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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十五章 人一人分の確定した未来
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時間的に出来る範囲には限界がある

「……やっぱり、そうだったんだね」


 そう言った詩夕の表情は苦笑に見えなくもないが、そこから抱く心証はなんともいえないという心情を表しているかのようなモノだった。

 当たったけど嬉しくないというか、どう声をかければ良いのか、という感じ。


 そんな詩夕を前にして、今の俺も同じような表情を浮かべているような気がする。


「……話、聞かせてくれるんだよね?」

「もちろん。そのつもりだよ」


 詩夕の問いにそう答えて、一呼吸入れる。

 視界を広くすれば、他のみんなも俺の話を聞く気なのがわかった。

 演説のような感じで……ちょっと緊張する。


「どう話せば良いのかわからないけど……邪神と戦っている最中に、このままだと駄目な気がしたんだ。簡単に言えば、倒せない、と。だから考えた。どうすれば、邪神を倒せるのかを」

「その結論が、未来の自分に託した、という事かな」

「うん。そう。今は無理でも、未来でならそれだけの力、もしくは方法でもなんでも見つけ出す事は出来るんじゃないかな? って。勝算はあったよ。何しろ、こちらにはセミナスさんが居るからね」


⦅………………(ドヤッ)⦆


 なんか俺の中のセミナスさんがドヤ顔を浮かべているような気がする。

 心の中で苦笑を浮かべながら、続きを話していく。


「だから、今やるべきは邪神を倒そうとするのではなく、封印する事で未来への道を開き、強くなってここに戻って来ようと考えたんだ。一度実際に過去に行っているから、この考えは成功すると思った。……でも、同時にある事に気付いたというか、可能性としてあるな、と思った事があった」


 未来の俺を見る。


「さっき、未来の俺が思っている通りで間違いないって言ったのは、その事」

「……それは?」


 常水がそう尋ねてくる。

 詩夕はなんとなく察しているようだ。


 俺はみんながなるべく気にしないように、笑みを浮かべて言う。


「時間移動には限界があるって事」


 サッ、と神様たちが俺から目を逸らしたのは、詩夕たちには黙っておこう。


「さっき、未来の俺が言っていただろ。時間移動には莫大な魔力が必要だって。セブンであっても造られてから今まで溜め続ける必要があるくらいのが。そんな魔力量を気軽に使える方が異常だよ。それに、そんな気軽に出来るのなら、それこそ大魔王が生まれる前に行ってとめれば良い。または、邪神が悪さ出来ないようにすれば良い。でも、それが行われず、提案さえないって事は……」


 そこで区切り、次をハッキリと言う。


「過去に戻れる時間には限りがあるって事」


 俺から目を逸らした神様たちが、鳴らない口笛を吹き始める。

 まぁ、鳴ったら鳴ったで詩夕たちの視線が向けられるし、鳴らなくて正解っちゃ正解なんだけど。

 神様たちには触れずに続きを話す。


「多分、魔力量に応じてってのがわかりやすいけど、他にも色々と条件があって、戻れる時間には決まりがある。未来の俺たちからすればこの時間に来るのが限界ギリギリとか、じゃないかな?」


 確認のために未来の俺を見ると、その通りだと頷く。


「あぁ、本当にギリギリ。余裕なんてこれっぽっちもない。セミナスさんが言うには、使える時間を目一杯使って鍛えないと、邪神相手には状況がひっくり返ってもおかしくないくらい危ないってさ」

「その割には、かなり余裕そうに見えたけど?」

「まっ、そう見えるくらいには鍛えたって事。ある程度の記憶は残っていたから幾分余裕はあったけど、実際は結構ヒヤヒヤだったよ。少なくとも、俺はね。セミナスさんはトレースすれば良いだけだって言っていて、大魔王ララは待ち望んでいた事だから、そっちの思いの方が強いみたい」


 つまり、ある意味緊張していたのは俺だけだって事ね。

 わかっていても、いざその時が来ると緊張してしまいそうだ。

 まぁ、それはまた未来で考えよう。


「話を戻すけど、戻れる時間に限りがあると考えた時に、それはつまり俺たちが元の世界に戻る場合も、ここまでって限界がある事になるよね? ましてや違う世界……言ってみれば異世界への時間移動となると、普通に行うより厳しい条件になるはず」


 詩夕たちを順に見ていく。


「思い出して欲しい。俺たちがこの世界に召喚された時、何か条件のようなモノを言っていなかった?」


 俺の問いに詩夕以外が考え出す。

 詩夕はもう答えがわかっているようで、少し間を置いてから答える。


「予言の女神様からの指示で、この時、この瞬間でなければ駄目だった、と」

「うん。その通り。俺たちが戻る場合は、そこに更に時間が戻るまで付くんだ。条件は更に厳しくなるよね。だから……」


 予言の女神様に視線を向けると、みんなも俺に合わせて予言の女神様を見る。

 視線に気付いた予言の女神様がビクリと小さく肩を跳ねさせた。


「……な、なんでしょうか?」

「予言の女神様。正直に答えて欲しいんだけど、俺たちが元の世界、元の時間に戻れる機会は、一回しかないんじゃないですか?」

「それは……はい。その通りです。以前見た『未来予測』から事態自体が違い、多少時間的な変動はありますが、一回だけなのは間違いありません」

「それは、いつですか?」

「そうですね………………およそ五カ月先、といったところでしょうか。もう少し日が近付けば、より詳しく、細かくお伝えする事が出来ると思います」


 五カ月、か。


⦅正確には、164日後。およそ五カ月と二週間、といったところです⦆


 ……すみません。予言の女神様。

 もう既により詳しく、細かい数字が出ているようです。

 言ってしまって良いのか悩む。


⦅構いません。そこの役立たずの女神の精神や心をバッキバキに折って、二度と立てないようにしてやりましょう。私が推奨します⦆


 そうだった。

 セミナスさんは神様たちに基本辛辣なんだった。

 予言の女神様は特に。


 さすがにそれはと今は黙っておく事にする。

 まぁ、相手は予言の女神様だし、何か面倒事でも起こったらぽろっと言ってしまいそうだけど。


 そう思っていると、何かしらの決意を宿したような表情の詩夕が口を開く。


「つまり、僕たちはそれまでに決めなきゃいけない訳だ。明道が決めたように……この世界に残るか、元の世界に戻るか、を」


 黙って頷いた。

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