まった。


石田散薬は製造工程が整理され、生産量はこれまでの倍近くまで増えた。


販売は行商人ごとに担当区域を決めたことで効率が上がり、武蔵だけでなく相模や甲斐へも販路が広がっていく。


城下では定期市が開かれるようになり、商人が集まり始めた。


農民たちも副業による収入を得られるようになり、領内は活気に満ちていく。


その様子を見た沖田は思わず苦笑した。


「私たち三人で何日も悩んでいたことを、藤吉郎さんは数日で片付けてしまいましたね」


土方も笑う。


「あいつは剣はからっきしだが、金と人を動かすことに関しては天才だ」


近藤は満足そうに頷いた。


「適材適所とは、このことだな」


藤吉郎は頭をかきながら笑う。


「私は戦では役に立ちません。ですが、この国を豊かにすることなら、誰にも負けるつもりはありません」


その言葉どおり、高幡城の内政は飛躍的な発展を遂げていく。


後に人々は語る。


「高幡城が一国として大きく飛躍したのは、木下藤吉郎秀吉が奉行となってからだった」と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ