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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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進んだり下がったり、下がったり進んだり

 四方から攻めたインジャオさん、グロリアさん、カノートさん、シュラさんに向けて、邪神が同時爆発を起こす。

 四人はその爆発をまともに食らったように見えた。


 立ち昇る爆発煙の中、グロリアさんとカノートさんが下がるようにして飛び出してくる。

 パッ見、軽傷ではあるけど、二人がそれを気にした様子はない。

 ただ、どちらも面倒そうなというか、悔しそうな表情を浮かべている。

 多分、決めきれなかったとか、そういう事を考えていそうだ。


 対するように、インジャオさんとシュラさんは、爆発煙の中から前へ飛び出してきた。

 パッ見、どちらも無傷。

 インジャオさんは全身鎧だから平気かもしれないけど、シュラさんは生身だよね?

 力が強いだけじゃなく、体も頑丈なのかな。


 インジャオさんとシュラさんは、そのまま邪神に襲いかかる。


「今ので足りなかったか? なら、おかわりだ」


 邪神が迫るインジャオさんとシュラさんに向けて小爆発を何度も起こす。

 二人はまともに食らい続けながらも邪神に向けて一直線に進む。


「このぐらい、なんて事はないですね。頑丈な骨なので」

「はははっ! こんな爆発で私を殺せると思うなよ!」


 インジャオさんは光り輝く大剣を、シュラさんは超硬質棍棒を振るう。


「頑丈だな。壊したくなる」


 インジャオさんとシュラさんは邪神を中心にした円を描くような動きで攻撃を放っていくが、それでも中々まともに当たらない。

 俺からすれば避けるだけで精一杯であろう二人からの攻撃を、邪神は受けとめたりかわしたりしつつ、正確なタイミングでカウンターを放っていく。


 ダメージは確実に負っていっているだろうが、二人は動きをまったく緩めない。

 引けば終わる、とでもいうように。

 いや、正直、邪神に対して弱気を見せたら一気に持っていかれる感じはある。

 あとが続くと信じて、強気でいくのが正解かもしれない。


「さて、いつまで持つかな?」


 二人に対して邪神の攻勢が強くなった瞬間、邪神の死角からカノートさんが突っ込み、最速と思えるような速度で槍を突く。

 邪神はそれを知覚していたかどうかはわからない。

 けれど、体が反射的に動いたという感じで、カノートさんの槍を飛び上がって回避しようとする。


 が、その動きが途中で停止。

 踏まれていたウルトランさんが、邪神の右足を掴んでいた。


「おいおい、勝手にどこかに行こうとするなよ」

「獣が!」


 動きがとまった事で、吸い寄せられるようにカノートさんの槍が邪神の右足を貫く。

 邪神は一瞬だけ不愉快そうな表情を浮かべると、手を逃してカノートの胸倉を掴んで引き寄せる。


「我の体に傷を付けてくれた礼だ。拍手の代わりに受け取ってもらおう」


 邪神がカノートさんに空いている方の手を押し付けると、同時に溜め込んだモノが弾けるように爆発が起こる。

 しかも、一度だけではなく、何度も連続で。

 それこそ、まるで拍手でもするかのように。


 カノートさんはそれでも槍を手放さずに耐えてもう一撃を行おうとするが、連続爆発でその体は少しずつ後退し、最後は邪神の右足から抜けた槍ごと吹き飛ばされる。

 ゴロゴロと地を転がったあと、カノートさんはピクリとも動かない。


 そこに、周囲に居た魔物たちが襲いかかる。


「面倒をかけないで欲しいわね」


 そう呟いて、グロリアさんがカノートさんを助けるために矢を射り続ける。

 というか、カノートさん死んでないよね?


「回収を!」


 グロリアさんの合図に応えてか、アドルさんたちに促されて、ロイルさんがカノートさんのところへ。

 そこで、カノートさんが槍を支えにして起き上がろうとするが、べしゃりと倒れる。


 生きているようでホッと安堵するが、もう戦闘参加は無理だ。

 邪神の方も、行動をとめていない。


「貴様もいつまで我の足を掴んでいる。それが畏れ多い事だと理解出来るように、我がしっかりと躾を行ってやろう」


 ウルトランさんの掴んでいる腕目掛けて、邪神の左足が振り下ろされ、バギリッ! とハッキリと折れる音が周囲に響く。


「――っ!」


 ウルトランさんは声にならない声を上げるが、それでも邪神の足を離さなかった。

 何故なら――。


「斬り払う!」

「叩き殺す!」


 インジャオさんとシュラさんがここぞとばかりに決めにきたからだ。

 もちろん、二人だけじゃない。

 カノートさんをロイルさんに任せたグロリアさんが、邪神に近付きながら連続で射り続ける。


 先に届いたのはグロリアさんの射った矢。

 邪神はその矢を器用に受け流すだけではなく、その向かう先をインジャオさんとシュラさんへ。

 インジャオさんとシュラさんは矢を避けながら大剣と棍棒を振るうが、不十分な体勢であり、タイミングもずらされる。


 邪神は矢だけでなく大剣と棍棒も容易に避け――。


「躾の時間の邪魔をしないでもらおうか」


 邪神がインジャオさんとシュラさんを殴り飛ばす。

 大剣と棍棒を盾のように間に挟んでいたのでダメージ自体はなさそうだが、それでも衝撃で飛ばされ、邪神との距離が出来てしまう。


 少し遅れてグロリアさんが邪神の前へ。

 邪神が掴まれている足を振り上げてウルトランを引っ張り上げ、グロリアさんの視界を遮るように前へ持っていく。


「さぁ、いつまでもつかな?」

「――ぐっ!」


 ウルトランさんから奥歯を噛み締めたようなくぐもった声が漏れる。

 というのも、こちらにまで衝撃が伝わってくるような重い拳が、瞬間的に何発も叩き込まれたからだ。


 グロリアさんが回り込もうとするが、その前に邪神を掴んでいるウルトランさんの手が離れてしまい、ウルトランさんはグロリアさんを巻き込んで吹き飛んで行ってしまう。

 ただ、地面を転がるような事はなかった。

 地面を削りながら、グロリアさんがうしろで踏ん張ってウルトランさんを押さえていたからだ。


 だが、それでも耐えられずに下がってしまい、こちらも邪神と距離が出来てしまう。

 その先で、ウルトランは血を吐き出して倒れた。


「ぐ、ぐぐぐ……」


 ウルトランさんも立ち上がろうとするが、立ち上がれずにいる。

 見た目以上のダメージを受けたようだ。

 グロリアさんは平気そうだが、思いのほか衝撃が強かったのか、腕をプラプラさせていた。


 その間に、邪神は貫かれた右足を回復魔法で治療する。

 それでも回復出来ないモノはあった。

 邪神の肩が少しだけ動き、呼吸も乱れ……確かな疲労の色が見え始めている。

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