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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十五章 人一人分の確定した未来
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見た感じと違って余裕がある時ってない?

 セミナスさんからの話を聞きながら、目の前で繰り広げられている戦いにも、きちんと意識は向けている。

 話によると、黒い武具の相手をしている未来のセミナスさんと大魔王ララは、手こずっているように見せている……との事。


 ………………いや、手こずっているようにしか見えない。

 と思ったのだが、邪神からは見えないように、未来のセミナスさんが俺に向けて小さく手を振ってきた。

 余裕がありますね、未来のセミナスさん。


⦅手を振り返すと喜びますよ⦆


 いや、それで邪神に気付かれたら意味ないし、やらないよ。

 というか、タイミングが良過ぎる辺り、今の会話もしっかりと記憶しているんだろう。


 未来の大魔王ララは……あっちはあっちで、なんか気が抜けているように見えなくもない。

 早く終わんないかなぁ……とか、思っていそうだ。


(私にもそう言われるとそう見えます。……えっと、なんか、すみません。未来では、きちんと気を引き締めたいと思います)


 いや、邪神にバレなければ、そこら辺は構わないんじゃないかな。

 それに、そう言っても、これが未来だから。


 なので、今のところ一番激しいのは、未来の俺と邪神の戦いという事になる。

 ここは相変わらず邪神が黒巨人による攻撃を放ち、未来の俺がすべて防いでいるという感じだろうか。

 時折反撃もしているが、効果は薄い……というか、ない。


 通常の武器型ASだと効いておらず、武器型ASが集まって形作る大剣型ASなら黒巨人を斬れるのだが、直ぐにくっ付くように再生している。

 再生のために一時的に邪神の動きがとまるくらいの、一息吐きたい時くらいにしか使えない。


 それでも反撃しないという選択肢はないとでもいうように、きっちりと反撃出来る時は逃さずしている。


⦅再生にも力を使いますので、見た目にはわかりませんが効果はあります⦆


 という事らしい、と思ったところで、未来の俺の呟きが聞こえる。


「……そろそろ、かな」


 その言葉が合図となったのか、未来の俺が一気に攻勢に出る。

 大剣型ASで黒巨人の腕を斬ったあと、ASの形が大剣型から巨大杖型に変化。

 その巨大杖型ASから巨大な火球が何発も連射される。


「これは熱いから、受けない事をオススメする」

「そう言われると受けたくなるな」


 邪神が黒巨人の腕で払い落とそうと振るうが、巨大な火球は落ちずにそのまま黒巨人の腕に纏わりつくように這って燃えていく。

 しかも、一振りですべて払い落とそうとした動きであったために、次々と巨大な火球にぶつかっていき、その火力と規模が加速度的に上昇して一気に燃え上がった。


 黒巨人の燃えた腕が一気に燃え上がり、炭化して崩れ落ちる。


「なるほど。忠告通りだが、それがどうした」


 黒巨人の腕が生えるように瞬時に再生。

 対する未来の俺は右手を高々と掲げていて、邪神に向けて降り下ろす。

 飛来するのは巨大な槌。

 巨大杖型ASの姿がなくなっているので、多分アレがそうなんだろう。


「今度は槌か」

「さて、どうする?」

「答えは変わらん」


 頭上から飛来する巨大な槌を、黒巨人が受けとめた。

 最初は片手で受けとめたのだが、威力と勢いが想定よりも上だったのか、押し切られてたまらず両手で受けとめて拮抗する。


「ふぅんっ!」


 力の入った声を漏らす邪神。

 黒巨人の両手で受けとめていた巨大槌型ASを、握り潰すようにして粉砕。

 ではなく、未来の俺が分離させたようで、分離したASは直ぐに集まり、今度は巨大な槍型となって、黒巨人の頭部を貫き飛んでいく。


「それも無意味だ」


 黒巨人の頭部に開いた穴を即座に塞いだ邪神。

 そこに巨大槍型ASが空中で方向転換して舞い戻る。

 再び貫くかと思ったが、その前に黒巨人に掴まれてしまう。


「だから、無意味だと言ったのだ」


 黒巨人が巨大槍型ASを未来の俺に向かって投擲。

 当たる直前に分離して、各ASは未来の俺に当たらないように通り過ぎていく。


 そこに、未来の俺に向けて黒巨人による乱打を放つ。

 通り過ぎていった勢いそのままに方向転換して各ASは集まりながら戻り、今度は大きな両拳型へと形を変え、乱打に対して乱打で返す。


 拳と拳がぶつかり合う中、未来の俺が口を開く。


「無意味、無意味と言っているが、本当に無意味だと思っているのか?」

「何が言いたい?」

「無意味だと思えるような行動も、あとになれば意味を持つ事だってある。一つ一つは無意味でも、繋がれば意味を持つ。もっと大局を見た方が良いと思うな、俺は」

「まるで、我が見えていないとでも言いたいようだな」

「そうだな。だが、気付いた時にはもう遅い、なんて事はよくあると思わないか?」

「今の貴様のようにか?」


 黒巨人の乱打の勢いが一気に増し、大きな両拳型ASが打ち負けていき……最後は押し通されるように弾き飛ばされ、黒巨人の両拳はそのまま未来の俺に襲いかかる。

 けれど、黒巨人の両拳が当たる前に、盾型ASが防いでとめた。


 そこに、今度は大きな両拳型ASから大刀型ASに形を変え、黒巨人の両腕を横から両断する。

 黒巨人は直ぐにでも両断された両腕をくっ付けようとするが、そうはさせないと大刀型ASは両断した両腕側を瞬時に細切れにした。


「何をしようと無意味だ」


 邪神が黒巨人に更に力を注ぎ込む。

 すると、なんでもないように両腕が再生された。


「それはどうかな? 終わってみないとわからないだろ?」


 大刀型ASは再び巨大杖型ASに変わり、今度は大きな氷塊を連射。

 黒巨人は迎え撃ち、拳で大きな氷塊を打ち砕いていく。

 砕けた氷のキラキラとした反射の光が綺麗だな、と思う。


 そうして、未来の俺は武器型ASの形を変えながら攻撃を繰り返し、邪神の黒巨人と真っ向からやり合い始める。

 戦闘の激しさは増す一方であり、その影響で大地は傷付き、余波もこちらまで届きそうだ。

 それでも未来の俺は盾型ASも駆使して邪神の黒巨人からの攻撃を完全に防ぎ、ダメージは一切負っていない。


 この攻防はいつまで続くのだろうか? と思った時、プスン……と燃料が切れたかのように、邪神の黒巨人が姿を消すが――次の瞬間には再び出現していた。

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