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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十五章 人一人分の確定した未来
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予定していないのに揃う時ってない?

 テントを出ると、待ち構えている人が居た。


「思ったよりも遅かったな。そんなに疲れていたのか?」

「……えっと、もしかして、待ち構えていたんですか?」

「いいや、実のところ、私もつい先ほどまで隣のテントで眠っていた。ただ、勘というべきか、不意に目が覚めてな。ついでに、ここで待ち構えていれば面白いモノが見られるような気がしたから、こうして居た」


 居たのは、シャインさん。

 野生の勘とでも言えば良いのか、鋭過ぎないだろうか?

 ……これもシャインさんの強さの一環とも言える。


 当然、断る事も出来ずに、詩夕たち、エイトたちに、シャインさんも加わった全員で行く事になった。

 ただ、本当に結末を見に行くだけなんだけど。

 一応、そう断りを入れるのだが、みんなそれでも構わないと言うので、付いてくる事になった。

 俺が何をもって封印を選択したのか、気になるらしい。

 まぁ、あの時は説明していなかったしね。

 そもそも、説明する暇もなかったし、声に出すと邪神にバレてしまう可能性もあったから、何も言えなかったというのもある。


 なので、邪神が封印されている場所まで向かうまでに、少しばかり説明しておいた方が良いかもしれない。

 特に……今、俺の中に大魔王ララの意識が、エイトの中に魔王マリエムの意識が居るという事は説明しておいた方が良いかな。


 ……詩夕たちがどう反応するのかわからないけど。


⦅やはり、勇者として魔王退治は必須。是非とも退治してもらいましょう⦆

(私自身に悪さをした憶えはありませんけれど? それに、マリエムも基本は緑の栽培ばかりでしたし、出来れば生かす方向でお話を纏めて欲しいのですが……)


 ……俺としては別に居ても構わない。

 詩夕たちに説明はするけど、外に漏らしたりはしないから、黙っていてもらえれば存在がバレる事はないだろうし。


 もちろん、今後悪さをしない、それと、した場合はそれ相応の対処をさせてもらうといった約束はしてもらう必要もある。

 あとはまぁ、今のままにする場合は、エイト自身の意思も大事にしないといけない。

 ……いざという時は、俺が受け入れるか。


(ありがとうございます)

⦅却下します⦆


 まあまあ、セミナスさん。

 ……もう今更だよ。

 ある種の諦めの境地である。

 それに多分だけど、居るだろうし……。


 テントの外は、静かだった。

 篝火が焚かれ、周囲を警戒している人たちがところどころに見える。

 テントが数多く置かれているが、それでも外で寝ている人が居た。

 入りきれなかった……ではないと思う。

 そういう気分ってことかな。


 一応、篝火内の範囲に魔物の死体の類はない。

 休むための場所を確保するために急遽片付けたのだろう。

 とりあえず、話し声で起こしてしまうかもしれないので、静かに進んでいく。

 時折見回りの人たちと出会うが、ちょっとそこまで……みたいな感じだけで終わった。


 ……深く追求されないんだけど良いのだろうか?


⦅戦いは終わっていますし、勇者たちは有名ですので、何かしらの通達が出ていてもおかしくはありません。気にする必要はないかと⦆


 そういうモノかと納得する。

 そうして、それほど時間をかけずに、邪神の封印場所まで辿り着いた。


 そこは、何もない場所。

 そこが封印場所だと直ぐにわかったのは――。


「やぁ。全員揃ってどうしたんだい?」


 武技の神様がそう声をかけてきた。

 これまで解放した神様たちが勢揃いしていたからである。

 神様たちは邪神の気配を感じ取っていただろうし、大丈夫だろうか? と確認しに来ていてもおかしくない。


 声をかけてきた武技の神様に答える。


「もちろん、邪神とのケリをつけに、ですよ」

「邪神?」


 そう答えると、詩夕が不思議そうに尋ねてきた。

 あとは、その時までここで待つだけなので、みんなにも説明しておこうと思う。


 でもその前に――。


「この周囲を覆い隠すとか、外から見えないようにする事は出来る?」


 誰とか特定せず、広く募集する。

 すると、ファイブとシックスが即座に挙手。


「出来るよ~! 光の屈折。光のカーテン」

「暗闇で覆い隠す。闇のカーテン」

「屈折。屈曲。歪曲。折れ曲がりまくり~」

「隠蔽。隠匿。秘匿。隠し事はバレちゃ駄目~」


 何かを答える前に、ファイブとシックスが行動を始める。

 ファイブとシックスにああいう言葉を教えたのは……やっぱり造形の神様たちなんだろうな。

 魔法を唱えたけど……特にこれといった変化はない。


⦅いえ、問題なく発動しています。ここを中心とした周囲一帯が覆い隠されています⦆


 問題ないなら問題ない。

 なので、まずは俺が一方的に、戦いながら知っていった情報を語る。


 戦っていたのが邪神だった……というのは、神様たちは気付いていたようだし、みんなの方も特に気にしている様子はなかった。

 既に終わっている事だしね。


 詩夕たちは、勇者スキルの影響で異常性を感じ取っていて、なんとなく魔王とかそういうのではないと思っていたそうだ。


 エイトたちは、特に気にしていない。

 敵だから戦った、といった感じだ。


 シャインさんは、残念がった。

 もっとやり合っておけばよかった、と……ある意味いつも通りである。


 あと、大魔王ララと魔王マリエムに関しては……驚きはしたものの、俺の意思を尊重してくれるそうだ。

 なので、大魔王ララはこのままとして――。


「エイトはどうしたい?」

「別に構いません。居てくれた方がエイトにとって都合が良い場合がありますので」

「そっか」


 ……あれ? そんな都合あったっけ?


⦅恐らく、大人の姿になる事でしょう⦆

(多分、内でマリエムが色々調整しているから、あの姿を保っていられるのだと思います)


 なるほど。

 でもまぁ、エイトが納得しているなら、それで。

 それに、どうなるかは、このあとでわかるかもしれないし。


「……しかし、大魔王が中に居て……その、大丈夫なのか?」


 常水が心配そうに尋ねてくる。

 俺は安心させるように笑みを浮かべて答えた。


「まぁ、似た者同士って感じだから、大丈夫」


⦅似ていません⦆

(似ていません)


 こういうところが似ていると思う。

 それで安心したかどうかはわからないけど、詩夕が別の事を尋ねてきた。


「それで、結局のところ、明道はここでどうするつもりなの?」


 俺はどう答えたモノかと悩む。


「いや、なんというか、正直言ってどうなるかはわからない。俺が来るとは思うんだけど」


 見てもらった方が早いとは思う。

 ただ、その曖昧な返答に、全員が揃って首を傾げた。


 でも、なんとなくだけどそろそろだと思うので、何気なしに邪神が封印されている辺りに視線を向けて、目を閉じて開ける。

 一回瞬きをすると、視界の中に先ほどまで居なかった人が居た。

 いや、なんの気配もなしに突然現れたと言うべきか。


 現れたのは、黒髪の見た目二十代半ばくらいの男性。

 俺より少しだけ背が高く、マントローブを纏い、その中はどこか落ち着いた雰囲気のシャツとパンツだった。


 その男性が、俺に視線を合わせて、楽しそうな笑みを浮かべて口を開く。


「よっ、過去の俺」

「やっ、未来の俺」


 今より大人になった、未来の俺と笑みを浮かべ合う。

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