気が付いたらこんな時間ってよくある
現状確認するために移動するのは良いのだが、問題はどこに向かえば良いのか、がわからない事だ。
それに、俺は気絶して運び込まれたため、この部屋がどこのあるのかもわからない。
城内は広い。
普通に歩いているだけでは、きっと辿り着けないし、迷う。
でも、よくよく考えてみれば、そこら辺が杞憂である事に気付く。
実際にここまで来た二人が居るのだから。
そう思って尋ねると、二人は恥ずかしそうに言う。
「案内されたけど、明道に会えると前しか見えていなくて……」
「意識が明道の安否に向けられていたため、それ以外は……」
ありがとう、と嬉しく思うべきか、どれだけまっしぐらだよ、と突っ込むべきか……悩む。
いやいや、待て待て。
考えてみれば、もう一人居るじゃないか。
バッ! ともう一人に視線を向ける。
「エイトに地図作製機能はありません。ですが、どれだけ離れていてもご主人様のところに戻るための、自動追尾機能は完備しています」
帰巣本能かっ!
どういう基準でエイトを造ったのか、神様たちに問いたい。
「いや、それは置いといて、普通に飲み物とか持って来ていたよね? だったら、どこに何があるかくらい」
「隣の部屋に簡易台所がありますので、そこで用意しました」
これだから無駄に広い城はっ!
そういうところばっかり力を入れて!
……こうなると、こんな事で頼りたくはなかったが。
セミナスさん! お願いします!
⦅ふふふ……こうしてマスターは、私なしでは生きていけなくなっていくのです⦆
やっぱなしで。
アレだね。
もっと自主性を大事にしていかないと。
自らの力で困難を乗り越える事によっても、人は大きく成長出来るのだから。
⦅さすがです、マスター。正にその通りなのです。私に頼るばかりでは、マスターの成長は見込めません。自らの意思で進む道を選ぶ事が重要なのです。その事に気付いて頂くために、私はあえて先ほどのような発言をしたのです⦆
………………。
⦅………………⦆
建前を取っ払うと?
⦅良い感じにマスターが私なしでは生きていけなくなりそうでしたので、つい本音が。……失言でした。マスターに隠し事は出来ませんね⦆
……危険じゃない? このスキル。
⦅120%の優しさで出来ています⦆
きっと、上限が1000%とかなんだろうな。
⦅………………⦆
………………。
よし、とりあえず、このまま足をとめていても仕方ない。
行動を起こさないと始まらないのだ。
という訳で、詩夕、常水、エイトを連れ立って歩を進める。
まずは直ぐそこにあるT字路を曲がって――。
「「あっ」」
エイトじゃない、この城に勤めていると思われるメイドさんとエンカウント。
なんでも、詩夕、常水が来た事で、俺が起きたんじゃないかと様子を見に来たそうだ。
ついでに、起きていれば連れて来て欲しいと、アドルさんにお願いされたこの国の王様に言われている、と。
アドルさん、何者? は、本人から言われるのを待つとして、さっきの俺の決意は一体……。
⦅マスター。先ほどの私の発言は、こうなる事を見越して上での遊び心です⦆
でしょうね!
余計にたちが悪い。
大人しく、メイドさんの案内に従った。
◇
案内してくれるメイドさんのあとを付いて行く。
……あれ? どうしてまだ階段を上がるのかな?
さっきから上がっているけど……。
というか、結構な高さまで上がったけど……こういうところの高い場所って、大抵の場合は王族とかが住んでいるところだと思うんだ。
……ちょっと落ち着かないから、下に行かない?
騎士や兵士が利用する食堂とか、青空の下とか、そういうところで話を聞けば気持ちが楽になると思うんだけど、どう?
「……」
案内してくれるメイドさんにそう提案してみるが、ニッコリと笑みを返されるだけ。
手強い。
それに、なんで詩夕と常水は普通なの?
「どう考えてもこれから王様とかと会うっぽいのに、二人は平然とし過ぎじゃない?」
「「……」」
ニッコリと笑みを返された。
まるで、そういう立場の人とよく会っているから慣れた、みたいな印象を受ける。
……もしかして、そんな頻繁に王族クラスと会っているの?
あっ、そういえば、さっきの話の中で、先生に惚れたお姫様が……と考えていると、メイドさんの足がとまり、こちらです、と言って扉をノックし、中から返事がすると同時に扉を開けて、どうぞと俺たちを促してくる。
どうも、と一礼して室内に。
高そうなテーブルとソファに、甲冑、本棚、なんか縦長い壺、でっかい机などなど、色んな物が置かれている上に、アドルさんたちだけじゃなくて色んな人たちが室内に居るけど、それでも狭苦しさは一切感じないくらいに広い部屋だった。
何この部屋?
⦅王が使用する執務室です⦆
ほらぁ、やっぱり、そういう部屋に通されるでしょ?
堅苦しくなるから勘弁して欲しい。
何より、礼儀とか求められても困るんだけど?
⦅問題ありません。以前にも言いましたが、私を使っているマスターが頂点です⦆
そんな訳がない。
どうしたものかと思っていると、声がかけられる。
「やぁ、やっと英雄が目覚めたね」
カノートさんだった。
う~ん……この人が豹変したのか。
見てみた、ちょっと待って。
「……英雄?」
誰が?
後ろを確認。
俺を指差す詩夕と常水が居た。
なんか行動が読まれていたっぽい。
エイトは普通に控えている。
俺もそのポジションに居たい。
「……俺が、ですか?」
自分を指差しながら、カノートさんに確認。
そうだよ、と頷かれる。
「当然だろう。私たちはアキミチの指示に従ったに過ぎないのだからな」
「そうですよ。アキミチはこの国を救ったのですから、この国の人たちから、英雄と呼ばれてもおかしくありません」
「そうそう。誇って良い事だからね!」
アドルさんたちがそう言いながら、こちらに来る。
いやいや。
俺の指示じゃなくて、セミナスさんの指示なんですけど?
「……あれ? やっと目覚めた?」
なんかそこに引っかかるんだけど。
すると、アドルさんが教えてくれた。
「どうやら気付いていないようだが、謁見の間でアキミチが大魔王軍と戦ったのは、もう一昨日の出来事だ」
……一昨日?
で、俺は今日まで寝ていた、と。
……なんだってそんな事に?
⦅武技の影響です⦆
「……武技の?」
その呟きに、カノートさんが笑みを浮かべる。
「そう。あの武技のおかげで、私は助かりました。本当にありがとうございます」
「いえいえ」
カノートさんが頭を下げるので、俺もぺこりと頭を下げた。
けれど、そのカノートさんから注意を受ける。
「ですが、どうやらあの時が武技の初発動だったようですね。でしたら、先達として教えておきましょう。武技は確かに強力ですが、その分、体力の消耗が非常に激しく大きいですので、使いどころは気を付けるようにして下さいね」
「はい。気を付けます」
そういえば、そんな事をセミナスさんが……でも、まさか、こんなに寝入ってしまうとは。
⦅今回は特例みたいなモノです。何しろ、スタミナがほぼ空っぽの状態でしたので⦆
なるほど。
………………でもなぁ、なんとなくだけど、この武技って緊急時に使うようなヤツだから、またギリギリで使って気絶しそうなんだよね。
まぁ、その辺りの判断はセミナスさんが完璧だから、慣れない内は任せた方が良いのかもしれない。
⦅大丈夫。怖くありません。私に全てを委ねなさい⦆
不安しかない。
もっとスタミナ付けないと、と心の中で思う。
そして、この部屋の中には、アドルさんたち、カノートさん以外の人たちも居る。
具体的には、頭に王冠を載せた人と、姫様っぽい人が二人に、事前情報通りに髪と目の色が違う先生と、グロリアさんの五人。
グロリアさんと先生は別に良いけど、王族っぽい人たちは緊張するなぁ……。




