場合によっては正反対の意味になるよね
大人エイトとグロリアさんが邪神とやり合い始めるが、邪神の方が優勢だった。
グロリアさんは前衛も出来るが、そこはやはり本職ではないというか、後衛の方がメインなのは間違いない。
それに、もしグロリアさんが前衛に出てやられてしまった場合、もう邪神と戦える者がこの場にエイトしか居なくなる。
ロイルさんは手が離せない。
もしこちらに来た場合、満足に動けないアドルさんたちが周囲の魔物や人形たちに襲われてしまうからだ。
なので、大人エイトとグロリアさんは、前衛が居ない形でやり合う事しか出来なくなる。
あとこの場というか、この戦場で邪神と対抗出来そうなのは、神様たちだろうけど……正直現れないのが正解だ。
神様たちの心情としては来たいだろうけど、来て困るのはこちら――EB同盟の方だ。
何しろ、未だ魔物たち――大魔王軍の魔物との戦闘は継続中。
元々ギリギリの戦力な上に、インジャオさんたちがこちらに来ているのだ。
更にギリギリになっているのは間違いない。
その上で神様たちまで来ると、一気に押し込まれる可能性が高く、それで神様たちがやられてしまった場合、恩恵の影響が計り知れない。
だから、来ないのが正解だと、俺は思う。
なので、現状の戦力だけで邪神をどうにかしないといけないが――大人エイトとグロリアさんは、邪神との距離を保ちながら攻勢を行っているが、邪神は余裕があると見せるためか、あえて一気に距離を詰めずに、悠然と歩きながら二人から放たれる魔法と矢を相殺していく。
いや、多分、邪神も疲労を明確に感じているのだ。
激しい動きによる大きな消費を避けているのかもしれない。
何しろ、もしもの話として、俺たちをやったとしても、邪神はそれで終わりではないのだ。
もし俺たちがやられれば、おそらく神様たちが現状を無視して突っ込んでくるだろう。
そうなっても直ぐ対応出来るように、今の内から回復と温存を行っているのだ。
つまりそれは、現状からの判断で、邪神が勝利を確信した、ともいえる。
……そうは、させない。
インジャオさんたちの奮闘で、俺も少しは回復した。
そう長くは動けないだろうけど、それでも問題ない。
疲れているのは、邪神の方も同じ。
気付いているかどうかはわからないが、邪神は既に口呼吸をしている。
相当疲労が溜まっていて、あと一押しといった感じだ。
チラリと、大魔王城の最上を見る。
まだ、詩夕たちは現れない。
封印するつもりなのは伝わっているだろうから、そのための回復がまだ終わっていないのだ。
姿を見せれば、封印出来るくらい回復したって合図だと思う。
それか、ドラーグさんが運んでくるだろう。
それもあと少し、だと思うんだけど、どうかな?
⦅経過時間から考えれば、マスターの予測で間違いはありません。私の予測でも、もう少しであると保証します⦆
(つまり、あと少しだけ邪神を押さえつける事が出来れば、封印準備が完了します)
⦅マスターは私に尋ねたのです⦆
(先輩の出番は私の出番。私の出番は私の出番です)
⦅邪神の前に、あなたを封じてあげましょう。永眠という名の封印を施してあげます⦆
(では、私は先輩が仲良くしてくれるようになる祝福を与えましょう)
⦅呪縛の間違いでは?⦆
俺は呪縛と思わないけど、セミナスさんにとってはそうなのかもしれない。
いや俺としても仲良くはして欲しいけどね。
でも、それはあと。
大きく深呼吸して、立ち上がる。
体の調子を確認するように軽く動き……大丈夫だと確信を得た。
動けるようになるまで回復したけど、ここから先はもう気力の問題。
意識したら動けなくなるように、集中を切らしたら終わりだという事だ。
あとは、その状態がどれだけもつか。
詩夕たちが回復するまで……なんとしても持たせないといけない。
そのためには、俺だけじゃ駄目だ。
セミナスさんと大魔王ララの協力が――遠隔ASの補佐が絶対に必要。
⦅お任せを⦆
(お任せを)
⦅マスターは私に言ったのですが?⦆
(先輩。それは幻聴では? それとも、そういうお歳)
⦅私の方が若いと、わからせたはずですが?⦆
……ここだけは本当に、邪神との戦い以上にバチバチなんじゃないかと思ってしまう。
でも、やる時はやるとわかっているので、俺は安心して歩を進める。
動けると実感出来るように歩み出し、ゆっくりとしたペースから速度を上げていく。
それに、援護に関しては大人エイトだけじゃなく、グロリアさんも居る。
どこにも問題はない。
俺のASを起動して、小振りな丸盾を選択。
大き過ぎると逆に邪魔だし、そもそも邪神の攻撃を受ける前提ではない。
まともに受けても耐えられず、衝撃で吹き飛ぶだけだ。
なので、俺のASに関しては受け流す前提。
基本は回避である。
攻撃に関しては遠隔ASに頼るしかない。
セミナスさんに任せれば、最も効率的に動かすのは確か。
……大魔王ララも出来そうだけど、セミナスさんがそれを許すかどうかは、別問題。
同じ目的の下、協力してくれる事を切に願う。
そうして思考している内に、邪神の下まで辿り着く。
大人エイトとグロリアさんは俺の動き出しから見えていたので、もう援護の方に行動を切り替えている。
邪神は、俺が来る事がわかっていたかのように笑みを浮かべて迎え撃つ。
なんでもないように俺に放たれる邪神の拳は、先ほど相対していた時よりも鋭くなった気がする。
なんというか、勝利が見えて余裕が出来たからこそ、余分な力が抜けた感じ。
体を大きくのけ反って、ギリッギリでかわす。
邪神のそのまま追撃してこようとしたが、大人エイトとグロリアさんの援護によって、その子行動は阻害された。
助かります。
「大人しくしていれば、楽に殺してやったモノを。まだ動き足りないか?」
「そういう事は、俺が動けなくなるくらい痛めつけてから言うんだな!」
「なら、そうしよう」
邪神の攻撃速度がアップ。
……いや、今のは言葉のあやというか、疲れているんだし、もう少し遅くしても良いんじゃない?
好都合だけどね。
こっちにとっては好都合だけど……きっつい。
でも、邪神の更なる消耗と、封印開始までの時間は稼いでみせる。




