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3撃目 「ベルシュタイナ愛」 


「はあ〜あ。格ゲーキャラも辛いのですわね……」


 ベッドの上に飛び込む。質素な布製は肌に傷だが、背に腹は変えられなかった。


 私は生身の人間だった。

 ゲームの外の世界では、普通にお嬢様として暮らし、普通に女学園に通い、普通に稽古をし、普通に勉学に励み、普通に生きてきた。

 ただ、この格闘ゲーム『ベルシュタイナ』をこよなく愛していた、普通のお嬢様だった。

 好きすぎるあまり、ファンアートを「Twitter」やら「pixiv」にあげていたほどだ。しかし悲しいことに、このゲームは超がつくほどのマイナーで、発売から1年でアップデートが終了した。サービスも終わり、オンライン対戦も不可能。

 それでも、私の『ベル愛』は止まらなかった。血眼になって『ベルシュタイナ』を探した。ネット上の二次創作、オンリーイベント、公式設定の深読み、歴史漁り、エトセトラ……。

 結局、私以外の『ベル愛』人間は見つからなかった。悲しいことである。


「こーんな素晴らしいゲーム、人類有史にありませんのに……」


 だから、こうしてゲームの中に入れたことは、少なくとも、喜ばしいことだった。

人は誰しも推しと一体化を望む生き物である。

 しかし、それは妄想であり。

 現実は厳しい。

 殴られれば痛いし、殴れば良心が痛むし、負けると悔しい。このベッドも、ゲーム内でキャラクターとして勝利した分の報酬として得られる物品。C P Uのランダム設定は「最近活躍していないキャラに日の目を」との黒い噂もあるほどだ。

 私はどうやら新キャラとしてゲームに認識されているらしく、始まった当初は寝床にも困っていた。路上で寝ているとモブキャラに蹴飛ばされた。食事は残飯を漁った。ゲームなのに食べ物は腐る、謎のクソシステムだった。

 しかし、少しずつ闘い出して、なけなしの金でようやく屋根のある部屋を手に入れた。先ほどのショックは初期の私を色々とサポートしてくれた優しい人だった。人は見かけによらないのである。


「ゲームの裏側も、楽じゃあありませんこと」


 いろいろと疑問は残るものの——私がこの世界になぜ来たのかも含め——少しずつ、生活が軌道に乗りつつある。これを喜べばいいのか、悲しめばいいのか、今の私にはわからなかった。

 とりあえず、寝ることにした。

『ベルシュタイナ』ではなぜか『体調』という、不思議なクソシステムがある。マルチ剤を買えば下降は抑えられるが、少々値が張る。薬に頼る前に、健康は自分で正せ——そういうことだろう。


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