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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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そういう事っぽい(知ったかぶり)

「この商会関係者は動くな! 書類を手当たり次第に集めろ! 私自らが精査して、ありとあらゆる不正を見抜いてやる! もっと人を呼べ!」


 バッグラウンド商会の建物に入ると、商売の神様が陣頭指揮を取って、武技の神様、ダオスさん、ハオイさん、衛兵たちを動かしていた。

 衛兵が共に居るという事もあってか、特に抵抗を見せる人は居ない。

 というよりは、バッグラウンド商会関係者と思われる人たち――特に商人っぽい服装の人たちは、憔悴し切っていて動く気力がないように見える。


 ……あぁ、そういえば、ブラック商会なんだっけ、ここ。

 色々とキツキツだったんだろうなぁ……。


 ダオスさんとハオイさんは、さすが元会長と現会長という事もあってか、何をどう探せば良いか、どんなのが重要なのかを即座に見抜いていっている。

 武技の神様と衛兵たちは不慣れなのが丸わかりで、どう動けば良いか混乱しているようだ。

 ……あぁ、なるほど。

 だからこそ、手当たり次第に集めて、自分のところに持って来いと言ったのか。納得。


 それにしても、商売の神様があんなに活き活きとしている姿を見るのは初めてだ。

 まぁ、出会い頭が……おっと、これは記憶からなくなった出来事にしたんだった。


「それで、どうやら戦力と呼べるような存在は、自分が無力化してしまったようですし、これからどう動けば良いのですか?」


 スッキリした感じのインジャオさんが、そう尋ねてくる。

 それはそうだろう。

 何しろ、好きなだけ蹂躙しただけではなく、その相手はダオスさんとハオイさんにとっては、あの場で脅威となる者たちだったのだから、割れた壺分以上を稼ぐ働きだったのは間違いないはず。


 で、これからどうしたら良いの?

 明らかに人手が足りないだろうし、俺たちも商売の神様たちを手伝った方が良いのかな?


⦅いえ、その必要はありません。追加が来ます⦆


 追加? なんの? と思っていると、建物入口からたくさんの人が入って来る。

 商人っぽい人や武装している人など様々だ。

 そこで思い出す。

 そういえば、ダオスさんとハオイさんが、後発組が居るって言っていたな。


 ダオスさんとハオイさんの反応を見るに、それで間違いないとわかる。

 後発組の人たちは、ダオスさんとハオイさんのところに直接向かって、指示を受けて動き出した。

 人が増えた事で、加速度的に作業速度が上がっていく。


 上の階に上がる分だけ抵抗する人が増えていくが、衛兵たちや後発組の武装した人たちに、次々と取り押さえられていった。

 そういえば、ドンラグ商会の中で一番戦える人たちを後発組に回したような事を言っていたっけ。


 見た感じ、インジャオさんが蹂躙した人たちと同程度……もしくは上のように思う。


⦅見ただけでわかるのですか?⦆


 全然。この場合はそうかなって。

 それに、バッグラウンド商会よりドンラグ商会の方が上なんだから、その分、強い戦力を揃えていそうだし。


⦅納得です。それに、その見立てで合っています。保有戦力は、ドンラグ商会の方が上ですので、マスターがこの場でやるべき事は既に終わっています⦆


 じゃあ、これから、アドルさん、ウルルさんと合流する流れ?


⦅そうですが、その前にこの場で受け取るモノがあります⦆


 受け取るモノ?


⦅現在、商売の神が精査している場所に、書類が塔のようにいくつもそびえ立っていますが、左から三番目の塔の、上から五十七枚目の書類を受け取って下さい⦆


 と言うので、まずは商売の神様が居るところに向かう。

 書類が運ばれていく先なので、捜すのは簡単だった。

 どうやら一室を丸々使用しているようで、中に入ると、本当に書類の塔が出来ている。

 商売の神様は眉間に皺を寄せた、難しい顔を浮かべながら、書類を確認しては処理していくという作業を、もの凄い速度で行っていた。


 わー……何人にも分裂しているように見える。

 これは、そういう作業を頼ってしまう武技の神様の気持ちが、ちょっとわかってしまう。

 その武技の神様は、商売の神様の補佐をしていた。

 死んだ目で、商売の神様に書類を渡していっている。

 ……考えたら負け……じゃなくて、思考を一切排除する事で、単調作業を長時間可能にしている、ように見えた。


 ……頑張れ、武技の神様。見た目は小間使いだけど。

 心の中で応援しておく。


 その作業を一旦とめてしまうのは心苦しいが、セミナスさんに言われた場所の書類を取り出し、商売の神様に確認を取る。


「えっと、手をとめさせてしまって、すみません。この書類を持っていきたいんですけど、大丈夫ですか?」

「……ん? どれどれ」


 商売の神様が書類を手に取り、確認する。

 ………………。

 ………………。


「……なるほど。そういう事なんだな?」


 商売の神様が俺に目線を合わせて、確認するように尋ねてきた。

 ……おぅ。なんの事かさっぱりわからない。

 でも、書類が次々と運び込まれているという事は、それだけ人の目もあるという事。


「えぇ、そういう事なんです」


 とりあえず、同意しておこう。

 おっと、さもわかっていますよ、という表情も浮かべておかないと。

 ……で、どういう事なの?


⦅このあと、王城に行けばわかります⦆


 だと思った。


「……となると……これとあれが繋がり……裏で動いていた金の流れは……」


 商売の神様が、何やらぶつぶつと呟いている。

 あれ? もしかして、色々とわかっちゃった感じですか?

 ……くっ。認めたくない。

 商売の神様の方が脳力に優れている現実を。


⦅仮にも神を相手に負けない宣言。さすがは私のマスター。その意気です⦆


 そうだった。

 出会いの印象が強過ぎて、駄目な神様だと思っていたからつい……じゃなくて、だから、この記憶はなかった事にしないと……。


 記憶を抹消していると、商売の神様が書類を返してきた。


「もう大丈夫だ。確認は済んだから持っていって構わない。何に使うのか、大体見当は付いたしな」


 商売の神様から書類を受け取るが、話はまだ終わっていないようだ。


「あぁ、それとついでだ。一つ、教えておこう。商売に関する契約書であれば、それが虚実かどうかを私は見抜く事が出来る。真偽がわかるという認識で構わない。その書類は人身売買の裏取引に関する事が書かれていて、署名されている二人の名も偽名ではなく真実であると、私が証明しよう」


 そう言うので、ちょっと確認。

 内容は見てもわからないが、書かれている名は読める。


 一つは、ザイン・バッグラウンド。

 バッグラウンド商会の現会長の名が書かれている。当然か。


 もう一つの方は、「タロッタ・ウラテプ」?

 ………………。

 ………………誰? これが協力者の名前なのかな?

 エイト、インジャオさんに聞いてもわからない。

 商売の神様と武技の神様も同様。


 まぁ、良いか。

 多分、王城に行けば、全部わかる事だろうし。

 という訳で、早速王城に向かう事にする。

 そうして部屋から出る前に、商売の神様が一言。


「あとで私もそちらに行こう」


 そう言って、新しい書類に目を落とした。

 ただ、俺は思う。

 スキル更新の作業に戻りたくなくて来る、訳じゃないんだよね?


⦅否定はしません⦆


 完全否定して欲しかった。

 まぁ、なんにでも息抜きの時間は必要だと思うし、今がそれだと思っておこう。


 という訳で、バッグラウンド商会の方は商売の神様たちにあとの事は任せる事にして、俺、エイト、インジャオさんは王城に向かった。

 ふっ……この王都で一番目立つ建物なんだから、道に迷う訳がない。

 俺たちだけでも辿り着ける!

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