こうして俺と詩夕たちは……
寝ていた間の説明を聞き終えると、扉がノックされた。
一緒に居たエイトが出ると、なんか追い返しそうなので俺が出る。
何故か、セミナスさんも推奨しているし。
「はいはい。どなたです、か?」
扉を開けた先に居たのは、爽やかイケメンと武人イケメン。
……本当にどなた?
俺を見て、爽やかイケメンの方は満面の笑みを、武人イケメンの方は泣きそうな表情を浮かべる。
え? 何その表情?
「漸く会えたね、明道!」
爽やかイケメンに抱き着かれる。
「明道……こうして無事に会えてよかった」
その光景を見た武人イケメンが、うんうんと感慨深そうに頷く。
いや、何これ? どういう状況?
いきなり抱き着かれるとか、よくわからない。
出来れば、美女で、もっとギュッと情熱的に色々と押し付けるようにやり直して欲しい。
困惑していると、エイトがこちらをジッと見ている事に気付く。
「……おっと、これからお楽しみの時間ですか? エイトも加えて欲しい事を希望します」
違うわっ!
このままだと話も出来ないので、まずはこの二人を中に入れて、そこら辺にあった椅子に座らせる。
エイトに飲み物の用意をお願いして、俺は改めて二人を確認。
二人の周囲をぐるぐると回って、前後左右から見ていく。
一人は、金髪金目の爽やかイケメン。
見た目は、詩夕っぽい。
一人は、青髪青目の武人イケメン。
見た目は、常水っぽい。
うん。髪と目の色を除けば、まんま詩夕と常水だ。
でも、甘い。
そう簡単に信じる俺ではないのだよ。
俺だって、この世界をこれまで生きてきたんだ。
成長している。
ずばり、目の前の二人は、詩夕と常水のそっくりさん、で間違いない。
今日の俺は冴えている。
「……なんか、思っていた再会と違うけど、戸惑いから勘違いしているっぽいね」
「明道らしい。懐かしいし、少し待ってみるか」
「うん。そうしよう。後々の笑い話になるし」
目の前の二人が何やら呟いているが、今は思考に集中だ。
ここまで読み切ったのなら、今後の展開も読めるはず。
推理。
推論。
スイミング。
あー、海行きたい。
この世界の海って泳げるのかな? 水着あるんだろうか?
ブーメランタイプしかなかったらどうしよう……じゃなくて、今は目の前の二人だ。
世の中には自分に似ているのが二人……いや、三………………何人か居ると言われているから、きっとこの世界でもそれは通じるはず。
だって、目の前にそのそっくりさんが居る訳だし。
いや、待てよ。
もしかして……本当に本人だったら……いやいや、ないない。
だって、髪色と目が違う。
髪色は染めるとか出来るけど、目の色が変わるなんてありえない。
………………はっ! カラコン?
いや、それこそありえない。
眼鏡ならまだしも、コンタクトレンズはないでしょ?
という事は、そっくりさんの判断は間違っていない訳だ。
「多分だけど、そっくりさん、とか思っていそうだね」
「まぁ、髪色と目の色が変わったからな。明道はそのままだから、そういう変化はない、と無意識で判断している。もしくは、そういう考えに至らないのかもしれない」
では、何故ここに二人のそっくりさんが居るのか、という疑問が出てくる訳だが……そっくりさんという事は……この流れ……本人ご登場の可能性があるな。
たとえばここで、俺が目の前の二人に対して、詩夕と常水だと指摘する。
すると、目の前の二人はそれを否定して、タッタラ~! 的な音が鳴って、ドッキリと書かれた看板を持った、本物の詩夕と常水が現れる……というくだりの可能性が一番高い。
何故なら、俺ならそうするからだ。
ふふふ……甘いな。詩夕、常水。
驚きの再会をしようと画策したようだが、俺の裏をつくだなんて、まだまだ無理という事を教えてやる。
まずは、二人の周囲をぐるぐる回っていた足を正面でとめた。
そのままジッと見て………………はい、ぐるっと回れ右して後ろを確認。
出てきそうになっていた二人がそこに……居ない。
………………あれ?
何度か同じ行動をしてみるが、二人の姿は見えず、出てくる様子もない。
……なんか、だるまさんがころんだ、をしていて、追い詰められている気分。
俺一人だけここに残されて、全員帰ってないよね?
「明道にしては、随分と時間がかかっているね」
「多分だが、戸惑いと動揺から、未だ精神的に混乱しているのかもしれない」
「なるほど。随分と面白い事になっているね」
「あぁ、間違いなく、後々で恥ずかしがる内容になっているな」
さすがに、そっくりさんを残して帰るとか、そんな事をするような二人じゃないしなぁ……。
というか、なんかこう直感というか、本能的な部分が、そっくりさんたちの会話を耳に入れろと言っているような気がする。
⦅そうですね⦆
あっ、本能さん、じゃなかった。
セミナスさん。
⦅見ていて面白いぐらいに勘違いしていますが、そろそろ教えた方が良いと思いましたので、声をかけさせて頂きました⦆
勘違い? 何を?
教えた方が良い? 何を?
⦅本人です⦆
……ん? 何が?
⦅ですから、そっくりさんではなく、そこの二人は本人です。最初から本人登場しています⦆
………………。
………………。
またまたぁ~。
セミナスさんも、俺をドッキリに嵌めようとしているの?
⦅そのような真似はしません。もしマスターを嵌めるとするのなら、私への愛に、です。ふふ……⦆
ブルッと体が震えて寒気がした。
それでちょっと冷静になる。
もし、セミナスさんの言っている事が本当だったとしたら?
「あれ? なんか急に動きが大人しくなったね」
「もしかしたら、気付き始めたのかもしれないな」
………………。
………………。
いやいや、このままだと黒歴史になってしまう。
論破する事を前提に考えよう。
……そうだ! 俺が知っている二人と、目の前の二人には最初から大きな違いが――。
⦅ちなみに、髪色と目の色が違う点についてですが、体内に宿している内包魔力の上昇が関係しています。幼少期と成人期を比べますと、内包魔力の上昇に合わせて、髪色が変化する、目の色が変化するなど、身体の一部が変化する場合があるのです⦆
うん。ちょっと待って。
俺、変化してないっぽいよ?
つまり、魔力が……じゃなくて。
いや、それも気になるけど。
髪と目の変化が本当なら、ちょっと笑いそうになるんだけど………………本当に本人、なの?
⦅そう言っていますが? ……私は間違った事は言いません⦆
………………。
………………。
顔を両手で覆いたくなった。
でも、それをしてしまえば、本人だと気付いた事に気付かれる。
それは避けたい。
でも、ここからの打開策が思い付かない。
「あっ、なんか気付いたっぽいね」
「そうだな。だが、それをどうにか誤魔化そうとしているように見える」
不味い。見抜かれている気がする。
さすがは親友、と言うべきか。
これまで築いてきた友情が、ここで仇になるとは……このままでは黒歴史確定である。
そこで稲妻が走り、天啓のように閃く。
これまで築いてきた……その経験の中に、答えはあった。
行道明道、速やかに遂行する。
俺は無言で詩夕と常水を立たせ、一旦そのまま廊下に出て貰う。
扉を閉め、一呼吸。
切り替えるためには、この一呼吸が大事。
そして、扉を開ける。
「はいはい。どなたです……まさか、詩夕! 常水! 本当に二人なのか! どうしてここに! いや、そんな事より、またこうしてお互い無事に会えて嬉しいよ!」
両腕を広げて、喜びと歓迎のポーズ。
感動の再会である。
「いや、やり直さなくても良いから」
「口数の多さが、如何に必死かを訴えている」
冷静な対応。
ですよね。
「気付かなくてすみませんでしたー!」
即座に謝る。
なんか、俺のせいで感動の再会にならなくて……ごめん。




