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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十五章 人一人分の確定した未来
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そこは痛い! て箇所、多くない?

「……次は貴様が相手という事か?」


 顔を押さえつつも、邪神は未来の俺にそう尋ねる。

 指の合間から見える邪神の目は未来の俺に向けられ、若干憎しみが交じっているような感じだった。


「安心しろよ、邪神。俺で最後だ。もちろん、俺がやられて最後って意味じゃなくて、お前がやられて終わりって意味だけどな」

「……」


 先ほどまでなら、邪神はここで何かしらの反応を見せるだろう。

 でも、違った。

 邪神は咄嗟に踵を返して逃走を選択する。


 踵を返した邪神はしっかりと後方を確認。

 先ほど顔面強打した物体がない事を確認すると、そのまま駆け出そうとする。

 しかし――。


「だから、逃がさないって。諦めろ」


 邪神が後方に向けて一歩目を踏み出そうとした時、その足元付近に硬そうな盾があった。

 横向きに配置されていて、自身の頭部付近だけを確認していた邪神は気付かない。


 ガンッ! と邪神は足元付近にある盾に思いっきり足がぶつかる。

 ……脛の辺りに。


「――――――っ!」


 邪神が声にならない声を上げ、脛付近を押さえるように蹲る。

 あれは痛い。見ている方も。

 ……まぁ、同情は一切しないけど。


 というか、邪神が足をぶつけた盾って……AS?


⦅はははははっ!⦆

(ふふふふふっ!)


 確認したいが、その光景を見て、俺の中のセミナスさんと大魔王ララがめっちゃ笑っている。

 先ほどは我慢していたようだけど、今回のは駄目だったようだ。


 ……という事は? と視線を向ければ、未来のセミナスさんと大魔王ララは先ほどと同じように小刻みに震えている。

 声を出さないのは、こちらも先ほどと同じく状況を考えて……だろうけど。


⦅はははははっ!⦆

(ふふふふふっ!)


 今のセミナスさんと大魔王ララの笑いはとまらない。

 俺以外には聞こえていないからか、我慢する必要はないという事だろう。

 未来の俺は、我慢している未来のセミナスさんと大魔王ララを見て苦笑を浮かべている。

 今、俺が思っている事を思い出しているのかもしれない。


 ……出来れば俺も笑いたいところだけど、先ほどの顔面強打の方を見たかった気持ちの方が強くてというのと、あれがASなのかが気になる。


 今の俺が使用していたASは、邪神の封印に使用した事によって、詩夕たちの神器同様に既に存在していない。

 なので、もしASなら、また造ったという事になる。


 というか、確かASも神器括りだから……邪神にとっては普通に脛をぶつけるよりも痛いかもしれない。


 なんて事を考えていると、未来の俺の苦笑は直ぐに消え、その視線が邪神に向けられる。

 そこに笑みはない。

 真面目な表情で、邪神に向けて口を開く。


「逃げられないよ、邪神。絶対な。それでも逃げたければ、ここに居る全員を殺さないと、それこそ不可能だ」

「……それは勝利と呼ぶのではないか?」

「どうかな? それに、案外居るもんだ。自分よりも強いヤツなんて。今お前の前に俺たちが居るように、な」


 痛みが治まったのか、邪神がゆっくりと立ち上がる。


「……その言い方だと、我よりもお前たちの方が強い、と聞こえるが?」

「そう言ったつもりだけど? 実際、追い詰められただろ?」

「貴様に追い詰められた憶えはないな」

「どうかな? 案外、追い詰めた事があるかもよ?」

「貴様など知らないな。それと、言いたい事もわかった。だが、ここで我をとめた事を、精々後悔しない事だな」

「後悔?」

「逃走させておけば、お前ももう少し長く生きていられたものを」

「する訳ないだろ。ここで終わりを迎えるのはお前の方だ。邪神。これは、既に決定事項のお前が辿る運命だ」

「戯言を!」


 邪神が未来の俺に向けて襲いかかる。

 先ほどのように、と見せかけて、という可能性もあるが、未来のセミナスさんと大魔王ララに動きは見えないので、多分そういう事は起こらないと思う。

 起こっても防ぐだろう、という思いもある。


 実際、邪神は未来の俺に向けて一直線に向かっていた。

 ……未来のセミナスさんや大魔王ララに比べて、御しやすいとでも思われたのだろうか。

 まぁ、攻撃能力皆無だし、そういう風に見えても仕方ない。


「安心しろ。それは解決するから」


 未来の俺がそう言ったのが聞こえた。

 多分、俺に向けて。

 えっと、解決するの?


 詳しく聞く前に邪神が未来の俺に迫っている。

 殴りかかるように構え、そのまま行くかと思えばそうではなく、直前にバックステップで距離を取って、未来の俺だけを狙ってではなく、未来の俺ごと後方に居る俺たちの何人かを巻き込むような巨大な黒い閃光の魔法を放ってきた。


「AS」


 未来の俺の呟きに反応して、未来の俺の両腕からASが合計六個出現し、巨大な黒い閃光に立ちはだかるように前へ。

 それぞれが散らばり、描いた形は六角形。

 すると、三つが線で繋がり三角形を描き、あとの三つが線で繋がって逆三角形を作り出す。


 六芒星の魔法陣が描かれ、巨大な黒い閃光を弾き飛ばす。


「先ほどの二人の連れなら、それぐらいの芸当はすると思っていた」


 そんな邪神の声が聞こえたかと思うと、黒い閃光の中からその姿を現し、そのまま魔法陣を殴って砕く。


「追加」


 邪神がそのまま未来の俺に襲いかかるが、未来の俺の両足付近から新たなASが六個出現し、盾を形成して防ぐ。

 どうやら、ASの数が今の俺の倍くらいあるようだ。


 邪神がASに拳を防がれたまま、口を開く。


「……拳を通して伝わるこの感触。やはり神器か。しかし、どこかで見たような気が」

「考え事をする暇があるのか?」


 魔法陣を形成していたASが自由を得て、こちらも盾型に変形。

 形状は丸だけではなく、長方形だったり、先が尖っているのとか、様々である。

 それが体当たりを行ったり、回転しながら迫ったり、槍のように突いてきたりと、攻勢を行い始めた。


 邪神は咄嗟に飛び退いて回避。

 直後に攻勢に出ようとするが、守勢を行っていたASが出鼻を挫くような位置に待機していて邪神の動きを妨害。

 そこに攻勢ASが飛来して、邪神は防戦に回るしかなくなる。


 それでも邪神はASを殴り飛ばす、蹴り飛ばすなどで一時的に退けると、そのまま一気に攻勢に出ようとするが、再び守勢ASがその出鼻を挫く。


 そのような光景が何度も続いた。

 言ってしまえば、邪神は未来の俺が操るASに完全にやり込められている。

 攻勢ASの攻撃はどうにかかわしているが、邪神の方も攻撃しようとする前に防がれていた。


 そこで、気付く。

 今、未来のセミナスさんと大魔王ララは、未来の俺の外に居るのだ。

 つまり、未来の俺は……文字通り単独で邪神とやり合って、やり込めているという事になる。


 ……あれ? なんかすごくない? 未来の俺。

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― 新着の感想 ―
[良い点] セミナスさん笑い方がもはや魔王なんよ。ララの方が上…品? [一言] ……うん。なんかすごいね。未来の明道。
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