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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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別章 こうして詩夕たちは……

 詩夕、常水、樹の男性陣と、フィライア、グロリアは、ラメゼリア王国に向かう事になった。

 その準備が進められる中、移動手段はDDを含む竜たちである。


「連れて行くのは五人で、お前らも五頭。私は乗せないから、誰が誰を乗せるか、そっちで決めておけ」


 DDの指示で、竜たちが詩夕たちを乗せて行く事になった。

 となると、自然とこうなる。


「「「「「俺が女性を乗せて行くからな!」」」」」


 何が悲しくて男を背に乗せなければならないのか。

 乗せるなら女性が良い、と本能のままに行動する竜たち。

 いや、剥き出しの野性とでも言うべきか。


 もちろん、言葉で、話し合いで決着がつく訳もなく、果ては殴り合いにまで及び、体格で勝るジースと、上手く立ち回った一頭が、フィライアとグロリアを乗せる事になった。

 空に向かって両拳を掲げるジースと一頭、両手両膝を地に付けて落ち込む三頭、という明暗がくっきり分かれた構図が出来上がる。


「「「もう一戦!」」」

「「誰がやるかっ!」」


 この結果が変わる事はなかった。


 準備が終わり、ラメゼリア王国に向けて出発の時。

 魔導具・アイテム袋を腰に携えたフィライアは、行ってきますと見送りに来たベオルアと挨拶を交わす。

 グロリアはシャインに。

 詩夕たちは、もちろん天乃たちだ。


「それじゃ、行ってくるね。どれくらい時間がかかるかはわからないけど、ここの事は任せたよ、刀璃」

「刀璃だけに背負わせるのは心苦しいが、今回は仕方ない。頼む」

「すまないな。一時的とはいえ抜ける事になって。刀璃が中心となって纏まるようにな」


 詩夕、常水、樹の言葉に、刀璃はこうなるのも仕方ないかと、頷きを返す。


「いや、頷きじゃなくて! おかしくない? 刀璃ちゃんだけに頼むのは!」

「そうだよ! そうだよ! 私たち全員に頼むべき事じゃないかな!」

「……納得出来ない。やり直しを断固要求する」


 天乃、咲穂、水連の言葉に、詩夕たちは苦笑いを浮かべた。

 何しろ、天乃、水連は纏め役に向いていない、というのを詩夕と常水は元々知っていて、樹もこの世界で学んだ。

 咲穂なら出来るかもしれないが、現在とあるメイドと抗争中のため、纏め役からは自然と除外されたのである。


 なので、纏め役は刀璃しかいないのだ。

 という事を馬鹿正直に言う訳にもいかず、詩夕たちがまぁまぁと天乃たちを宥めていると、出発の時間となる。


 それぞれ別の竜に跨り、DDを先頭にして、天乃たち、シャイン、ベオルアに見送られながら、空へと飛び立っていった。


     ◇


 竜の飛行速度もあるが、やはり目的地に向かって一直線に進めるというのは、時間短縮に大いに貢献する事である。


「電車でもあれば、また違うのかもしれないけど……魔物が居るんだったら、防犯的な部分で難しいかな」

「そうかもしれないな。さすがにレールを守る術がないと難しいと思う」


 竜に乗り、地表の様子を窺いながら、詩夕と常水はそんな会話を行う。

 会話が出来ているのは、竜たちが風圧を防ぐ魔法と共にそういう伝達魔法を使用しているからである。

 すると、詩夕と常水の会話にフィライアが食いついた。


「デンシャ? とはなんなのですか? シユウ様」


 言っても大丈夫かな? と思いつつも、詩夕は説明を行う。

 説明を聞いたフィライアは、考え込むように黙り込んだ。

 暫くすれば、なんでもないように他愛ない話を行い出す。


 そのままラメゼリア王国の王都に向けて一直線に進み、その近郊まで一気に進む事が出来た詩夕たちは、DDたちにお願いして、王都から少し離れたところに降ろして貰う。


 このまま下手に近付けば、竜の到来という大騒ぎになるのは間違いないためだ。

 そちらに意識を向けさせて、その間に調べる……という案もあったが、騒ぎが大きくなり過ぎて、それどころではなくなりそうだったために却下となった。


 全員が竜から降りた事を確認したあと、フィライアがDDに尋ねる。


「それで、DD様たちはどうされますか? この国の王家とも接触する予定ですので、その際に興行についての話もこちらで通しておきますが?」

「いや、私も行こう。何やら覚えのある気配がするのでな。人の姿となれば問題ないのだろう?」

「はい。そうして頂けるのでしたら問題ありません」


 ただし、ジースを含め、他の竜たちはまだ人の姿はなれないため、この付近で待機となった。


「では、行きましょうか」


 そう言ったフィライアが、樹の左隣で腕を組む。

 グロリアが、樹の右隣で腕を組む。


「……えぇと、歩きづら」

「「何か?」」

「……なんでもないです」


 将来のパワーバランスを見るような光景に、詩夕と常水は苦笑を浮かべる。

 そのまま特にこれといった問題は起きず、この一行は無事にラメゼリア王国の王都・エアリーに辿り着いた。


「……ビットル王国でもそう思ったけど、やっぱり僕たちが想定しているよりも、この世界は発展しているのかもしれないね」

「あぁ」


 王都内の様子を見た詩夕が感嘆するように言い、常水は同意するように頷く。

 そこから先の行動は、ここに来るまでに予め話し合われていた。

 まずは宿の確保。

 表で行えない話もするため、気密性が高く、防犯性も高くなければいけない。


「問題ありません。資金はかなり用意しましたので、ここにしましょう!」


 フィライアが指定した宿は、この王都でナンバーワンの商会である、ドンラグ商会が直に営む大きな宿屋。

 ドンラグ商会本店の隣にあり、王城を除けば、この王都で一番高い建物である。


「「「「「………………」」」」」

「何やら騒々しいな」


 詩夕たちが足を踏み入れてみれば、DDが言うように宿屋内は何やら騒々しい。

 客が、ではなく、従業員の方が、だ。

 何やら慌ただしく動き回り、時折武装している者も見かけるため、只事ではないのが見てわかる。


 ただ、客が居るという事で休業ではないと判断して、まずは受付カウンターに向かう。


「いらっしゃいませ。宿泊で宜しいでしょうか?」

「はい。そうなのですが……」

「お騒がせしてすみません。内輪の事ですので、どうかお気になさらず。ですが、申し訳ございません。部屋の方なのですが、六人となりますと、四人部屋と二人部屋しか空いておらず、また、二人部屋の方は三階の高級部屋しか空いていないのですが、それらで宜しいでしょうか?」


 問題ないとフィライアは答え、そのまま部屋を取る。

 内訳は男性と女性で分かれる形に自然となった。


 宿が確保出来れば、そのまま情報収集に向かう。

 といっても、詩夕たちはそういう事に不慣れなのは間違いない。

 そういう経験がないのだから、当然である。


 もちろん、ここも話し合い済み。

 フィライアは、知り合いであり、信頼出来る貴族が居るというので、そこに向かう。

 護衛として、樹が同伴する。

 グロリアは、こういった事にも経験があると言って、詩夕と常水を連れて行動する事を決めていた。

 DDは、自由行動である。


 そして、各々やるべき事を済ませた夜。

 集まるのは、二人部屋の高級な方。

 二人部屋なのに、そちらの方が広いのは……高級だからである。

 DDは、四人部屋の方で既に寝ているため、ここに居るのは詩夕たちと、フィライア、グロリアだけだ。

 そこで互いに得た情報をすり合わせる。


 ・ドンラグ商会が本腰を入れて、何かしている。

 ・調査的な行動で、直近で潰れたバッグラウンド商会関連の可能性が高い。

 ・神を見た?

 ・昨日、王城の謁見の間で騒ぎがあり、大魔王軍の目撃情報。

 ・やたらと強い男性二人と女性一人によって、騎士、兵士たちが壊滅状態。

 ・カノートが、ウラテプをボコる。

 ・姫がとめなかったら、間違いなく殺していた。


 という内容になった。

 全員が唸る。

 困った事に、どちらも得た情報は真実性が高い判断している事だ。

 つまり、これが全て真実だったら、と考えてしまう。


「……えぇと、もしかしてですが……かなり大掛かりな事が起こった、という事になりますか?」

「そう判断してもおかしくないわね。実際、バッグラウンド商会は潰れていて、ドンラグ商会が忙しなく動いているし。何より、神の目撃情報が多過ぎるというのが、逆に真実味を増しているような」


 詩夕の問いに、グロリアが答える。

 神が封印されているというのは、既に知れ渡っている事。

 なのに、神を見た、という者が複数居る事で、真実である確率が高くなっているのだ。


 詩夕たちとグロリアが、どう判断すべきか悩んでいると、フィライアが口を開く。


「実は……もう一つ報告があります。私が接触した貴族は、王城であったらしい騒動に関わってはいませんでしたが、関わったという者から、全ての黒幕と言いますか、中心人物と思われる者の名を聞いたのです。それが……その……」


 フィライアはそこで一旦区切り、大きく深呼吸してから告げる。


「『アキミチ』という名の者だそうで」

「「よし、今直ぐ王城に乗り込もう!」」

「待て待て待て待て!」


 樹がとめなければ、詩夕と常水はとまらなかっただろう。

 そんな勢いがあった。


「母が面白がりそうな話ですね」


 グロリアは冷静である。

 樹が詩夕と常水に諭す。


「そもそも、王城にというか、ここに居るかもわからないんだからな」


 確かに、と一旦冷静になる詩夕と常水。

 そこに、フィライアによって油が注がれる。


「それが、その……中心人物はまだ王城で療養中だという話が」

「「よし、今直ぐ王城に乗り込もう!」」

「いやいやいやいや!」


 強くなった樹でなければ、詩夕と常水はとまらなかっただろう。

 それだけの勢いがあった。


「行けばよかったと、母が後悔しそうですね」


 グロリアは冷静である。

 しかし、先ほどよりも、詩夕と常水の勢いは強い。


「ちょっ! グロリア、さん! 手伝って! こいつら、なんか変な力が溢れてるから!」


 強くなった樹でもとめきれない勢いになっていた。


「「友情パワー!」」

「否定はしないが、今それを発揮するのはやめろ! そもそも、お前たちだけでは入れないだろ? それに、今はもう夜だ! 明日! ね、明日にしよう!」


 明日なら大丈夫なんですか? という詩夕と常水の強い視線がフィライアに向けられる。

 フィライアは困ったような笑みを浮かべながら答えた。


「そうですね。友人に会いたいというお気持ちはわかりますし、もし集めた情報が正しければ、既に事は終わっているのかもしれません。ですので、早速明日にでも王城に向かいましょう。付いて来て頂けますよね?」

「「はい! もちろんです!」」


 詩夕と常水は、感謝の気持ちを言葉にして伝える。


「あっ、なんでしたら、今日」

「樹はこっちに泊まらせても構いません」

「ちょっ! おまえら! ほんとやめろ!」


 樹は逃げるように四人部屋に向かった。


 そして翌日。

 詩夕たちは王城に向かう。

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