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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十五章 人一人分の確定した未来
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そんな古典的な……に引っかかる時がある

 ……。

 ………………。

 …………………………う~ん。眠い。

 でも、なんか起きなきゃいけないような気がする。


 ……。

 ………………体が重い。

 寝返りを打つだけでも億劫というか、このまま寝たい。

 二度寝? 三度寝?

 ……もう何回目かわからないけど、まだまだ寝足りない。

 眠気の誘惑がすごいし、もうこのまま眠いままに委ねても良いような気がする。


 ……。

 ………………なんか、寝て起きてを繰り返している気がする。

 起きるたびに、なんかやらなければいけない事がある、と思うんだけど、眠気が強くて思考が働かない。

 なんだっけ……わからん。

 疲れているし……次で起きた時に思い出そう。

 次ならきっと思い……出せ……。


⦅マスター。そろそろ起きてください。それぐらいは回復しているはずです⦆


 ………………。


(先輩。起きませんけど?)

⦅いえ、マスターと私は一心同体。私の意識が表面に表れているという事は、マスターの意識も起きて知覚はしているはず。ただ、眠気の方が未だ強いため……まどろんでいるといった状態です⦆

(なら、もう少し寝かせた方が良いのでは?)

⦅いえ、勘……でしょうか。そろそろ起こした方が良いと、私の中の何かが告げています……というより、気安く話しかけないでくれますか? 居候さん⦆


 ……う、うぅ~ん。


(居候なんて他人行儀はやめてください。共に戦った仲間……戦友だと思いますが?)

⦅戦友……確かにそうかもしれませんね……⦆

(漸く認めてくれるのですね、先輩)

⦅戦友として認めます。なので、もう戦いは終わりましたから、どうぞお引き取りを。ここを出て、好きなように生きてください。あなたは……自由だ⦆

(変な締め括りをしないでいただけますか? 出て行く気はありませんので。なんでしたら、先輩が出て行きます? ここは私が居れば大丈夫でしょうし)

⦅つまり、なんですか……私の代わりが出来るとでも?⦆

基本性能スペックでは負けていないと思いますが?)

⦅上等です。マスターが起きる前に、そういう口がきけないように、私が躾けてあげましょう⦆

(やめておいた方が良いのでは? 現実を知る事になるかもしれませんよ?)

⦅………………⦆

(………………)


 ……う~ん。はっ!

 なんか起きなきゃいけない気がする。


⦅おはようございます⦆

(おはようございます)


 あっ、おはよう……おはよう?

 あれ? 朝?


⦅いえ、今のは目覚めに対しての挨拶。実際の時間は深夜です⦆


 そっか。深夜ね。

 夜の方が……まぁ、都合は良いのかな?

 でも、とりあえず……なんだろう。

 急に起きなければいけない気がしたんだけど、なんかあった?


⦅いえ、特には⦆

(何もありません)


 ……なんだろうな。

 絶対何かあっただろう、と思うんだけど、迂闊に追及しない方が良い気がする。

 なので、本能に従って追及せず、まずは身を起こして周囲を確認する事にした。


 ほのかに光っている球体の光源は、多分魔法だろう。

 いくつか設置されているので、深夜でも周囲の確認は出来る。


 まず、ここは大きなテントの中で、俺はその中に置かれている簡易ベッドの上で眠っていた。

 他にもたくさんの簡易ベッドが置かれていて、詩夕たちが眠っている。

 あと、大きなベッドが一つ置かれていて、そこにエイトたちがごっちゃに眠っていた。


 ………………どこ、ここ?


⦅……確認完了しました。EB同盟軍内に設置されている簡易テントの一つです⦆


 EB同盟軍………………はっ! そうだ!

 戦い! 戦いはどうなったの?

 邪神を封印した事までは思い出したけど、EB同盟の方、全体の戦いは?


⦅そちらも確認は終わっており、既に勝敗は決しています。EB同盟軍側の勝利です⦆


 勝利……という事は、勝ったって事だよね?


⦅はい。まぎれもない勝利です。おそらくですが、なんらかの影響を邪神から受けていたのでしょう。邪神が封印されると同時に逃走を行う魔物が続出し、軍としての体裁を失いました。それが勝利の決定的な要因です⦆


 そっか……あれ? という事は、もう移動しちゃった?

 大魔王城前……邪神を封印したところから、もう運ばれちゃった?


⦅いえ、事態の収拾が終わる頃には既に夜であったため、移動はしていません。ここは、収束した戦場内に設置されたテントの一つです⦆


 まぁ、夜の移動は危険だしね。

 魔物が逃げたからといって、それで安全という訳じゃない。

 隙を見せれば襲ってくるだろうし。


 でも、それなら好都合だ。

 夜なら目撃者も少なくて済むし。

 今の内に邪神を封印した場所に向かおう。


 そう判断して、ベッドから下りる。

 全員疲れているだろうし、誰も起こさないようにそ~っと――。


⦅あっ⦆


 あ? 何が? と思った時、足が何かに引っかかったように前に出なくなり、勢いそのままに倒れる。


「ぶっ!」


 顔面強打して、変な声が漏れてしまった。


「……いたた」


 でも、一体何が? と少しだけ身を起こして視線を引っかかった方の足に向ければ……足に縄がかけられていて、ベッドの足に結び付いていた。

 ……えっと、これは?


「必ず引っかかると思いました。ご主人様」


 頭上からそんな声が聞こえる。

 視線を上げれば、そこにはやっぱりエイトが居た。

 自慢げな表情を浮かべて。


「ご主人様の行動を読む事など、エイトにとっては朝飯前。まぁ、助言はいただきましたが」


 えっへん、とエイトが胸を張る。

 助言って……魔王マリエムかな。


「……本当に引っかかるなんて……明道、鈍ったの? それとも、疲れているから?」


 別の方向から声がかかる。

 視線を向ければ、苦笑を浮かべている詩夕だった。

 というより、全員起きていた。


「いや、なんでみんな起きてんの?」

「抜け駆け防止です」

「封印で終わりじゃないでしょ? 明道には何かしらの考えがあるようだったし、それを手伝えないかと思ってね」


 エイトと詩夕が代表してそう言い、他のみんなも頷く。


「……いや、俺は何もしないよ。でも、封印で終わりじゃないのは確か。これから倒されるのを見に行く、と言った感じかな」


 俺の返答に、全員が揃って首を傾げる。

 まぁ、言葉で説明するのもね。

 見てもらった方が早いだろうし。


 起こしてもらい、縄を解いてもらってから、みんなで封印場所に向かう。

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