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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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わかる事だと言いたくなるよね

 グロリアさんとカノートさんの姿を見た時、間に合った……と思った。


「ここに居ると合図のような火球が上がったから来てみたけど、本当に合図だったようね」

「良くない雰囲気を発している彼が敵、かな?」


 グロリアさんとカノートさんが俺のところに来て、そう言ってくる。


「はい。あれが諸悪の根源です……が、本当に強く」

「みたいだね」


 カノートさんが邪神と戦っているインジャオさん、それとアドルさんたちの方を一瞥して納得する。

 そのまま、二人は俺の傍で準備運動のような動きを始めた。

 そうする必要がある、という風に。


「それで、彼女は味方?」


 そのまま大人エイトについて尋ねてきた。


「色々あって、エイトが成長した姿です」

「は? ……はははっ! 本当に色々あったんだね。……ここにツネミズたちが居ないのは、もう?」

「いえ、誰も死んでいません。ただ、限界を超えてまで動いた結果、しばらく動けないため、今は上で体力の回復を図っています」

「そう……それだけの相手って事ね、あれは」


 カノートさんがどこかホッとしているように見えたのは、きっと見間違いじゃない。

 詩夕たちが無事だとわかったからだろう。

 グロリアさんもその流れで尋ねてくる。


「それなら、私も一つ。イツキさまが無事なのはわかりましたが、母は?」

「結構なダメージを受けてしまっているけど、無事だよ。詩夕たちと一緒に休んでもらってる」

「そうですか。無事ならそれで……ですが、あれは母に対してそれだけの事が出来る相手という事ですか……」


 グロリアさんとカノートさんの視線が、邪神に向けられる。

 その表情は、どちらも笑みだった。


「それは、倒し甲斐のある相手ですね」

「倒したら、さぞかし自慢出来るね、これは」


 グロリアさんが弓矢を構え、カノートさんが槍を構えながら駆け出す。

 カノートさんの動きに合わせて、大人エイトが魔法を放つ。


「まだ出てくるのか。楽しませてくれる」


 そう言いながら、邪神は少し煩わしそうだった。

 というのも、大人エイトの魔法は同じように魔法で相殺していくが、カノートさんの槍はそうもいかない。


「なるほど。こいつもそれなりという訳か」

「それなり? いつまでそう言えるか楽しみですね」


 カノートさんの連続突きを、邪神が魔力を纏った手で払うようにかわしていくが、そこにインジャオさんの大剣が加わり、邪神は大きく避けていく。

 インジャオさんの光り輝く大剣をかなり意識しているのがわかる。


 多分、纏った魔力ごと体を斬り裂けるだけの切れ味が、あの大剣にはあるんだろう。

 カノートさんも即座にその事に気付き、行動を変える。


「あぁ、そういう相手ですか。では、私もそういう対応をさせていただきます。『その払いは風塵の如く その突きは雷鳴の如く その槍は神の如く 風雷神槍』」


 カノートさんが詠唱を唱え終わると同時に、持っていた槍が風を纏い、雷を発し始める。

 もしかして、カノートさんが言っていた特別な槍って、今持っているヤツの事だろうか。


「受けとめない事をオススメします」


 カノートさんがわざわざそう言って、槍を突く。

 瞬きをした訳ではないのに、目に映ったのは結果だけだった。

 突いたと思った次の瞬間には、槍は邪神の顔の横にあり、邪神の肩から鮮血が舞う。


 多分、邪神は避けたんだろうけど、かすった、という感じかな?


⦅その通りです⦆

(良い突きでした)


 俺が見逃しても、ここに居る二人は見逃さない。


 邪神が笑みを浮かべ、纏っている魔力の濃度が上昇する。

 それに合わせたかのように、肩の傷が瞬時に治った。


「……訂正しよう。我の体に傷を付けた事を誉れとして、死んでいけ」


 邪神が直ぐさま攻勢に移る。

 インジャオさんだけではなく、カノートさんを交えても対等に戦い始めた。


 ……というか、え? あれ? 瞬時に傷が治ったけど、「神器」による回復遅延効果が切れた?


⦅いえ、纏う魔力量を上げた事で身体を活性化し、無理矢理治したのでしょう⦆


 そんな事まで出来るのか。


(ですが、これは良い傾向です。確かにあの槍の鋭さは神槍の名に相応しいですが、万全の状態の邪神であれば、それでも通じてはいません。かすり傷であったとはいえ、傷は傷。その分の消耗はありますし、魔力量を増やしたという事も魔力の枯渇に繋がります)


 つまり、もし封印するのなら、その基準は――。


⦅魔力が枯渇した時です⦆

(魔力を使い切ってしまえば可能かと)

⦅……先ほどもそうですが、私がマスターの疑問に答えているのですが?⦆

(わかる者が答えれば良いだけでは?)

⦅それだと、私にわからない事がある、という風に聞こえますが?⦆

(あるのですか? わからない事が?)

⦅ありませんが!⦆


 邪神との戦い以上にバチバチしないで欲しいものだ。

 それにしても、ここでカノートさんが来てくれたのは大きい。

 何より、邪神に休む暇がなくなったという事だ。


 ただ、纏う魔力量が多くなったからか、邪神の動きが更に激しくなった。

 インジャオさんとカノートさんの二人がかりでも防戦一方に追い込まれてしまう。

 大人エイトが援護の魔法を放つが、状況は好転しない。


 このままだと先に追い込まれるのはインジャオさんとカノートさんの方だが、そうはならない。

 邪神の放たれる拳をインジャオさんとカノートさんはそれぞれ武器を盾のようにして防ぐが、その衝撃は強く、体が少し浮く。

 そこを狙って、邪神がしゃがみ込んで回し蹴る。


 二人は足を払われ転倒し、邪神がそこを狙う。


「さぁ、これで終わ、ちっ!」


 襲いかかろうとして、飛び退く。

 邪神が居た場所に、ストトトト……と、次々に矢が飛来して地に刺さっていく。

 ただし、それはどれもが普通の矢ではない。

 火で形成されていたり、氷で出来ていたり、風を発生させていたりと、様々な種類が存在していた。


 インジャオさんとカノートさんが立ち上がる中、邪神は矢が飛来した方に視線を向ける。


「随分と器用な真似をする。通常矢ではなく、魔力矢を選択するあたりも状況判断は中々、といったところか。……ただそこに居るだけなら見逃してやってもよかったが、こうして手を出してきた以上、殺してあげよう」

「やれるものなら、やってみせて欲しいわね」


 弓矢を構えたグロリアさんが、笑みを浮かべて答える。

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