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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十四章 大魔王
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なんか急に変わる時があるよね

 魔王マリエムと共に準備を始める。

 まず手始めに、セミナスさんの指示で、床に魔法陣を描いていく。

 大魔王ララが提案して、セミナスさんがその方法を伝授、もしくは編み出したといったところだろうか。


 魔法陣は描くだけで良いらしい。

 実際に魔力を流すのは本番の時だけで良いそうなので、そこらに転がっている瓦礫を利用して、魔法陣を描くというか、削って描いていく。


 細かい部分が多いけど……頑張ろう。


⦅間違っています、マスター。そこはそうではなく……⦆


 ……頑張ろう。


 描く魔法陣は三つ。

 大体、人一人分が入る程度の大きさ。

 ……それなりに苦労するな、これ。


 でも、あまり時間をかける訳にはいかないので、頑張って削り描いていく。


(頑張ってください。応援しています)


 ありがとう。大魔王ララ。


⦅露骨な点数稼ぎです。なびかないように、マスター⦆

(純粋な気持ちですよ、先輩)

⦅私は騙されません⦆


 ……いや、普通に受け答えしただけだから。

 次の指示をお願いします。


 そうしている間に、魔王マリエムには大魔王ララの体を持ってきてもらう。

 チラリと視線を向ければ、魔王マリエムは無事に体を回収していたが、慈しむように抱き締めていた。


 ……まぁ、別れの時間は必要だよね。

 今の内に続きを。


 ……三つの魔法陣を削り描き、最後に二つの魔法陣を残る一つの魔法陣に繋げるような模様を描き……完成。


「手をとめたという事は、出来たのかしら?」


 いつの間にか傍に居た魔王マリエムに頷きを返す。


「そっちも……もう良いのか?」

「……構わない。確かにこれはララの体だが、意識はもうここには居ない。お前の中だ。それに、もうこのような状態なら、体に戻っても辛いだけだろうしね」


 相当酷い状態だからね。


(そうジロジロ見られるのは恥ずかしいですね。それとも、顔や胸辺りに、琴線に触れる部分がありましたか?)

⦅お答えください、マスター⦆


 そこでタッグを組み意味がわからない。

 というか、この二人が組むと相当危険じゃない?


⦅………………はっ⦆

(………………ふっ)


 あり得ない、みたいな反応だけど、そこで既に息が合っているんだよな。

 まぁ、そこを追及すると時間がかかるので、先に進める。


 二つの魔法陣に、大魔王ララの体と魔王マリエムを配置。

 その二つの魔法陣と繋がっている魔法陣に――。


「エイト! 来い!」


 邪神に向けて魔法を放ちつつ、エイトがこちらに来る、


「そこの魔法陣に! あとは魔力流せば良い!」

「よくわかりませんがわかりました」


 よくわからないって……そういえば、エイトにはちゃんと説明していなかったな。

 それでもやるのがエイトらしいと言えばらしいけど。


⦅マスターの指示だからでは?⦆

(それだけの絆が出来ているという事では?)


 ……ここで手は組まなくて良いと思う。

 ただ、エイトを呼んだ事で、余計な者まで呼び寄せてしまった。


「先ほどからそこで何をしている?」


 邪神がシャインさんを投げ飛ばし、こちらに迫って来る。

 エイトと入れ替わるように飛び出して前へ。

 邪神の前に立ち塞がる。


 チラリと視線を後方に向ければ、エイトが魔法陣の上に立って魔力を流すところだった。

 あとは邪魔をさせなければ大丈夫。


「そんなに気にする事か?」


 AS、遠隔ASを駆使して、邪神の行く手を遮る。


「こそこそとやられるのは煩わしいからな。それにお前が関わっているとなると、何が起こるかわかったモノではない」

「随分と俺の事を警戒しているんだな」

「そうする理由があるからな」

「理由? さっき言っていたヤツか?」


 邪神の拳をASで受けとめ、距離が近くなる。

 すると、邪神が俺にだけ聞こえるように呟く。


「離れる瞬間、僅かながら意識があった……いや、気にしていなかったが、今になって思い出したと言うべきか。確か、お前の中に入っていっただろう? 大魔王の意識が」


 一瞬、動揺で押し切られそうになるが踏ん張る。

 その反応で充分だったのだろう。

 邪神が笑みを浮かべる。


「つまり、この場において、お前だけが我がなんなのかを知っているのだろう?」

「……なんの事だか。何を言っている」

「隠さなくても良い。大方、お前の中に移動した大魔王の意識が教えたのだろう?」

「………………」

「公表しないのは、他の者を動揺させないためか?」


 邪神の拳を押し込んだ反動で後方に跳び、少しだけ距離を取った。

 悠然と構える邪神に対して、ASを構える。


「まっ、我としては正体が知られようが関係ないがな。だが、少なからず我の事を理解している大魔王に色々と手を出されるのは面倒だ。何かしらの対抗策を考え付いてもおかしくないからな」


 邪神から繰り出される攻撃をなんとか防いでいく。

 俺の中に大魔王ララが居る事がバレているのは……まぁ、想定内と言えば想定内。

 というより、わかっていて当然と言うべきか。


⦅ですが、これは私という存在を隠す、良い隠れ蓑です。やる事なす事、そのすべてを大魔王のせいにしましょう⦆

(……要らぬ事まで押し付けようとしていませんか?)

⦅まさか⦆

(………………)


 めっちゃ怪しんでいる気がする。

 でも、時間は稼げた。

 描いた魔法陣が起動を知らせるように輝き出す。


「アレは――」

「戦いの最中によそ見をするなどっ!」


 邪神が俺のうしろで輝き出した魔法陣に意識を向けた瞬間、邪神のうしろからシャインさんが現れて蹴り飛ばした。

 飛んで行く邪神だが、落ちはしないだろう。


 それでも更なる時間が稼げたと、魔法陣の様子を確認すれば、魔法陣の輝きに合わせて大魔王ララの体と魔王マリエムの体が輝き、光の粒子に。

 二つの光の粒子は、魔法陣を通じてエイトの下へ。


 セミナスさんや大魔王ララが俺の中に入ってきたように、エイトの中に吸収されていく。


「これは………………そういう事ですか」


 エイトから納得の呟きが聞こえると同時に、輝きが視界一杯に溢れ、思わず目を閉じてしまう。

 輝きは直ぐに治まり、開けた視界で確認すると……そこに見知ったエイトの姿はない。


 代わりに、黒髪長髪に、非常に整った顔立ちの美人女性が居た。

 グラマラスな体付きに、身に纏っているメイド服はクラシックタイプ。

 出来るメイド……メイド長? のような雰囲気がないでもない。


 その美人女性が自身の姿を確認するように見て……ビシッとポーズを決める。


「言うなれば……『対大魔王軍戦用殲滅系魔導兵器・超汎用型……エイト・モード:大人アダルト』、爆誕!」


 さすがに爆発は起こらなかったが、そんな雰囲気があった。

 というか……うん。なんというか、エイトだ、これ。

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[一言] 黒髪長髪…ほぅ?あとは眼鏡かね?
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