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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十五章 人一人分の確定した未来
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一から十まで余す事なくって難しくない?

 そろそろ終わらせようか、と未来の俺が言うと、未来のセミナスさんと大魔王ララが動き始める。

 二人が向かってとまった位置は、邪神が居るところから少し後方の左右――邪神を中に閉じ込めるような三角形の頂点の位置に、未来の俺たちが配置していた。


 未来のセミナスさんと大魔王ララが動いて配置についたのは、邪神からも見えている。

 何かある、と邪神は妨害しようとしたが、それは盾型ASによって出鼻から挫かれていた。


 二人が配置についた事を確認すると、未来の俺が邪神に向けて口を開く。


「一つ言いたい事がある。邪神。お前の抱いた感情についてだ。お前は先ほど逃げようとした。それは恐怖したから。それは間違っていない」


 何を言い出すのかと思ったのだが……多分、邪神に向けて言ってはいるが、本当に伝えたいのは俺たちの方かもしれない。


「………………」


 邪神は未来の俺の言葉に答えない。

 いや、答えられないというのが正しい。

 既に、邪神に余裕は一切なかった。

 ASの対応をするだけで精一杯なのだ。


 未来の俺の言葉は続く。


「恐怖はした。けれど、何に恐怖したのかが違う。間違っている。あの雰囲気的に見れば、死への恐怖を抱いたと思っても仕方ない。如何にも、な感じだったからな。けれど、お前は狡猾だ。そういう風に見えている事を計算して、逃亡する事を選択した。本当に疲労していたのは間違いなく、休息が欲しかったんだろ?」

「……何が言いたい?」


 剣型ASを払い退けながら、邪神が口を開く。

 思わず、といった感じだ。


「お前があの時感じた恐怖は、死への恐怖じゃない。失う事への恐怖、だろ?」


 邪神の体が一瞬とまったように見えた。

 そんな邪神の反応は気にせず、未来の俺はそのまま話し続ける。


「当時の俺は知らなかった。あとで神様たちに聞いて知ったんだ。推測が間違っていなかったという事を。……あぁ、それと、神様たちからすれば当たり前過ぎて、知識として伝え忘れていたというのもあるな。それと、相手が邪神だとその時はわかっていなかったというのもある」


 多分、これって神様たちへのフォローだよね。

 だって……。


⦅私に伝え忘れていた知識がある? ……随分と舐めた真似をしてくれましたね。マスター。そろそろ人は神の手から離れるべきだと思いませんか? 神々に終末戦争ラグナロクを仕掛けてみませんか?⦆


 仕掛けません。

 未来の俺が頑張ってフォローしているんだから、出来れば見逃してあげてください。

 というか、俺もいずれやらないといけないのか。


「……一般的な死という概念は神に存在しない。消滅という概念はあるけどな」

「よく調べたではないか。その通りだ。神は死なない」


 未来の俺の言葉に、邪神がASを捌きつつ、笑みを浮かべながら答えた。

 どういう事?


「わかりやすく言えば、肉体の活動がとまる=死、ではないという事。魂のようなモノが存在していて、それが消滅しない限り何度でも蘇る。それがこの世界の神の特性。つまり、お前が先ほど抱いた恐怖は、死に対してじゃない。このままだと折角手にした肉体を失う事の恐怖。何しろ、一度やられてから長い時間をかけて、漸く手にした肉体だからな。惜しい、とでも思ったんだろ?」

「……よく理解しているではないか。その通りだ」


 という事らしい。

 だから、失う事への恐怖という事か。

 でも、俺としては納得出来るというか、やっぱりそういうしぶとさがあったんだなと思った。


「そして、神の魂の消滅は……実質不可能。その方法は存在していない。唯一、自らの意思によってのみ、消滅させる事が出来る」


 未来の俺が、邪神を消滅させる手段がないとハッキリと言う。

 神の消滅は自分の意思だけが可能で、他からの干渉を受け付けない。

 つまり、邪神が自らの意思でそう望まないといけないのだが……それを望む訳がない。


 その証拠に、未来の俺に向けて、邪神が歪で醜悪な笑みを浮かべる。


「その通りだ! 誰かは知らぬ者よ! 神を消滅させる事は出来ない。それは、我も同じ! 何しろ、邪神であっても神は神だからな。……確かに、貴様が言ったように我は惜しんだ。新たに得たこの体を失うのを。しかし、このような状況に至ってしまったのであれば……仕方ない。諦めよう。再び体を手にするのは数百年かかるかもしれないが……」


 そこで邪神は息を吐き……笑みを浮かべる。


「……と、諦めでもしてもらいたかったか? 確かに、貴様たちは強い。疲労し切った状態でやり合うには、少々分が悪い。それは認める。しかし、我は不滅! たとえこの肉体が滅びる事になろうとも、それまでの間、この場に居る者たちを……いいや、この世界の者たちを滅ぼし続けてくれる!」

「……そうして煽る事で肉体の死を欲したんだろ。狙いは、大魔王ララの時と同じように、この場に居る誰かの中に潜り込んで、この場をやり過ごす事……なんだろ?」

「………………」


 未来の俺がそう言う。

 図星だったのか、邪神から笑みが消え、怒りの視線を未来の俺に向けてくる。


「現実ってヤツを教えてやるよ、邪神」


 未来の俺は、それがどうした、という感じだった。


「今話したのは、現時点までのこの世界での常識みたいな話だ。それこそ、これから先では新たな常識が加わるかもしれない。たとえば、神を消滅させる方法がある、とかな」


 そう言う未来の俺は、端から見てもそう確信しているように見えた。

 だからこそ、邪神も動揺したのだろう。

 注意を逸らし、思考が一瞬でもとまってしまったため、そこを突いて剣型ASの斬撃が邪神の肩に切り傷を刻み、邪神の視線がそちらに向けられる。


 すると、杖型AS二つが邪神の視界の死角となった地上すれすれで迫り、邪神の両足にフルスイング。

 痛そうな重い音と共に邪神の両足が打ち抜かれ、勢いよく前のめりに倒れる。


 そこに残りのASがすべて飛来。

 槍型ASが分裂、分裂と繰り返して四本の小さな槍になったかと思うと、邪神の両手足を貫いて地面に縫い付ける。


 弓型ASが弦部分を消して、邪神の腰付近に衝突。

 弧の内側部分で邪神の腰部分を押さえるようにして、地面に押さえ付ける。


 拳型ASが拳を開き、そのまま邪神の頭部を掴んで地面に押さえ付けた。


 そこに、盾型ASもいくつか飛来して、上から邪神を押さえ付ける。

 身動きが取れなくなった邪神。

 だが――。


「これくらい、直ぐに払い退けてくれる!」

「あぁ、実際、そう長くは押さえ付けられない。なんだかんだと、お前の力は強いからな。けど、そう長くはかからないんだよ。既に仕込みは終えているからな」


 未来の俺がそう言い切るのと同時に、邪神を中心に据えた魔法陣が展開。

 その基点となっているのは、未来の俺、セミナスさん、大魔王ララだった。

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