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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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気絶してからの事を聞く

 セミナスさんから、俺が気絶してからの出来事を聞く。


⦅あっ、それなりに長い話ですので、汎用型を呼んで飲み物と軽食を用意して貰う事を推奨します⦆


 ぐぅ~、とおなかが鳴る。

 推奨されているし、エイトを呼ぶ事にした。


 いやぁ、ベルを鳴らすとメイドが来るとか、普通は漫画のような世界じゃないと起こらない出来事だよね。

 と、余計な事を考えながらベルを取ろうとしたのがいけなかったんだと思う。


 取り損ねて落としてしまう。

 割れてはいないようだけど、当然のように激しい音が鳴る。


「「………………」」


 扉をそっと開けて、こちらの様子を覗き見るエイトと目が合う。


 今のは間違いだと、両人差し指を交差させてバツ印を作って見せる。


「……カップリング?」


 ついでに、もう一回エイトを俺が呼ぶからやり直させてと、エイト、俺と順に指差し、最後に人差し指をピンと立てる。


「……エイト×ご主人様? ……なるほど。普段こき使っていたメイドに反旗を翻され、屈辱の中で大切なモノを散らしてしまいますが、逆にそれが……というのを一度は体験してみたい、という事だと、エイトは察しました。出来るメイドです」


 う~ん……エイトが何やらボソボソと呟いているが、内容までは聞こえない。

 なんとなくだけど、俺の言いたい事が通じていないような気がする。


⦅このままでは、マスターの身が快楽……危険なため、声に出して正確に伝えるべきだと、お知らせしておきます。……強制はしませんが⦆


 このまま放置すると、俺はどういう事になるの?

 どことなくセミナスさんも期待しているように聞こえるけど?

 ……いいんだよね? 伝えるべきなんだよね?


⦅……強制は、しませ、ん⦆


 なんで悔しそうというか、残念そうなんだよ。

 不思議に思いつつも、声に出して、きちんとエイトに伝える。

 ついでに飲み物と軽食もお願いした。

 ………………なんでエイトも残念そうなの?


 それでも、少し待てば飲み物と軽食は用意してくれた。

 ……どこから調達してきたんだろう?

 そして、エイトは室内にあった椅子をベッドの近くに持ってきて、そのまま座った。

 このままそこに居るのかな?

 まぁ、もう起きたし、別に良いけど。


 それでは、お願いします。


⦅かしこまりました⦆


 用意して貰った飲み物と軽食を頂きながら、セミナスさんに気絶してからの出来事を聞く。


 まず、俺が気絶した直後の話から。

 カノートさんと四枚羽の戦いは、カノートさんの圧勝で終わったそうだ。


 ………………。

 ………………。

 え? 圧勝なの?

 魔力がなくなりそうで、結構ギリギリというか、ピンチだったと思うけど?


⦅危険な段階であった事は事実ですが、マスターの武技によって窮地を脱し、マスターの報告によってリミッターが外れて勝機を掴みました⦆


 うん。さっぱり。

 とりあえず、まずその武技について教えて。


⦅かしこまりました⦆


 俺に発現した武技の名は、「隔絶(ガーディアン)した守護領域エリア」。

 防御系スキルで発現する武技の一つで、簡単に言うと、自分を中心にした半円球の透明バリアを張るそうだ。

 透明バリアの強度は、セミナスさんの計算上だと、平均的な強さの竜のブレスは防げる……らしい。


 平均的っていっても、相手はこの世界で最強種の竜の攻撃を防ぐのだから、相当なのは間違いない……らしいってのが不安なんだけど?


⦅申し訳ございません。実際に試した、経験した者が居ないため、情報としては正確さに欠けています⦆


 そうなんだ。


⦅はい。そもそも、普通は詠唱途中で竜のブレスを食らって終了します⦆


 ……まぁ、そうなるだろうね。

 俺もわざわざ試そうとは思わないし。

 それでも、大抵の攻撃を防ぐ術があるのは心強い。


 ただ、武技というだけあって使用時のスタミナ消費が大きいのと、透明バリアをそのまま維持し続けるのにも、スタミナを大きく消費し続けるそうだ。

 あの時、一瞬だけでも発動出来たのは、奇跡みたいなモノかもしれない。


⦅奇跡ではありません。全ては計算の上に成り立っています⦆


 でしょうね。

 というか、俺はいつの間に武技が使えるように?


⦅そこそこの強さでしたので、マスターにとって良い鍛錬相手となってくれました⦆


 ………………まさか、俺が四枚羽の相手をしたのって?


⦅申し訳ございません。事前に教えてしまうと、マスターがそこを意識し過ぎてしまい、逆に修得に至りませんでしたので⦆


 ……う~ん、なんか納得。


 でもまぁ、武技に関しては、使えるようになったという認識で充分。

 次に聞きたいのは、カノートさんの圧勝の件だ。

 リミッターが外れて、ってどういう事?


⦅そのままの意味ですが? 補足説明を行いますと、槍使いとこの国の姫は、愛ある……いえ、愛で溢れまくってもう好きにすれば良いような婚約をしています⦆


 ……は?

 えっと………………つまり……。


     ◇


「カノートさん! こいつら、姫様も狙いの一つだったようですよっ!」


 そう言うと、カノートさんは……覚醒した。

 その体から闇のオーラが立ち昇らせ、ゆっくりと四枚羽を指差す。


「……てめぇら……誰の女に手を出そうとしたのか……わかってんだろうな? あぁん?」


 そこに貴族は居ない。

 ただ、鬼が居た。

 正確には、鬼のような形相となったカノートさん。


「はっ! それがどうかしました? これから死を迎えるあなたが気にす」


 四枚羽が言い切る前に、カノートさんは行動に移っていた。

 一瞬で四枚羽の眼前に肉迫したのである。

 驚きで目を見開く四枚羽。


「死ぬのはてめぇだぁ!」


 カノートさんの全力の槍が突かれる。

 槍が四枚羽の体に当たると砕け散ったが、相当の衝撃だったのか、四枚羽の表情が苦悶に歪む。

 けれど、これでカノートさんは武器を失って――。


「まだ終わりじゃねぇぞ! こらぁ! 武器がなくなったらステゴロじゃあ!」


 カノートさんは、そのまま素手で四枚羽をボッコボコにした。

 踏み付けの追い打ちも忘れていない。

 ……恐ろしい。

 人は愛故にここまで変われるのか、というのを見せつけられた。


 ……それでも、本当に鬼にしか見えない。

 人に戻れるのか、不安である。


⦅問題ありません。この国の姫が、その愛で槍使いを人に戻しますので⦆


 なら安心だ。


     ◇


 みたいな感じ?


⦅概ね間違ってはおりません⦆


 ……概ね間違ってないんだ。


⦅もっと迫力がありました⦆


 そっちに!

 えっと……カノートさんへの態度は、改めた方が良いのかな?


⦅必要ありません。この国の姫を狙っているという報告をした事によって、よくぞ教えてくれましたと更に信頼度が上昇しています⦆


 ……うん。多分だけど、深く考えない方が良いヤツのような気がする。

 それにしても、カノートさんってそんなに強かったんだ。


⦅そうですね。愛故に、と言いたいところですが、元々槍を扱う事に関しては、この世界でも有数の……いえ、世界一と言っても良いような者です。そもそも、全力後の体力低下状態、魔力枯渇寸前、低品質の槍、スキル補正なし、などの条件がなければ、あれぐらいの相手は瞬殺しています⦆


 なるほど。

 確かに、そういう人だったのなら、火事場の馬鹿力的な理不尽を起こしてもおかしくないか。


⦅……そうなのですよね。どこにでも、これまで積み上げてきた前提をいきなりなかった事にする、そんな理不尽で非常に不愉快な存在が居るのは間違いありません。どこにそんな力が、ではなく、そういう力があるのでしたら、最初から発揮しておけよ、と言いたくなります⦆


 ……多分、そういう存在が嫌いなんだろうな、セミナスさん。

 前提を積み上げていくタイプだし。


 シャインさんとかは、間違いなく理不尽……いや、考えるのはやめておこう。

 考えたらそこに居ました、とか起こしそうだし。


 それで、えっと……あの………………。


⦅最後は空気と化して、小物感バリバリとなった首謀者ですか?⦆


 そうそう! それそれ!

 あっ、ウラテプだ!


⦅既に捕縛され、厳しい取り調べが行われています。提示した証拠の件以外にも色々と悪事に手を染めていますので、関連を洗い出すだけでも大変な事ですが……現在、使えない神共がやれば出来ると証明するために、吸血鬼たちを巻き込んで奮闘しています。まぁ、私が出向けば、全て瞬時に解決なのですが⦆


 でしょうね。


⦅マスターが望まない限りは、もう出会う事はないでしょう⦆


 ……別に会いたくはないかな。

 というか、結局は、そのウラテプはこの国と姫が欲しくて、行動を起こしたって事で良いの?


⦅はい。きっかけはそうです。その後、戦力を欲して大魔王軍に接触。大魔王軍としては、この国を手にしたのち、残りの三大国に攻め入り、挟撃で一気に落とそうと目論んでいたようです⦆


 もし実現していたらと思うと……ゾッとするね。

 本当に、一気にこの世界が終わっていた可能性があったな、これ。

 そう思っていると、扉がノックされる。

 エイトが出ようとしたけど、メイドさんだったら追い返しそうなので、俺が代わりに出る事にした。


⦅マスターが出る事を推奨します⦆


 セミナスさんもそう言っているし。

 ベッドから下り、扉を開けると――。

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