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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十五章 人一人分の確定した未来
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出来るようになるまでやっただけ

 未来の俺は本当に強い。

 ここまで強くなれるのか、今はその手段とかそういうのはわからないが、少なくともそこまでの強さを手に入れなければ、邪神には対抗出来ないって事だ。


 とりあえず、今の俺には無理。

 戦いだけではなく、同じASがあったとしても、同じように扱えるとは思えない。

 それと、今の俺が未来の俺の強さに対して一番すごいと思うのは、セミナスさんが中に居ない状態でそれだけの強さを発揮しているという事だ。


 セミナスさんから情報は与えられているだろうけど、すべてを憶えているとは思えない。

 言ってしまえば、自分で判断した対応もあるはずなのだ。

 その上で、邪神と対等以上に渡り合っている。


 その姿を見ていると、なんとなくだけど……出来ているから出来るんじゃなくて、出来るようになるまでやったから出来ている、という方がしっくりくる。

 そんな印象を受けた。


 ……いや、なんとしても……何があっても、ここまで出来るようにならないといけないんだ。

 でなければ、きっと邪神には勝てない。

 いや、未来から過去に戻った時、その結果にきっと犠牲が出る。

 犠牲を出さないため……ここまで強くならないといけない。


 今見ている未来の俺の強さを深く記憶に刻み込んでいくために、視線は未来の俺に固定しておく。


 ただ、先ほど、セミナスさんが大体理解したというのも気になった。

 なので、未来の俺と邪神の戦いを見ながら、セミナスさんに尋ねる。


 何がわかったの?


⦅未来のマスターたちの狙いです⦆


 狙い?


⦅はい。先に結論を言えば、体力スタミナ切れ……いえ、今の場合ですと、生命力切れを待っているといったところでしょうか⦆


 ……俺が封印のために邪神を疲弊された時のようにって事?

 でも、一度味わっている訳だし、直ぐにバレるんじゃないの?


⦅今考えてみると、そのための状況作りは最初からありました⦆


 最初から?


(最初からってどういう事ですか?)

⦅……別にあなたには話しかけていませんが?⦆


 まぁまぁ。

 それに、大魔王ララも一緒に戦ってくれるんだから、事情は知っておいても良いと思うけど?


⦅……わかりました。マスターがそう言うのなら。では、まず、そもそもの話として、邪神を生命体へとするために二度楔を打ち込んで、特殊な魔法陣を発動させました⦆


 うん。そうだけど、そこから?


⦅はい。そこからです。というのも、二度楔を打ち込んで特殊な魔法陣を発動させるだけならば、わざわざ戦闘を行う必要はありません。それこそ、封印が解けた瞬間に全員で仕掛ければ良いだけです。ですが、実際は戦闘が行われました。それも、一人ずつで、己の力を見せつけるかのように⦆


 確かに。


(そうですね)

⦅本来なら、そのような行為は必要ありません。ですが、そのような行為を必要もなしに取らせるような私ではありません。よって、あれはあれで意味があるのだと、答えを考え続けていました⦆


 そうなんだ。

 てっきり、憂さ晴らしとか、そういう類かなと。


⦅まぁ、そういう部分もあったでしょう。特に、邪神を前にすると暴走する者も居るようですから⦆

(……え? もしかして、私の事ですか?)

⦅正確には、未来のあなたですが……まぁ、それはもう気にしていません⦆


 気にしていないのは、未来で蹴る事が出来るからだろうな、きっと。


 それで、そんな行動を取った理由は?


⦅印象付けです。未来のマスターたちは、まず自らの強さを示しました。そこで邪神に印象を与えたのです。今のお前ではどうしようもない存在だ、と⦆


 そんな印象を与えてどうするの?


⦅次の未来のマスターの行動と組み合わさって、その次に繋がっています⦆


 ……未来の俺の?


⦅はい。その行動とは、邪神が生命体へと変わった時に噴出した魔力によって、押さえ付けていたASを自ら弾き飛ばした事です⦆


 あぁ、そんなのあったね。

 ……え? あれって邪神の魔力の圧力によって弾け飛んだんじゃないの?


⦅違います。未来のマスターの意思によって、です。そうする事で、邪神の頭の中から逃走という選択肢を削除させました⦆


 ……どういう事?


(説明をお願いします、先輩)

⦅だから今説明しています。未来のマスターが指摘した心情も本当の事でしょうが、それでも、回復しきる前に封印が解けたという事もあって、邪神の心の内のどこかにその選択肢は残っていたのでしょう。今は推測ですので、おそらく……という注釈は付きますが⦆


 セミナスさんがそう言うって事は、ほぼ確定……いや、もう確定だと思う。

 でも、それがどう繋がるの?


⦅邪神にとって分岐点ターニングポイントとなったのは、生命体へとなった直後――生命力を燃やす事で力を得られるようになった時。おそらく、そこでその力で逃走を図っていれば、成功していた……かもしれません。もちろん、その場合でも全力で阻止しますが。しかし、押さえ付けていたASがすべて弾け飛んだ瞬間、邪神の中から逃走という選択が削除されました⦆


 ……どうして?


⦅端的に言ってしまえば、散々力を見せつけられたあとに、その力の一端とはいえ容易に跳ね除けたのですから、ある思いを抱いてそれに囚われたのです⦆


 ある思い? どんな?


⦅これだけの力が出せるのなら、この場に居る者たちを皆殺しに出来る、と。その思いに囚われ、逃走の選択は削除されました。何しろ、本心としては逃げたくはなかったでしょうから⦆


 だろうね。


(容易に推し量れます)

⦅そうして戦いを継続させ、次は力――生命力を消耗させるのが目的でしょう。そうする理由はわかりませんが、最後の抵抗とか、そういった類の事が起こらないようにするため、と思われます。そのための時間稼ぎを行っているのでしょう。何しろ、生命力を燃やし続ける事で力を得て、それでどうにか渡り合っている……ように見せかけているのですから⦆


 え? 見せかけているの?


⦅はい。見せかけです。そもそも、邪神に対して見せた力があれば、あの黒い武具に手こずるような事はありません。それでも相手をして、未来のマスターたちが別々で戦っているのは、黒い武具を存在させていれば、その維持だけでも生命力の消費に繋がりますし、邪神の意識も分散出来ます⦆


 言いたい事はわかるけど、意識の分散?


⦅そうですね。この場合は、意識を分散させる事で、思考力を低下させている、といったところでしょうか。そうする事で再び逃走を選択したり、未来のマスターたちとやり合いつつ、こちらに攻撃をしてくるといった、そういう事をギリギリ考え付かないような調整を行っていると思われます⦆


 そんな細かい調整が出来……るね、セミナスさんなら。


⦅お任せください。細かければ細かいほど楽しくなります⦆

(何やら悪寒がします)


 ……結局のところ、最終的には邪神であっても、セミナスさんの手のひらの上から逃れる事は出来ないという事か。

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