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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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別章 ラメゼリア王国へ

 ラメゼリア王国の貴族二人を捕らえた翌日。


 ビットル王国・王城の一室。

 この国の姫であるフィライアからの指示で、詩夕たち、シャイン、グロリア、人の姿となったDDが集められた。

 集まった全員が、昨日の貴族二人の事だな、と察する。


 そして、フィライアと、この国の王であるベオルアが入室して鎮座すると、フィライアから説明が行われた。

 話の内容は、昨日捕らえた貴族二人から聞き出した事。


 それは、ラメゼリア王国の宰相の一人、タロッタ・ウラテプによる、国の乗っ取り計画だった。

 貴族二人はウラテプの行った悪事のいくつかには関わっていたようで、その事も同じく聞き出している。

 さすがに、大魔王軍の関与までは知らなかったようだが。


 ただ、秘密裏に悪事を行うような者が国の乗っ取りに動いているというだけでも重要案件である。

 しかも、その国は三大国の一つで、企んでいるのが宰相なのだ。

 最重要で確認するべきだと、フィライアは主張する。


 そこで疑問が一つ浮かぶ。

 何故、このメンツが集められたか、だ。


 フィライアが説明する前に、シャインがピンときた。


「……そういえば、南の国にはアレが居るんだったな。聖人の皮を被った狂人が」

『………………は?』


 詩夕たちは、シャインの言葉に揃って首を傾げる。

 グロリアは思い至ったのか、苦笑だった。

 フィライアもまた苦笑である。


「カノート様ですね。確かにシャイン様の言いようは理解出来ますが……」

「私は事実を言っているだけだ。それに、この言い方は本人にも言ったぞ。確かに私は狂うほどに愛していますので、その通りですね、と納得していた」

「……将来のラメゼリア王国の王となる予定の方ですのに、カノート様は」


 フィライアは頭を抱えたくなった。

 ラメゼリア王国の姫と婚約していて、現ラメゼリア王国の王に他の子息が居ない以上、カノートの立場だと、そういう未来が待っているのだ。

 また、これは現ラメゼリア王国の王も望んでいる事のため、覆りはしないだろう。


 ただし、今回フィライアが考えている事と、シャインが気付いた事は、それとは一切関係ない。

 シャインが、常水に向かって笑みを向ける。


「よかったな、ツネミズ。上手くいけば、師となる者を得る事が出来るぞ」

「……まさか」

「あぁ。あいつの槍の扱いは、私が知る限りの中で一番だ」


 高揚感か期待感か、常水が拳をギュッと握る。

 隣に居る詩夕は、よかったね、と常水の肩に手を置き、微笑みを浮かべた。


「もちろん。強さは私の方が上だがな」


 そこは譲らない、とシャインは自慢気な笑みを浮かべて腕を組んだ。

 でしょうね、と詩夕たちは心から思う。

 フィライアは苦笑しつつも、続きを述べる。


「ですが、カノート様に協力を求めるにしても、ラメゼリア王国が無事でなければいけません。ウラテプの乗っ取りが成功してしまえば、それどころではなくなってしまうでしょうから。何より、そうなった場合の、後々の危険性は高いと踏んでいます。真偽の確認は必要ですが、ウラテプの悪事がもし事実であれば……」


 フィライアはそこで一旦区切り、真剣な表情を浮かべる。


「事実であれば……大魔王軍だけではなく、同じ人類とも戦わなければいけなくなるかもしれません」


 詩夕たちは、その言葉に少なからず衝撃を受けるが、シャイン、グロリア、DDは、特に気にした様子はない。

 けれど、真剣なフィライアの姿を見て、詩夕たちに危機感が伝わる。

 同じ人を相手に戦えるか……殺し合えるかはわからないが、このまま黙って何もしないのは駄目な気がする、と詩夕たちは感じる。


「……なるほど。これは本格的に介入する場合がある、と想定しておいた方が良いかもしれませんね。となると、まずは……ラメゼリア王国の現状確認を最優先に行う、という事で合っていますか?」


 詩夕の問いに、フィライアは頷きを返す。

 他の者たちも異論はないと、このまま話を進めていく。


 フィライアの提案は、シャインの時に行おうとした、向かう者を制限した少数精鋭でラメゼリア王国に向かう事だった。

 そうする最大の理由は、大人数で動けば相手を刺激する事になり、その結果でどうなるのか、予測が立てられない事だ。


 最悪の展開を避けるために、まずは少数精鋭でラメゼリア王国の内情と、ウラテプの動向確認を行う事で話が纏まる。

 では、その場合、誰が行くか、だが……。

 最初に行く事を希望したのは、フィライアだった。


「私はラメゼリア王国に向かおうと考えています」


 そうする理由は大きく二つ。

 まず、王城に入城するのは難しく、普通は無理だという事。

 しかし、フィライアであれば王族というのもあるが、私的な理由で入城出来る事だった。


 その私的な理由がもう一つの大きな理由。

 ラメゼリア王国の姫とフィライアは、非常に仲の良い友人関係であるという事。

 要は、友人の安否が心配だから、向かいたいという事だった。


 その気持ちは、詩夕たちはよくわかる。

 何しろ、明道が今どこに居るかがわかれば、今直ぐ飛び出してもおかしくはないのだ。


 だからこそ、詩夕たちはフィライアがラメゼリア王国に向かう事を否定しない。

 そのフィライアは感謝するように一礼する。

 そこで、シャインが言う。


「なら、護衛としてグロリアを連れて行け。いざとなった時、グロリアが居れば充分だろう。戻るまでの間のサキホの鍛錬は、私が見ておく」

「わかりました」


 グロリアの返事を聞いたシャインは、樹を見る。

 にやぁ……と嗜虐的な笑みを浮かべた。


「お前も行け、イツキ。折角休みをやるんだから、精々楽しんでこい」

「ありがとうございます! シャイン様!」

「ありがとうございます! お母様!」


 フィライアとグロリアは即座に感謝の言葉を述べ、やったね! と二人で手を重ねる。


「いや、あ、の……う~ん……」


 樹は唸る。

 休みは単純に嬉しいが、楽しめる気がしない……という板挟みに陥ったのだ。

 拒否しないのは、既に反骨心が折られているからかもしれない。


 ポン、ポン、と詩夕と常水が、樹の肩に手を置く。

 頑張って下さい、と。

 その様子を半眼で見ながら、シャインは言葉を続ける。


「何をしているのかわからんが、お前も行っておけ、ツネミズ。槍を学びたいのだろ? そういうのは自分で言わないとな」

「……はい!」


 常水はやる気を滾らせて、拳を掌に打ち付ける。


「シユウも行ってこい。槍ほどではないが、剣もそれなりに使えたはずだ。師が見つかるまでの繋ぎとして、精々利用してやれ」

「ははっ、わかりました」


 苦笑を浮かべつつも、詩夕も了承する。

 詩夕と常水は視線を合わせ、頑張ろうぜ、とでもいうように拳を合わせた。


 天乃と咲穂は残る事に異論はないようで、特に否定の言葉は口にしない。

 残る刀璃と水連は――。


「私は辞退する……というよりは、今の状態の天乃を置いていくのは少々心配だ」

「……私も、メイドと喧嘩している咲穂が心配」


 自ら辞退を申し出た。


「ちょっと待って! それはどういう事かな? 刀璃ちゃん!」

「喧嘩してないよ! というか、向こうが喧嘩売っているようなモノだから、それを買っているだけだよ!」


 天乃と咲穂が異論……というよりは、抗議する。

 抗議が通ったかはわからないが、奇しくも詩夕たちは一時的にだが、男女で分かれる事になった。


 ベオルアは、この国の王として、今はここから離れるべきではないと考えているため、元々ラメゼリア王国には向かわないつもりである。

 そして、この場に居る者たちの視線が、特定の方向に向けられた。


 そこに居るのは、DD。

 この場に居る者たちの思いとしては、出来れば協力して欲しい、である。

 世界最強の存在である竜が共に来てくれれば、どれだけ心強いだろう、と。

 シャインはそう思ってないが。


「………………」


 DDは目を閉じ、腕を組んで考える。

 誰もが固唾を呑む中、DDが口を開く。


「……良いだろう。ここは広めた……新たな興行場所だぁ~! ついでに連れて行ってやるわ!」

「ありがとうございます、DD様」


 馬車で向かうよりも相当早くラメゼリア王国に辿り着けると、フィライアが感謝の一礼をする。


 こうして、詩夕、常水、樹の男性陣と、フィライア、グロリアに、DDを含めた竜たちは、ラメゼリア王国に向かう事になった。

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