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碧史美咲

 碧史美咲


 碧史美咲は深夜の2時に目が覚めた。

 うなされて飛び起きたと言ってもいい。今物凄い悪夢を見た。夢の中で絶望と悲しみと懺悔の気持ちに苛まれ、僅かな温もりを待ちながら死んだ。多分死んだのだ。

 やけにリアルな夢だ。しかも長い。眠りについた数時間前の感覚がやけに遠い。混乱した。そして頭の中の消える気配のない夢の情報を必死に整理しながら朝を迎えた。

 それが彼女の妄想なのかなんなのか分からないままリビングで朝のニュース番組を見る。全国ニュース、地方ニュース、天気予報と番組は進行し、バラエティになった途端、碧史美咲は言葉を失った。速報で有名女優が昨夜、自家用車で交通事故を起こしたと流れる。現在は病院に搬送され治療中だと。

「飲酒運転で死んだんだよね・・」

 彼女はぼそりと言った。

 その言葉に妹が、

「へー」

 とだけ答えた。

 女優の死亡が5分後に画面上側の文字情報として流れ、その少し後にキャスターが速報を読み上げた。

 そして彼女は体調が悪いと言って部屋に閉じこもった。



「予知夢・・」

 それが彼女が辿り着いた答えだった。

 未来を知っている。

 だが彼女は暗かった。

 宝くじの当選番号を覚えているわけでもなく、株の銘柄なんてわからない。世間のニュースは覚えているが何月何日だったかなんて覚えていないし、年だって曖昧だ。

 紙に印刷された情報があるわけじゃない。記憶だけだ。

 役に立つ情報もあるがもうどうでもよかった。

 だが自身に起きる事は鮮明に記憶している。

 二十代の後半で自分は死ぬのだ。

 大学入学あたりから彼女の人生は狂う。

 付き合ってた幼馴染(太田)の大学メンバーにコンパに呼ばれ参加。あろうことか複数から昏睡レイプ。(幼馴染は別の部屋で酔ってダウンしていたと言っていた)

 その後何度か体目当てで脅される。数回は怖くて従ったが、意を決して警察の力を借りて逃げる。しかし、情報は漏れていて自身の大学に居づらくなり、中退、就職。

 仕事場と幼馴染のアパートが近かったので転がり込み同棲開始。しかし、おかしなことに幼馴染は彼女をを抱かなかった。この時、彼女はあの夜のことを知られていると確信。幼馴染は入籍するまでは・・と言っていたが、その言葉も違って聞こえた。

 そして幼馴染も大学中退。幼馴染は一旦自宅に戻り、就職。

 アパートを碧史美咲名義に直し、ひとり住み続ける。

 そこでまた幼馴染が戻ってきた。居候だ。

 ここで突き放せば良かったのだが、「幼馴染」という馴れ合いが働いて黙認する。就職頑張ると言うので許したのもある。確かに就職したが長続きせず転職を繰り返す。1年間のうち無職期間の方が圧倒的に長い。そして完全に無職となる。

 碧史美咲は高卒だが優秀で職場で評判が良い。しかし大黒柱になるほどの給料は望めない。生活は切り詰めなければならない。そこで上司に相談し、職場ではNGの長時間残業を申し出る。それは却下されたが、副業を黙認された。会社としては副業禁止だが「見なかったことにしてやる。確定申告はうまくやれ」ということになった。これで体力的には辛いが金銭的には楽になった。体力的に辛いといっても、幼馴染との夜のセックスは全くないのでそこで睡眠を削られる事がないのが幸いだった。そもそもセックスに嫌悪感すらあった彼女には今の身体を求めて来ない幼馴染は彼氏として最適だったのかもしれない。

 しかし彼女はまたも不幸に見舞われる。

 昏睡レイプビデオが職場に出回ったのだ。出どころは多分あの日の誰か。同県内に居たからどこかで見られて特定されたのだろう。それから職場では針の筵状態。しかも、アパートには無職のヒモがいると言われている。これも悪評に拍車をかけた。会社に行きたくない。だが給料がなければやっていけない。どうせ住所や職場を移してもまた不幸は追ってくるかもしれない。実家には言えない。暫くは我慢して通勤していたが、揶揄われたり知り合いにセックスを要求されたりすることが増えて・・・・退社した。

 碧史美咲はここで一か八か他県に引っ越し、やり直そうと思い立つ。しかし彼女のヒモが彼女に内緒で借金をしていた事が発覚。一日中アパートに居るのだ。彼女のいくつかのパスワードは既にバレていた。古いスマホとかブラウザからとったのかもしれない。買い物や送金は全て彼女のアカウントから行われていた。そう、彼女の借金である。

 この苦しい時になんてことをしてくれたんだと幼馴染を泣きながら叩き出した。そして部屋に残された幼馴染用のPCには彼女のの盗撮画像。顔どころか見せてはいけない所も写っている。いつの間に。薬でも盛られたのか記憶が全くない。それを幼馴染は彼の根暗なコミュニティに垂れ流し。そして彼は金も貰わず「いいね」だけ貰って殿様気分になっていた。ひょっとしたらレイプ動画を職場に流したのはコイツなんじゃ?それは確認しようがなかった。

 泣きに泣いた。怒りは涙と共に枯れ果て、彼女は折れた。


 引っ越し費用もない。増えに増えた月々の支払いはやってくる。更には借金。実家には帰りたくない。

 無気力のまま彼女は夜の世界に足を踏み入れ、更に深い沼に落ちるのも時間は掛からなかった。AV会社に所属して、出演していたのはこの頃である。


 そして、地元で『川島しおり』と現在の碧史美咲の情報が拡散された。『碧史美咲』が学生時代から美人で有名だったから情報の伝搬は早かった。

 彼女は直感的に拡散主はあいつだ・・・・と思ったし、同級生の情報でもそれの可能性がいちばん高かった。

 本当に辛かった。もともと性に保守的だった彼女には向いてない仕事。しかも、地元バレしていて高校の上級生や旧友まで店に身体を買いに来たのは最低だった。知り合いというのが最悪だし、質問攻めや説教がうざい。

 借金は返せる額を稼いだが、ストーカーが後を絶たずセキュリティの高い部屋に引っ越したらまた金が消えた。それでも今の収入ならと割り切った。


 そんな頃、碧史美咲はひとりの男を拾った。その男は佐々木(しょう)という。

 彼女はペットが欲しかったのかもしれない。実際は家政夫だが。もう、男と暮らしてるなんて噂ぐらいは気にしない。それより番犬代わりにもなる。生活サイクルも彼女に合わせてくれて、美咲の代わりに家事をこなし、美咲の帰宅には優しい言葉を必ずかけてくれる。佐々木は前科者で就職先がない10歳年上の男。背は高く顔の素材はいい。実際昔はモテて交際関係が凄いことになっていたらしい。事件については男女間トラブルで修羅場と修羅場が連鎖して事件にまで発展したとかなり端折った説明をされた。今は無精髭で伸びた髪を後ろで縛るだけのおっさん。でもその姿もなんとなく絵になる。これはモテた筈だと直感した。佐々木と体の関係にはならなかった。お互いに求めてないし断ってもいない。ただ現状に満足しただけだ。彼女にとって初めて性欲が湧いたがそれは飲み込むことにした。時が来れば・・・と思うことにした。

 佐々木のことも幼馴染に地元で拡散されたが、もう動じなかった。


 彼女にとって平和な期間だった。


 しかし、それも終わりを告げる。

 性病と白血病の同時発覚。

 それは彼女の失業と人生の終了の宣告だった。







集団レイプの主犯は陰キャ幼馴染です。

ここで色々あったのですが、書くと説明多過ぎになるのでやめました。

そして、レイプ前半内容を碧史美咲は詳しくは知りません。意識が戻り始めた頃幼馴染は速攻で隠れました。

全ては彼女への劣等感が炸裂しての行動です。

高スペックな彼女を卑しめたいが故の行動。低スペ陰キャからの謎の復讐(?)行動。しかも自身の下半身を人に見せたくないが為に、参加男性のなかで唯一童貞のまま終わるというバカっぷり。

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