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碧史美咲 最終話

 碧史美咲


 私は部屋に篭っていた。

 学校は仮病で休んだ。

 今日のニュースも見たことある内容だった。

「やっぱりだ」

 テレビを見るたびに未来の記憶の信憑性が増す。


 この未来は本物?

 歴史は変えられる?変えられない?

 どうしたらいい?



 真っ先に思い浮かんだのは幼馴染彼氏の排除、絶縁。

 記憶の中の悪き出来事はほぼ幼馴染が元凶だ。

 それと病気。性病は未来を変えれば避けられる。白血病は?

 性病がなければ白血病は治るんだろうか?これは調べてもケースバイケースとしか書いてない。どの記事も相談は医療機関へなんて言葉で断言を避けてるし。そもそも白血病の原因が特定できない。やはり私は死ぬんだろうか。残りあと10年。

 たった10年なら勉強を頑張る必要なんてあるんだろうか。

 大学も行きたくなくなった。


 そして一番大切なこと。

 翔に会いたい。


 もう一度会いたい。今度は絶対に想いを伝えて全力で彼を愛する。誰にも渡さない。私の命が尽きるまで愛しきる。

 会いたい。

 会いたい。

 会いたい。







 そのためにはあの地獄をもう一度やらなければいけないのだろうか。翔との出会いはあの日、あの場所で、あの立場で、あの状態で会わなければ。なにひとつ条件が変わってはいけない気がする。私が順風に生きてる会社員だったら翔は私と分かり合えないだろう。お互い傷だらけの世捨て人だったから寄り添えたのだ。

 でも、そこまでの数年間を繰り返せる気がしない。

 あの幼馴染の顔すら見たくないというのに、同棲なんてもっとありえない。

 そして私は翔の過去の住所も連絡先も知らない。記憶の鞄を目一杯逆さに振って情報を探るも翔の現在には辿り着けなかった。



 考えても考えても答えは出なかった。

 そして仮病は3日で親に強制終了させられた。

 久しぶりの学校は気が乗らない、活力が湧かない。それでも幼馴染と会わないようにコースと時間を選ぶ。いっそ学校行かずに海でも見に行けば良かっただろうか。


 3年の部活の先輩が玄関で私の背中をぽんと叩き挨拶。

 2度も店に私を買いに来た人だ・・・

 触るんじゃねーよ!


 教室に入ればもう2人、未来の私の常連客がご歓談中。

 顔を見てると反吐が出る!


 未来を知っていると以前とはクラスの皆の印象が違う。進学の合否も行き先も知っている。その先の出来事も。

 上級生女子の「ヤリマン」で有名な子とすれ違う。スレている風にしているがその程度なら可愛いものよ。

 未来なんて知らない方がいい。その方が素直に笑えて夢に頑張れる。やっぱり学校に来なきゃ良かった。


 放課後、バスステーションまでの道。

 いかにもナンパ師って男が高級車に身体を預けて立っていた。ホストっぽい身なり。この通りはこういうのがよく出る。先生からは相手しないように注意もされている。それでも中には彼女待ちのケースもある。

 誰かの彼氏?それともナンパ?

 通る女子を吟味する男。


 そして目が合った。

 


「翔!」


 思わず叫んだ。

 間違いない、髪も服のセンスも違うし、若くて綺麗すぎるけど翔だ!


「美咲!」


 私を呼んだ!

 私を知っている!

 私の翔だ!

 周りの目も気にせず私は走って走って翔の胸に飛び込んだ!右手が翔の大きな背中に回る前に車の屋根にごんってあたったが構わない。前より身長差が凄い!この無駄にイケメン!そして若い!死ぬ時の私と同じくらいの年齢?絶対に離さない!

 周りの目も気にせず翔は私の唇を求めてきた。上等よ!迎え撃ってやるわ!キスしながら涙が出た。翔も泣いていた。

 私を探してくれてありがとう。来てくれてありがとう。もう諦めかけてた。こんな私を選んでくれてありがとう。愛してる!


 そしてゆっくり唇を離し、

「無精髭生やさないの?」

「残念。まだ綺麗にしておきたい」

「生やして!」

「そのうちな。美咲かわいいよ」

「このロリコン!」


 そして二人で笑い合った。

 元気出た!


「チーズケーキ買いに行こう」

「たまには奢ってね!」

「乗ってくれ!」


 チーズケーキ。それは私の終焉の旅の最後の晩餐になるはずだったもの。二人だけの記憶。

 私は正妻面で助手席に乗り込んだ。

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