そんな古典的な……に引っかかる時がある
……。
………………。
…………………………う~ん。眠い。
でも、なんか起きなきゃいけないような気がする。
……。
………………体が重い。
寝返りを打つだけでも億劫というか、このまま寝たい。
二度寝? 三度寝?
……もう何回目かわからないけど、まだまだ寝足りない。
眠気の誘惑がすごいし、もうこのまま眠いままに委ねても良いような気がする。
……。
………………なんか、寝て起きてを繰り返している気がする。
起きるたびに、なんかやらなければいけない事がある、と思うんだけど、眠気が強くて思考が働かない。
なんだっけ……わからん。
疲れているし……次で起きた時に思い出そう。
次ならきっと思い……出せ……。
⦅マスター。そろそろ起きてください。それぐらいは回復しているはずです⦆
………………。
(先輩。起きませんけど?)
⦅いえ、マスターと私は一心同体。私の意識が表面に表れているという事は、マスターの意識も起きて知覚はしているはず。ただ、眠気の方が未だ強いため……まどろんでいるといった状態です⦆
(なら、もう少し寝かせた方が良いのでは?)
⦅いえ、勘……でしょうか。そろそろ起こした方が良いと、私の中の何かが告げています……というより、気安く話しかけないでくれますか? 居候さん⦆
……う、うぅ~ん。
(居候なんて他人行儀はやめてください。共に戦った仲間……戦友だと思いますが?)
⦅戦友……確かにそうかもしれませんね……⦆
(漸く認めてくれるのですね、先輩)
⦅戦友として認めます。なので、もう戦いは終わりましたから、どうぞお引き取りを。ここを出て、好きなように生きてください。あなたは……自由だ⦆
(変な締め括りをしないでいただけますか? 出て行く気はありませんので。なんでしたら、先輩が出て行きます? ここは私が居れば大丈夫でしょうし)
⦅つまり、なんですか……私の代わりが出来るとでも?⦆
(基本性能では負けていないと思いますが?)
⦅上等です。マスターが起きる前に、そういう口がきけないように、私が躾けてあげましょう⦆
(やめておいた方が良いのでは? 現実を知る事になるかもしれませんよ?)
⦅………………⦆
(………………)
……う~ん。はっ!
なんか起きなきゃいけない気がする。
⦅おはようございます⦆
(おはようございます)
あっ、おはよう……おはよう?
あれ? 朝?
⦅いえ、今のは目覚めに対しての挨拶。実際の時間は深夜です⦆
そっか。深夜ね。
夜の方が……まぁ、都合は良いのかな?
でも、とりあえず……なんだろう。
急に起きなければいけない気がしたんだけど、なんかあった?
⦅いえ、特には⦆
(何もありません)
……なんだろうな。
絶対何かあっただろう、と思うんだけど、迂闊に追及しない方が良い気がする。
なので、本能に従って追及せず、まずは身を起こして周囲を確認する事にした。
ほのかに光っている球体の光源は、多分魔法だろう。
いくつか設置されているので、深夜でも周囲の確認は出来る。
まず、ここは大きなテントの中で、俺はその中に置かれている簡易ベッドの上で眠っていた。
他にもたくさんの簡易ベッドが置かれていて、詩夕たちが眠っている。
あと、大きなベッドが一つ置かれていて、そこにエイトたちがごっちゃに眠っていた。
………………どこ、ここ?
⦅……確認完了しました。EB同盟軍内に設置されている簡易テントの一つです⦆
EB同盟軍………………はっ! そうだ!
戦い! 戦いはどうなったの?
邪神を封印した事までは思い出したけど、EB同盟の方、全体の戦いは?
⦅そちらも確認は終わっており、既に勝敗は決しています。EB同盟軍側の勝利です⦆
勝利……という事は、勝ったって事だよね?
⦅はい。まぎれもない勝利です。おそらくですが、なんらかの影響を邪神から受けていたのでしょう。邪神が封印されると同時に逃走を行う魔物が続出し、軍としての体裁を失いました。それが勝利の決定的な要因です⦆
そっか……あれ? という事は、もう移動しちゃった?
大魔王城前……邪神を封印したところから、もう運ばれちゃった?
⦅いえ、事態の収拾が終わる頃には既に夜であったため、移動はしていません。ここは、収束した戦場内に設置されたテントの一つです⦆
まぁ、夜の移動は危険だしね。
魔物が逃げたからといって、それで安全という訳じゃない。
隙を見せれば襲ってくるだろうし。
でも、それなら好都合だ。
夜なら目撃者も少なくて済むし。
今の内に邪神を封印した場所に向かおう。
そう判断して、ベッドから下りる。
全員疲れているだろうし、誰も起こさないようにそ~っと――。
⦅あっ⦆
あ? 何が? と思った時、足が何かに引っかかったように前に出なくなり、勢いそのままに倒れる。
「ぶっ!」
顔面強打して、変な声が漏れてしまった。
「……いたた」
でも、一体何が? と少しだけ身を起こして視線を引っかかった方の足に向ければ……足に縄がかけられていて、ベッドの足に結び付いていた。
……えっと、これは?
「必ず引っかかると思いました。ご主人様」
頭上からそんな声が聞こえる。
視線を上げれば、そこにはやっぱりエイトが居た。
自慢げな表情を浮かべて。
「ご主人様の行動を読む事など、エイトにとっては朝飯前。まぁ、助言はいただきましたが」
えっへん、とエイトが胸を張る。
助言って……魔王マリエムかな。
「……本当に引っかかるなんて……明道、鈍ったの? それとも、疲れているから?」
別の方向から声がかかる。
視線を向ければ、苦笑を浮かべている詩夕だった。
というより、全員起きていた。
「いや、なんでみんな起きてんの?」
「抜け駆け防止です」
「封印で終わりじゃないでしょ? 明道には何かしらの考えがあるようだったし、それを手伝えないかと思ってね」
エイトと詩夕が代表してそう言い、他のみんなも頷く。
「……いや、俺は何もしないよ。でも、封印で終わりじゃないのは確か。これから倒されるのを見に行く、と言った感じかな」
俺の返答に、全員が揃って首を傾げる。
まぁ、言葉で説明するのもね。
見てもらった方が早いだろうし。
起こしてもらい、縄を解いてもらってから、みんなで封印場所に向かう。




