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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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それでも諦めない時はある

 邪神も疲労は感じているだろうけど、それでも笑みを浮かべる。

 勝ち誇ったような笑みだ。


「さて、二人脱落したが、まだ続けるつもりか? 勝ち目のない戦いを」


 邪神は俺たちを順に見ながら、そう言う。

 もちろん、実際にやり合ったのだから、力の差は感じている。

 それでも、諦めるような人は居ない。


 大人エイト、インジャオさん、グロリアさん、シュラさんは、やる気は失っていないと闘気を前面に出す。

 ロイルさんも前に出ようとするが、そうすると今はまともに動けないアドルさんたちが周囲の魔物たちに襲われるので動けない。


 アドルさんたちの安全を確保してくれるだけで助かる。

 それに、俺の呼吸も落ち着いてきた。

 もう少しで……動ける。


 インジャオさんたちが意志を示すように臨戦態勢に入り……インジャオさんとシュラさんが邪神に向けて一斉に駆け出す。

 大人エイトとグロリアさんは後方からの援護を始める。


「やれやれ、諦めの知らない者たちだ。もしかすると、我が疲労しているので、どうにかなると錯覚させてしまったか。だが、残念ながら、我が疲労していようが関係ない。現実というモノを教えてやろう」


 前衛に位置するのはインジャオさんとシュラさん。

 後衛に位置するのは大人エイトとグロリアさん。

 バランスの良い配置だと思うけど、それでも……カノートさんとウルトランさんの抜けた穴は大きい。


 確かに邪神の疲労は更に大きくなっている。

 でも、ここから更に追い詰めようと思っても、それを行うには単純に力が足りない。人手が足りない。


 それはインジャオさんとシュラさんもわかっているだろうけど、足は決してとめない。


「教えられるものなら」

「教えてみろ!」


 一気に迫り、攻勢に移る――前に、邪神が先に仕掛ける。

 逆に距離を縮め、超至近距離で二人とやり合う。


 そうした理由は直ぐにわかった。

 やり合っている距離が、二人と近過ぎるのだ。

 今の距離だと、大人エイトの魔法が誤爆、グロリアさんの矢が誤射する可能性がある。


 いや、大人エイトとグロリアさんの狙いは百発百中レベルの的確さだが、問題は邪神の方だ。

 間違いなく、それを利用してくる。

 それがわかっているからこそ、大人エイトとグロリアさんは迂闊に手が出せない。


 インジャオさんとシュラさんもそれはわかっていて、どうにか対応したいだろうけど、邪神の猛攻の前にそうする余裕はなかった。


「ほらほら、もっと速度を上げていくぞ。どこまで付いて来られるか見せてくれ。付いて来られなくなった時点で脱落だ」


 その様子を明確にするのであれば、インジャオさんが大剣を振る間とシュラさんが棍棒を振る間に、それぞれ邪神が二度攻撃している。

 一人に対して、単純に攻撃速度が二倍だ。


「くっ」

「ちっ」


 インジャオさんとシュラさんから苦悶の声が漏れる。

 邪神の攻撃速度は少しずつ上がっていっていて、次第に攻撃を行えなくなったからだ。

 反撃しようと思えば出来るだろうが、おそらくしようとする前に一気に押し切られて潰されてしまう可能性がある。


 二人は次第に防戦一方になっていき……先に動いたのはシュラさん。

 攻撃を食らおうが関係ないと言わんばかりに、邪神からの攻撃を耐えながら棍棒を振るう。

 玉砕覚悟のような行動で振られる棍棒は、シュラさんの全力が込められている。


 タイミングがよかったのか悪かったのか、邪神が攻撃中だった事もあって防御に回るのが遅れ、振るわれた棍棒が邪神の横っ腹に命中。

 メキメキと骨が折れる音がこちらにまで聞こえてきそうだが、邪神は堪えるようにその場に留まって受けとめた。


 邪神の足が少し陥没しているので、相当力を込めたというのが見てわかる。


「誇って良いぞ。これまで食らった中で、最も威力の高い攻撃であった」


 そう言って、邪神がシュラさんに乱打を浴びせた。

 シュラさんは攻撃されるとわかっていたかのように、歯を食いしばって耐える。

 なら倒すまで続けると、邪神の乱打が更に激しくなった時、インジャオさんが力を溜めるように大剣を構えた。


 その動きに合わせて、大人エイトとグロリアさんも動く。

 多分、シュラさんはインジャオさんとグロリアさんに必殺の攻撃をさせるために、あえて先に動いたんだと思う。


「『この弓は決意であり この矢は意志であり この一射は死力である 一射必殺』」


 グロリアさんが武技で放った矢は、光り輝く粒子をまき散らしながら邪神へ。

 その矢を隠して援護するように大人エイトが魔法を乱発して中に紛れ込ませる。

 魔法と矢の動きに合わせて、インジャオさんも武技を放つ。


「『命を絶ち 魂を裂き 宿命を断つ 絶裂断』」


 光り輝く大剣が更に輝き、インジャオさんが邪神の胴体を斬るように横薙ぎの一閃を払う。

 先に到達したのはグロリアさんの矢。

 命中すると思った瞬間、邪神はシュラさんへの乱打をやめ、軌跡が見えているように片手を矢の射線上に。


 魔法は空いている方の手で自分に当たるモノはすべて払い、飛来する矢の先端が邪神の手を貫通するが、完全に通り抜ける事は出来なかった。

 途中でとまり、邪神はそのままその手を握って矢を砕く。

 そのままもう片方の手で、シュラさんに向けてとどめとばかりに爆発魔法を放つ。


 シュラさんが吹き飛んで行く中、邪神に迫るインジャオさんの大剣。

 先ほどまでの対処で、邪神は僅かながら対応が遅れる。

 インジャオさんの大剣が邪神の腹部を少し裂く。


 ただ、それ以上は無理だった。

 邪神が両手で挟み込むように押さえ付けたのだ。

 インジャオさんがそのまま力を込めるが、それ以上進む事はなかった。


 大剣を押さえながら、邪神は口を開く。


「せめて、貴様がそこの女並の力があったなら、あるいは押し切っていたかもしれないな」


 邪神がシュラさんの事を言葉で指し示し、そのまま大剣を押し返して腹部から押し抜くと同時に膝蹴りで光り輝く大剣の剣身を叩き折る。

 大剣が砕けた事でバランスを崩したインジャオさんに、邪神が更に追撃。


 邪神からシュラさんと同威力の爆発魔法が放たれ、インジャオさんも吹き飛んで行く。

 シュラさんは吹き飛んだ先で起き上がっていない。

 胸は上下しているので生きてはいるようだが、受けたダメージが大き過ぎて動けないようだ。


 インジャオさんは折れた大剣を支えに起き上がろうとするが、残った剣身がフッと消えてそのまま倒れる。

 ダメージもあるだろうが、剣身が消えたという事は、それだけ消耗してしまったという感じだった。


 邪神は貫かれた手と裂かれた腹部を癒しながら、グロリアさんに視線を向ける。


「ふぅ……あとは、お前たちだけだな」


 大人エイトとグロリアさんは答えない。

 ただ、戦意は失っていないと、大人エイトは手のひらを邪神に向けてかざし、グロリアさんは弓矢を構える。

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[気になる点] シュラさんが「シュラsなん」になってます
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