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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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やってみれば、案外出来る事もある

 邪神が発している魔力がより禍々しくなったのは……これがどういう事かは考えなくてもわかる。

 要は、邪神もこれから決めに来る……俺たちを仕留めに来るという事だ。


 これまでとは違うという危機感が芽生え、グッと集中していく。


「さぁ、好きなだけ抵抗しろ。その方が、我も面白い」


 邪神の溢れ出ている魔力が、腕と脚に巻き付いていく。

 グッと力を溜めるような姿勢を邪神が取ったかと思うと、瞬間的に邪神の姿が消える。

 いや、見えなかった。


「ちぃっ!」


 シャインさんの呟きが聞こえたのでそちらに視線を向けると、邪神の拳を両手で受けとめていた状態だった。

 今、動きが追えなかった?


⦅魔力を部分的に集中して纏う事で、一時的に強化しているのでしょう。ただ、その分、消耗も激しいでしょうが……それでも、こちらを殺れると判断したと思われます⦆

(元々の身体性能が飛躍的に向上していますので、見て判断ではなく、予測して動かないと危険かもしれません)

⦅また私の言葉を……⦆


 邪神の攻勢を、シャインさんが防戦一方で受けていく。

 シャインさんでも反撃の隙がなく、手が出せないほどの攻勢だった。


 というか、シャインさんが受けとめているから、かろうじて邪神の動きの結果が見えているけど、それがいざ自分に出来るかと考えると……ちょっと無理っぽい気がする。


⦅大丈夫です。いざ、その時になってみればマスターにも出来ます⦆

(最初から駄目だと思ってはいけません。いざやってみれば、案外出来る……という事もあります。やってみましょう)


 そう軽い感じで言われても。

 ほんと、こういう時は息が合うみたいだ。


 見ている訳にもいかないので、俺も駆け出す。

 俺の反応を見て、邪神がシャインさんだけではなく、こちらにも手を出してきた。


 元々防戦しか出来ない以上、受けていくが……きつい。

 シャインさんにも攻撃を放っているのに、それでも俺に攻撃を仕掛けてくる。

 その質は先ほどと比較にならない。


 威力、速度が先ほどまでとは段違いだ。

 かろうじて受けとめる事が出来ているのは、シャインさんにも攻撃しているからだろう。

 何より、邪神の攻撃を防ぐ事だけに全力を出さなければならず、シャインさんに向けられた攻撃を防いで、攻撃の機会を生み出す事が出来ない。


 邪神の猛攻で、俺とシャインさんは完全に防ぐ事しか出来なくなる。

 それに、ただ防いでいくだけで、こちらの消耗がかなり激しい。

 邪神よりも先に疲労し切ってしまうのは、こちらだと思う。


 ただ、こちらにはまだ大人エイトが居る。

 状況を咄嗟に判断して、大人エイトが魔法を連発。

 邪神の今の動きに即座に合わせての魔法は、さすがとしか言えない。


「上手く合わせてきたようだが、その分、威力が足りないな!」


 邪神が俺とシャインさんに攻撃を放ち続けつつ、大口を開けて、そこから光線を放つ。

 首を振り、その動きに合わせて光線も薙ぎ払うような軌跡を描いて、大人エイトの放った魔法をすべて撃ち払い、空中に大爆発が起こる。


 大人エイトが再度魔法を放とうとするが、その前に邪神が動く。

 邪神の蹴りが俺に向かって放たれ、ASでギリギリ受けとめるが、邪神はそれで俺を蹴り飛ばそうとせず、そのまま押すようにして俺の位置をずらしてから、思いっきり蹴り抜いた。


 衝撃で吹き飛ばされる。

 このままだとここから落ちるだけの威力だったが、途中で大人エイトに支えられてとまった。

 というより、大人エイトが居る方に蹴り飛ばしたっぽい。


 落とせたかもしれないのに、わざわざどうして? と思うが、狙いは直ぐにわかった。

 視線を向ければ、笑みを浮かべた邪神の拳がシャインさんの腹部にめり込んでいて、シャインさんが吐血している。


「ぐっ」

「まずはお前からだ」


 邪神はそのまま乱舞のようにシャインさんに何発も叩き込む。


「こ、のっ! 調子に乗るな! ただやられるとでも!」


 叩き込まれながらも、シャインさんは意地でもやり返すとアッパーカットのように拳を放ち、邪神の片腕にクリーンヒット。

 邪神の表情が一瞬だけ歪む。


「……よくやった、と褒めてやろう」


 邪神がシャインさんを蹴り飛ばす。

 シャインさんは落ちてなるものかと床に爪を立てるが、床を削りながら飛んでいき……どうにかこうにか落ちる前にとまり、ベシャリとその場に倒れる。


「ぐっ……うぅ……」


 シャインさんは起き上がろうとするが、起き上がれない。

 受けたダメージが大き過ぎて、動けないといった感じだ。


「今ので生きているとは、耐久力を読み誤ったか? しかし、しばらくは戦闘を行えまい。また一人、脱落だな」


 邪神がこちらを向く。

 あとはお前たちだけだと言いたそうだ。

 ただし、その片腕、シャインさんの拳が当たった方は、だらりと下げられていた。


「こちらが気になるようだな。死ぬ気の一撃というヤツだろう。いずれ回復はするが、しばらくは使い物にならない。お前たちからすれば、ある意味良い機会だな」


 確かに、邪神の片腕が使えない状況は良い機会だ。

 でも、その代償というか、こちらの戦力は一気に落ちた。

 どうにか上回っていた状況は……多分、もう作り出せないかもしれない。


⦅現状からの対策を模索します⦆

(まだ手は残されているはずです)


 だからこそ、思考をとめてはいけない。

 まだ何かしらの策は………………セミナスさん。今の内に確認しておきたいんだけど、邪神の封印って出来るの?


⦅可か不かでいえば、可能です。ただし、前回の時は、おそらく……と推測になりますが⦆

(いえ、推測するまでもありません。当事者である私が言えば良いだけの事。前回は竜との戦闘、勇者と賢者の力の強さだけではなく、私も内部から邪神の抵抗を抑えたため、封印出来ました)


 つまり、もしかすると封印は出来なかった可能性があったって事?


(いえ、当時の勇者と賢者の力であれば、封印自体は出来たでしょう。ですが、もっと封印されていた期間が短かったなど、その効力は実際よりも弱まっていた可能性は高いです)


 なるほど。


⦅勝手に私の出番を取らないでいただけますか?⦆

(お気になさらず。きっと、私はそういう星の下に生まれたのでしょう)

⦅死なす⦆


 はいはい、落ち着いて。

 という事は、封印は出来ない?


⦅現状ですと、対抗しても即破られる可能性が非常に高いです。邪神の強さもありますが、封印を施せる勇者たちの力が弱まっているのが特に問題です⦆


 ……つまり、封印しようと思うなら、詩夕たちの力が少しでも回復するように時間を稼ぎつつ、その間に邪神をもっと弱らせないといけないって事?


⦅はい⦆

(はい)


 ……そっか。

 ……まぁ、色々と仕方ないよね。

 多分、これが今取れる最善の道。


 うん。俺に考えがある。

 封印でいこう。

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