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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第四章 一時の再会
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どうして苦悶の表情なの?

ここから、新しい章です。

 これまでのあらすじ。

 色々あって、ラメゼリア王国は救われた。多分。

 いや、セミナスさんから説明は受けたけど、本人たちから聞いてないし。

 ちょっと実感が……。

 まぁ、それはこれから、という事で一つ。


 重要なのは、俺が武技を使えるようになった事と……攻撃系じゃないけど……まぁ、今更攻撃系を覚えてもね。

 活かしきれないだろうし。


 それと、親友たちの中で、詩夕と常水の二人と感動の再会を果たした事である。

 いやぁ……実に感動の再会だった。

 うんうん。


「なんか何度も頷いているけど、感動の再会を果たしたとか考えていそうだね」

「間違いない。自分の中で美談にする事によって、勘違いしていた恥ずかしい記憶を消し去ろうとしていると思われる」


 あまりの感動に、俺も涙が溢れて……。

 そう、涙なしには語れない……。

 でも、いつまでも泣いてばかりはいられない。


「目元を拭っているから、きっとそうだね」

「そろそろ心の整理がつく頃だ。一呼吸入れて、心を立て直そうとするとみた」


 しっかりしないと。

 まずは、一呼吸して、心を落ち着けないから――。


⦅マスターの行動がしっかりと完璧に読まれていますね⦆


 わかっているよ!

 だって、親友だもの!

 ううう……と泣きそうになりつつも、俺は目の前に居る詩夕と常水に言う。


「とりあえず、その髪と目の色の変化に対して、笑ってもいい?」


 OKだった。


     ◇


 とりあえず、感動の再会にはならなかったけど、こうして再会出来た事は素直に嬉しい。

 セミナスさんも、事前に言ってくれれば、もう少し違った感動の再会になっていたのに。


⦅申し訳ございません。事前に教えますと、下手に凝ったマスターの演出が空振りを起こしていましたので、教えない方が良いと判断しました⦆


 セーフ!

 ……いや、結果はどっちにしてもアウト?

 そうじゃないな。

 教えて貰った方が、よりダメージが大きかったという事なんだろう。


 さすがセミナスさん。

 ありがとうございます。


 それにしても、まさかここで詩夕と常水に再会するとは思わなかった。


⦅そうですね。必要であったために、という部分はありますが⦆


 ……ん? それはどういう事?


⦅それはまたの機会に。今は再会をお喜び下さい⦆


 そうします。

 という訳で、丁度エイトが詩夕と常水用の飲み物を持って戻って来たので、そのまま交えて互いにこれまでの事を語り合う。

 まずは俺から。


 ………………これこれこういう事で。

 ………………こうなっていった訳に。


「えっと……言葉が通じなかったとか、神様解放とか、攻撃力皆無とか、色々と聞きたい事はあるけど……セミナスさん、という自意識を有している、未来すら読む複合スキルを持っていて」

「そちらの少女が、明道を主人としたメイドで、対大魔王軍用に造られた人工生命体ホムンクルス、と」


 確認するように言う詩夕と常水。


「うん、そう。それがどうし、何その表情?」


 なんと言えば良いのか……そう。なんか面倒な事になったな、みたいな苦悶の表情である。

 そんなに寄せていると、眉間のしわが残っちゃうよ?


「……どうしよう、これ? どうしたら良い? 複合スキルの方がチートとか、もうどうでも良いよね。明道の状況をなんて説明したら良いの?」

「こうして先に再会しただけでも恨み言を言われそうな上、更に爆弾を用意しておくとは……明道は末恐ろしいな。俺たちを殺すつもりなのかもしれない」

「やっぱりそれだけの事だよね?」


 ……どうしたんだろうか?

 俺の話を聞いてから、何やら深刻な表情を浮かべた二人が、俺抜きでこそこそと相談を始めたんだけど?


 あれ? 俺、シカトされている?

 存在は認識されているよね?

 俺はここに居るよ?


⦅そうではありません。マスターに関する事ですが、今、マスターが不用意に触れて良い事でもなく……⦆


 ……俺に関する事なのに、俺が触れちゃいけないとは、如何に?

 どんななぞなぞなの、それ?


⦅ですが、下手をしますと、とめるために身を犠牲にし、負傷する可能性は存在しています⦆


 考えていた以上の危険な可能性!

 それなら、俺にも出来る事があるかもしれないし、やっぱり話を聞いて協力しないと!


⦅ですので、マスターが今触れて良い事ではなく⦆


 そうだった。

 でも、それなら俺はどうすれば……。


⦅別の話題にする事を推奨します⦆


 ………………。


⦅………………⦆


 ほんとに?


⦅Yes!⦆


 ……まぁ、セミナスさんがそう言うなら。

 なんで英語回答だったの?


 という訳で、二人にそっちの話が聞きたいと促す。


「……そうだね。今直ぐ答えが出る訳じゃないから、あとで樹さんも交えて考えよう」

「そうだな。こういう時こそ、大人の、先生としての出番だ。きっと道を示してくれるはずだ」


 なんか達観しているように見えるけど……大丈夫かな?

 というか、先生って何?


 詩夕と常水のこれまでの話を聞いてわかった。

 どうやら、この世界に来ているのは親友たちだけじゃなく、担任の……担任の………………。


「あっ、これは多分、名前を憶えてないね」

土門つちかどいつき先生だ。一緒に来ているから、きちんと覚えておいた方が良いぞ。俺たちは、樹さんと呼んでいる」

「うん。わかった」


 忘れないようにしよう。

 俺も「樹さん」って呼んだ方が良いのかな?

 会った時に確認しよう。


 それで、髪と目の変化についてだが、詩夕と常水だけじゃなく、皆そうだった。

 でも、さすがに、女性に対してそういう事で笑うのはないな。

 詩夕や常水だからこそ、気兼ねなく笑う事が出来たのだ。

 先生も変化しているそうなので、そこは遠慮しない。


 それから戦いの話になったのだが……よく生き残れたね、という無事だからこそ言える感想しか出て来ない。

 どうやら、本当にギリギリのところで、武技の神様が現れたそうだ。

 こうして会えているからそれはわかっているのだが、ちゃんと間に合っていた事にホッとする。

 本当に生きていてよかったと、泣きそうになった。


 ここに来た方法が、DD筆頭の竜たちの背に乗って、というのは予想外だったけど。

 ジースくんに会えるのは嬉しいけど……ここでも興行を催すつもりなのは間違いない。

 エルフの里の時みたいに、ラメゼリア王国の朝もダンスで始まるようになるのかな?


 というか、親友たちが俺と違って強過ぎない?

 役割分担なのはわかるけど、なんでそんな戦闘系に割り振っているの?

 それに特殊武技って何?

 俺、漸く、普通の武技に目覚めたばかりなんだけど?


 そのあとにシャインさんとグロリアさん、DDとジースくんたちが来た、と。

 いきなりの事で驚いたそうだ。

 気持ちはわかる。

 シャインさんといい、DDといい、基本的理不尽な存在だからね。


 シャインさんの鍛錬がキツイのは共感出来る。

 特に天乃と先生は大変だろうなぁ。

 グロリアさんに弓矢を教えて貰っている咲穂は楽そうだけど。


 詩夕と常水の事をDDにゲロッた事は、素直に謝っておく。

 笑って許してくれた。

 良い息抜きになったそうだ。


 そこまでは比較的穏やかな会話だった。

 そう、一番の問題が、先生である。


「絶対殴るって言っていたよ」

「かなり追い詰められているからな」


 う~ん……それは俺のせいだろうか?

 モテているんだから、素直に喜べが良いと思う。

 それに、グロリアさんは俺の事を褒めてくれそうだ。


⦅マスターに危害を加える者は敵です。どうやら、もっと追い詰める必要があるようですね……ふふふ……⦆


 なんかセミナスさんが怖い事を言っている。

 聞かなかった事にしよう。

 その方が面白くなりそうだ。


「……ロリコン先生。ご主人様、見た目美少女のエイトは身の危険を覚えました。イツキなる者に会って、エイトは大丈夫でしょうか?」


 エイトはエイトで、なんの心配をしているの?


 そして、ラメゼリア王国に来た理由を教えられたが……多分それ、もう解決していると思う。


「……いや、まずはそこを確認してから来ようよ?」

「明道に会えるとわかったら、勢いで飛び出しちゃって」

「まずは再会を優先しただけだ」


 全く……まぁ、俺がそっちの立場だったら、全く同じ行動するのは間違いないので何も言えない。

 という訳で、これからそこら辺の確認と、先生とグロリアさんに会いに行く事になった。

 アドルさんたちにも、俺の親友を紹介したいしね。

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