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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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思い出せばそうだよねって時がある

 邪神を蹴り飛ばして、ウルトランさんが周囲に居るインジャオさんたちに声をかける。


「で、あれは蹴り飛ばしてよかったのか?」


 わかってなかったんかい!

 と、誰もが思っただろうが、そこは全員グッと我慢した。

 助けられたというか、邪神にどれだけのダメージを与えられているかわからないが、少なくとも、こちらは一息吐ける間が出来たのだから。


 そこで、シュラさんが口を開く。


「そう言う事なら、私もアレに襲いかかってよかった……のかな? みんなが総出で戦っていたから、交ざるならここだと飛び出してきたんだけど」


 いや、お前もかい! と思っただろうが、グッと我慢。


⦅助けられたのは事実ですが、何やら釈然としません⦆

(これは……戸惑い? でしょうか。初めての感情です)


 俺の中でも二人がモヤモヤしている。


「……まぁ、何はともあれ、助かりました」

「そうだね。予想以上……としか言えない相手だから」


 インジャオさんとカノートさんが、そう場を纏める。

 大人エイトとグロリアさんは、我関せず……そこのとは知り合いでもなんでもない、赤の他人ですよ、という感じの態度だ。

 いや、でも蹴り飛ばされた邪神に向けて魔法の準備と弓矢を構えているので、油断なくいつでも対処出来るように……という感じを装っているのかもしれない。


「つまり、敵で良いんだな。しかし、お前たち二人……いや、うしろのを合わせても倒し切れない相手か。なら、我が倒せば自慢出来るな」


 ウルトランさんが、むんっ! と自身の筋肉を強調させる。

 でも、単純に力だけなら、シュラさんだと思うな。


「まっ、強ければなんだって構わない。漸く、この棍棒の振るい甲斐のある相手が現れたって事だし」


 シュラさんが超硬質棍棒でパシパシ手を叩きながらそう言う。

 魔王、大魔王、邪神レベルじゃないと、甲斐がないの?


⦅否定はしません⦆

(少なくとも、私はそのまま受けたくはありません)


 大魔王であるララは嫌そうだった。

 シュラさんは、そのまま全員を見て言う。


「とりあえず、誰が倒しても恨みっこなし、という事で」


 その言葉には誰も答えない。

 ただ、その表情は物語っている。

 ――まっ、倒すのは自分だけど、と。


 インジャオさんもそういう雰囲気だし、グロリアさんもどこか張り切っているように見える。

 大人エイトは……特に変わっていない。

 いや、これが通常だし、変に力む姿を見せられても、それはそれで変だな。


「……はっ! ご主人様から視線を感じる。魅惑のロリボディも良いが、大人の姿もこれはこれで良いのでは? と獣欲を……え? 違う? まったく、あなたはわかっていませんね。ご主事様は……」


 多分、大人エイトの中で、魔王マリエムが否定したんだろうな。

 もし残るのなら、魔王マリエムにはそのままエイトの後付ストッ良心パーとして活躍して欲しいと思う。


 それにしても、これだけ強い人たちが集まれば、どうにか出来ると普通は思うのだが……やはり、それでもと言うべきか、邪神に対してそう簡単にはいかないという思いが沸く。


 実際、邪神は蹴り飛ばされた先で、なんでもないように立ち上がった。

 何かあったか? と言わんばかりに、邪神は手を首に当てて左右に傾ける。


「随分と調子に乗った事を言うな。そんなに嬉しかったか? マグレとはいえ、我に一撃を与えられた事が」


 見た感じ、ウルトランさんに蹴られた事によるダメージは見当たらない。

 我慢している様子も見られない……けど、ウルトランさんはその事を気にした様子は見えなかった。


 寧ろ、獰猛な笑みを浮かべて口を開く。


「マグレかどうかは、これからわかる事だ。嬉しいかどうかは微妙だな。あの程度で蹴り飛ばされるというのは、少々期待外れとしか言えないな」


 煽ってるなぁ……。

 対する邪神は、愉快そうに笑みを浮かべる。


「なるほど。まさか、たった一撃を食らっただけでここまで言われるとはな。だが、少々勘違いをしている部分は正さねばな」

「勘違い? 何を勘違いしているというのだ?」

「そちらの期待には容易に応えられるが、寧ろ、そちらが期待外れにならないか、だ」


 言い切ると同時に、邪神の姿が瞬間的にウルトランさんの前に。

 そのままウルトランさんの腹部に一発入れる。

 ウルトランさんは反応していたが、防御が間に合わずにそのまま殴り飛ばされた。


 邪神はそのまま周囲に居るインジャオさんたちにも襲いかかる。

 インジャオさんの大剣、カノートさんの槍、シュラさんの超硬質棍棒が同時に振られるが、邪神はそのすべてをかわしながら反撃を行う。


 瞬間的な出来事であったために誰も防御は間に合わず、インジャオさんたちも殴り、蹴り飛ばされてしまう。


「油断し過ぎではないかしら? 獣としての感性は失ってしまった?」


 グロリアさんからウルトランさんに向けて毒舌が飛ぶ。

 そのグロリアさんは、このままでは不味いと判断したのか、ウルトランさんが殴り飛ばされるのと同時に邪神との距離を詰めていて、近距離でやり合い始める。


「うしろで大人しく射っていた方がよかったのではないか?」

「それだとあなたを打てないでしょ?」


 弓矢も器用に使って、グロリアさんが邪神と近距離でバチバチにやり合う。

 邪神の鋭い攻撃すら、グロリアさんは華麗な体捌きで回避しつつ、そのまま流れるような体の動きで蹴りを放ったり、零距離射撃をしたりしている。


 近距離戦も出来るのか、と思ったのだが、そういえば、初めて会った時もグロリアさんはシャインさんとやり合っていた。

 あれが常日頃だったのなら……そりゃ、近距離戦も出来るようになってもおかしくない。


「はははははっ! そういう事なら、こちらも期待に応えねばな! 『その牙は邪を貫き その爪は悪を裂き その体は神を宿す 神獣廻転』」


 ウルトランさんが殴り飛ばされた先で立ち上がったかと思えば、その姿が変化する。

 神々しさを表すような純白の体毛となり、発する雰囲気も圧力は増すのだが、どこか温かいというか、安心出来る感じになった。


 ウルトランさんが現れた時よりも速く邪神の下まで一気に駆け寄り、グロリアさんもその動きに合わせて邪神をウルトランさんの前へ差し出すように押し出した。

 そのタイミングに合わせて、ウルトランさんの爪が一気に伸びて邪神を裂く。

 邪神は腕で防いだが、ウルトランさんの爪は纏っている魔力を裂き、防いだ腕に爪痕を刻む。


「神獣としての力を宿したか」


 ウルトランさんが追撃を行おうとするが、その前に邪神がウルトランさんの体を掴み、無理矢理引き寄せてそのまま地上に叩き付けた。


「まぁ、神獣だろうが獣は獣。しっかりとした躾けが必要だな」


 そう言って邪神はウルトランさんを踏み付ける。

 その衝撃の強さを物語るようにウルトランさんの体が陥没したように沈み込んで、地上に大きなヒビが走った。


 そこに、インジャオさん、グロリアさん、カノートさん、シュラさんが四方から同時攻撃を振るうが、邪神はそのすべてを回避する。


「ついでに貴様たちもな」


 邪神が魔法で四方に爆発を起こした。

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